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2015年、あの夏の声-とあるバンドの収録ライブレポ
カシオペア-今はカシオペア3rdというインストゥルメンタルバンドを、離れた期間を挟んで22年追いかけている。と、まず紹介がてら自分語りからはじめる。
ハマったのは90年夏、今は2ndと呼ぶ大きなメンバーチェンジをして初のツアーで音に惚れた。90年代前半は会場やファンクラブを通じ何人もの仲間と出会い、一緒に方々のライブを観て盛り上がった。嬉しくて気持ちが昂ぶると声が無駄に大きくなる為、MCとかで突っ込んだり騒いだりしては「うるさい」とバンドのメンバーに同様に騒いでいた仲間たちと共に度々注意されては喜んでいた。
しかしまとめ役的な仲間がバンドから離れたり、自分も結婚し動きにくくなりと、後半の頃にはバラバラになっていた。離れた地方に住む別の仲間が電話を突然かけてきたが、忙しいとにべもなく切った頃は自分もバンドの音楽を全く聴いてなかった。細々と交わし続けてきた葉書でのやり取りも途切れさせてしまい、埋まらない穴を抱える時期が暫く続いた。アイコンの犬さんと出会ったのもこの時期で、色々振り回されたり助けてもらった。
幾つかのきっかけがあり戻ったのが活動休止を発表した直後だったのは、今となっては笑えないギャグ。もっと早くにと思った。そういえばそれも夏だった。以降、復活を信じメンバー個々のライブに行っては、騒いでいた日々をひっそり思い返しつつ観る数年間だった。
それから6年後の2012年、キーボードが変わり3rdと名を加えバンドが動き出す頃に、昔の仲間たちに葉書を思い切って出した、ライブで会えたらと。返事は誰も来なかった。少し前から行けるようになった東京へ観に行くと、会場を見回し姿を探したが知った顔は見付けられずじまい。
電話をくれた子の地元でメンバーの一人が別ユニットでライブを行った時、電車を乗り継ぎ住所を調べ連絡無しで訪ねた。今振り返ると不意打ちは悪かった。突然もあるから会話はぎこちなくライブも「仕事があるから難しい」と言われ、スロープが付いた玄関前で当たり障りない話をし、去った。その後会場を何度も見回したが姿は無かった。ライブが終わり最寄りの駅へと走っては立ち止まり、何度も振り返るが誰も居なかった。知らない夜道でひとり深く悔やんだ。あの時の電話の声は落ち込んでいた。その原因だろう彼女のもうひとつの現状を、ちゃんと受け止めなかったのを、今も。
さて、ここからはあるライブについて書こう。
それから2年経った2015年8月のお盆過ぎ、バンドのライブを観に川崎クラブチッタに初めて来た。この日は収録が入り観客を多く撮ることが先に告知され、ホール入場口でブックレットやクレジットに掲載する名前を記入する用紙を渡された。
会場に入りまず目に止まったのは、集まりだした観客の頭上をゆっくり動くクレーン。スタッフも通常のツアーよりも多く見かけ、忙しく走り回ったり隅で複数人集まり話しもしていた。通常とは違う、そう感じるや緊張がざわざわと沸いてきた。
思えば収録に立ち会えたのは、上階からステージ上のバンドとカメラと地元の観客を見下ろして観た92年のメルボルンきり。その後も幾つも映像作品は出していたが、此方が動き損ねたりし続けての、この日だった。改めて初参加を自覚し飲んだドリンクがビールだったかどうかもすっぱり忘れた。
開演を待つ間、何度か周りを見たが知った顔は今回も見当たらず。落ち込みと暑さと緊張を和らげたくて、持参したプラスチックの団扇をあおいだ。と会場の明かりが不意に落ち、歓声と拍手が一斉に上がった。特別な夜が始まる。
この年の夏ツアーと同じSEが流れる中4人がステージに現れ、春に出したアルバム『A・SO・BO』からのアップテンポな曲から始まった。周りと一緒に立ち上がったと同時に緊張はすっ飛んでゆき、いつもよりも音にノった。席の隣は通路で多少暴れても迷惑かからない、ではなく体が動かしやすい位置だと密かに喜んだが、ハンディカメラを抱えたスタッフが傍を走り抜けびっくり。全身で盛り上がる観客を撮っては別の客を探しに移動する姿に目で応援しながら、此方に来るのか気になったが結局来ず。曲が進むにつれカメラの存在は一旦忘れていった。
新譜のと合わせ3rd時代のナンバーを4曲熱く演奏した後、MCもすっかり板に付いたギター担当のリーダーからご挨拶と収録の話しが。「観客参加型ライブ」と話すやみんな更に盛り上がり「いい感じ」とにこにこ。自分も「イェーイ!」と声を張り上げ喜んだりも。
次は過去、90年代のと79年に出したファーストアルバムからそれぞれ2曲取り上げた。前半のは仲間たちと楽しく観た頃を思い出し、後半はその頃もこの時も聴いても変わらないカッコ良さを感じた。が作った当人、リーダーには後半のは「若気の至り」で「懐かしいと思っているのは自分だけ」と当時はバンドに居ない他3名に労を労う演奏後となり観客一同爆笑となった。
再び新譜に戻りその3人が作った曲が続いた。ベースの人は散歩なイメージでほのぼのと、キーボードの人は変拍子の嵐に呑まれそうなスリルを、ドラムの人はクールでいてパワフルな曲の中に「スマッシュ!」の掛け声を観客に求めと、バラエティに富み今のバンドを表してもいたり。
この後に曲解説も兼ねたメンバー紹介が来たが、約一名がその頃に発行した自叙伝の宣伝とかし出し延々と語り長い、ベースの人だけど、いつものことだけど。しまいには「どうせ編集で全部カットされるんだよ」と文句をつけまくったが、果たして。そしてトークにちょいちょいツッコミを入れていた自分の声もどうなったかは。
新譜からのミディアム系やバラードナンバーを、合間に軽やかに始まりやがて熱を帯てゆくオルガンソロを挟み演奏され会場が落ち着いてきた所に、ドラムソロが空気を切り、変える。正確なリズム刻みから観客と手拍子&足踏みでの掛け合いで、始め足踏みが少なくノーマイクで「足!」と言いつつ遊んだ後の、爆発するみたいな乱れ打ちに圧倒された。
続けて来たベースソロは今回もいつも通りに客席乱入を敢行、特別なのはカメラを従えて。ステージを降り弾きながら自分がいる方の通路を進みほぼ自分の真横で足を止め、目の前で一(ひと)演奏かます背に手を伸ばしたい気持ちを堪え音にノった。再び歩き出し会場の奥で曲がり、立っている人たちで見えにくいが何人かの観客と遊んだ様で、歓声やら拍手がベースの音と共に時々聞こえた。更に通路から客席に入り椅子に上がり渡り歩く。コレも毎回ライブでしていること。そうして会場を一周しステージに、の前にたどたどしいベースを叩く音と歓声が聴こえやっと戻りドラムと合流、ディストーション全開モードの激しい音でベースを掻き鳴らし、観客と一体となり盛り上がってソロを締めた。
ここでメロディ隊が戻り、ライブは90年代から奏でている2曲で楽しく盛り上がり一先ず終わる。自分的には一番好きなナンバーがラストに来て、嬉しくてここぞと踊りはしゃいだ。
が、アンコールを皆求め再登場、新譜でまだ残っていた曲をここで披露しアルバムコンプリートと相成った。残していた曲は3rd始動時に合わせ作られ、初ライブから度々演奏され今回CDに入り又改めてライブで聴くと感慨無量に。
再び上がるアンコールの手拍手の束に、バンドが2回目に持ってきたのは代表曲『ASAYAKE』。ずっとこの曲を弾いているリーダーはステージ前面まで来て、一際熱くギターを奏でながら右腕を上げる。観客も一緒に右腕を大きく振り上げ声を上げる。ふと目に入ったクレーンには、ひとつになったこの光景がどう映っているだろうと思う。ステージ袖でツアースタッフが腕を上げる姿が見え、撮影スタッフも上げたいだろうなぁ、とも。去り際に女の子がステージに上がり4人に花束渡すかわいい光景も。たどたどしいベースソロはあの子なのだろう。
一番待ってた曲が終わっても、尚拍手は止まらず「もう一回!」と求める声が上がり増え出す。そこに「ソレ!」とひとり合いの手を声を張り上げ入れる。腹から出しても厳しくなり途切れそうになるが、遠くで別の合いの手も聞こえ嬉しくなり何とか出し続けると、ステージが三度明るくなった。喜ぶ観客たちの熱気をゆったり包む風を音にしたような、80年代後半の曲で緩やかにライブは、収録は終わった。
終了のアナウンスを背に、新幹線の名古屋行き最終分を捕まえるべく走る、前に回収ボックスに自分の名を書いた用紙を入れ、クラブチッタを飛び出しJR川崎駅へひとり向かった。ライブの余韻で帰路はずっと気持ちが昂ぶったままだった。
ここからは後日談。
この夜から四カ月後の年末に収録された映像は『A・SO・N・DA』というタイトルのソフトになった。ので詳しい曲目等はタイトルをクリック。
いざ見ると自分の声が結構あちこちのシーンで聞こえているわ、3度目のアンコールの件はノーカットで入っているわ等、恥ずかしいのを通り越し呆れ返り笑った。ベースソロの一連の流れも分かりたっぷり楽しんだ。件のメンバートークはボーナストラックの一つにまるっと入っていて、此方にも自分のツッコミがしっかりと。
エンディングテロップと同封のブックレットも見た。自分の名はあった。仲間たちのは、見当たらなかった。提出していないだけであの場に誰か居たかもしれない。参加してなくとも何時かソフトを手に取り声や姿に気付いてくれたらと、自分勝手に願う。
合いの手はツアー以前から勢いでやってみると楽しく、もう一回コールが来たら入れていた。観客も撮る企画が出た時、皆は多くの声に合わせてゆくだろう、その合間にぽんと入る声はきっと際立つはずと目論んだ次第で。
確かにたったひとりの計画は成功した。でもソフトが出て5年経つ今も、なにもない。
今年こそ、来なくても暑中見舞い出そうよ、自分。
この夏も新作をひっさげツアーを行うカシオペア3rdは、今年バンドデビュー40周年のアニバーサリーも絡んでいたりする。
ここ数年は合いの手を入れてなかったが、今回は声を、特に「もう一回」が来たら腹から出して合いの手を入れ、よりライブを盛り上げ応援したい。
いつか、声が届くように。
因みに『A・SO・N・DA』は映像作品発売後の翌年春に、ライブCDにもなった。歓声やアンコールの声は映像よりは少ないが収録され、3度目の合いの手は1、2回分入っていた。恥ずかしさリターン。