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夏への扉
原作未読、初見。
原作の文体が性に合わなくて挫折した作品だったので、映像化ありがてぇな、というきもちで見に行きました。
初期設定として『原作こそ至高、最高』宗教に属している身なので、コミカライズとか映像化は基本的に敬遠しがちなのだけど、こういう時には本当にありがたいなと思う。都合が良い、とも言う。
思えばハリーポッターも登場人物の名前がさっぱり覚えられなくて挫折したけど、映画視聴後は「これ進研ゼミでやったとこだ!」現象で面白いほどするする読めて感動したな、ということを思い出したりなどしました。閑話休題。
全体的に
原作はもっとSF寄りの話なのかな。SF特有のややこしさをバキッと削って、爽やか恋愛ものに落とし込みながら、伏線回収、演出、なにもかもそつなく綺麗にまとめてあって大変好感を持てました。独創点を捨てて、丁寧にお手本通り80点を取りに来ました、っていう印象。
最近は独創性、唯一無二感に走りすぎて30点、40点を叩き出す作品をよく見てきてたので、あー、こういうのでいいんです、ありがとうございます、という気持ち。『恋は雨上がりのように』の映画化を見た感覚に近い。あれも最高の作品。
タイムリープものは得てして視聴者おいてけぼりにされがちなので、混乱せずに見れただけでも嬉しい!という読解力低子の頭の悪い感想です。
映像化
映像化の利点、強みだな~っていう所を端々で感じられたのが本当に嬉しい。監督さんの原作リスペクトの賜物かなぁ、と思いました。愛のある作品は見てて楽しい。
冒頭15分、大した会話も為されないのに清原果耶ちゃん演じる璃子ちゃんが主人公である宗一郎に恋をしているんだな、ってわかるの、本当に素晴らしい。視線、一動、はー、これが演技力の為せる技ってやつかとなった。カメラワーク、カットの見せ方の上手さもあると思う。詳しくないので知らんけど。
その後、宗一郎の婚約者である鈴さんが訪れ、璃子ちゃんが逃げるように帰るとき、自分の靴と鈴さんの靴を見比べるのが大好きすぎて「ぐう」と唸った。
大人びたロングブーツと女子高生らしいローファー。ピカピカに黒光りしたハイヒールブーツと履き慣れて光沢も無いぺたんこの革靴。
璃子ちゃんはまだまだ子供だ、っていう後々大事になるキーワード。
『大人』と『子供』の比較を靴、っていうメタファーに落とし込むの、これがセンスか!と思いました。存在感と曖昧さの融合が絶妙。
あと、猫のピートの一挙一動。もう、絶対に可愛く撮るっていう気概が感じられるほど、本当に可愛いくてメロメロになってしまった。
猫なんてそりゃもう動いているだけで可愛いんだけど、その中でも最高点を残す、っていう情熱を見た。いや、それよりもただピート役の猫ちゃんがひたすらに可愛かっただけなのかもしれない。パスタくんとベーコンくん、名前覚えた。推します。
どんな感情かと言われると謎なんだけど、タイムリープをして30年前に戻ってきた宗一郎が、喧嘩していた璃子ちゃんを抱きしめて「『さっき』はごめん」って言うの、ぐあっ、ときた。膨大な時間(コールドスリープの結果、体感はあまり無いんだけど)と感情を抱え込んで隠した『さっき』って言葉は、重さを見せない軽さがあって、最高。その後の璃子ちゃんの「一日に2回も振るな」も大好き。SF、タイムスリップ物で言って欲しい事、わかられてる。
展開の意外性は無いけど、その分予定調和に事が進んでいくのは自信があったテストの採点をしてるみたいで、楽しい。勧善懲悪。爽やかな結末。わっと盛り上がって人気が出る作品にはならないと思うけど、万人にお勧めできる良作だな、と思ったよ。
『君は、これからいろんな人と出会って、色んなことがある。だから、僕じゃなくても』
『私は、色んな人と出会って、色んなことをした。それでも、あなたしか』
大変満足でした。