妄想小説「海の魔物」 その2
いくつの朝焼けと、ビューティフルサンセットが走る俺を通り過ぎていったのか。
いつのまにか服とかないし、皮膚の皮も厚くなってところどころ血が出てるけどどうでもいい。たまに発狂しそうに空腹になって草やその辺の小動物をとって食べる。
肉食であり草食。つまり雑食。
でもやっぱり果物、あいつらは美味しいや。なんなの、あの甘み。
草と全然違う。なんであんな形なのに、甘くて美味しいわけ?完璧。
おれ果物のために死ねるもん。果物のために死闘とかできるもん。
大好き、俺果物大好き。
フルーツ、アイラブユー。
そうやって情熱的に果物のこと愛してたら、超有り難いことに俺の頭から果物が生えてくるようになった。髪の毛のとこ?そこからパイナップルが生えて、その上にオレンジ系かな、生えてる。頭皮がパイナップルのごつごつした感じになってて、このパイナップル食べた場合、俺の脳まで食べちゃうことになるのかちょっと不安。脳がちょっと下に移動してるといいけど。
オレンジはきっと食べても大丈夫なんだろうな。
て、食べようか食べまいか心配する間もなく、色んな奴らが俺の香りにつられて、ついでに頭をつついて俺のパインを味見する。
その結果分かったけど、どうやら俺のパインは不死身らしい。
つまり、脳とパインの果肉は別々で、だから俺の脳とかどこにあるのか分からないけど、
ついでにパインは食べられてもまた修復されて、なんていうのかな、いくら食べても大丈夫的な?無尽蔵っていうやつ?そういうものらしい。
ラッキークッキーハグッキー!!
果物が俺自身から芽生えるようになって以来、なんか俺、食欲的にはいつでも満たされるようになって落ち着いた生活してる。
なんていうのかな、今までの発狂するような空腹感とかないし、なんか俺の香りにつられて色んな奴らが寄ってくるから退屈しないし、なんかついでに頭以外も食べ物にできないかなって色々工夫してるうちに毎日サンセットが迎えにくる感じ。
ちなみに俺乳首を種無しぶどうにすることに成功。
でも食べたら生えてくるの次の日だから、数に限りあり。俺がいつも1個朝食べて残りは予約制。
あと恥毛部分がわかめになった。
なぜか。ここ海から遠そうだけど。なぜかそうなった。ま、元々似てるしね。
頭がパインで下半身がわかめで胸にぶどうがある男。自分で自分の食料まかなえちゃう男。なんかすげー俺豊かだよ。
イグアスの滝飛び込んでからどれぐらい経ったのか、俺のいるところ今どこなのか、全然分からない。たまに両親とか兄弟とか別れた彼女とかのこと、思い出すけどなんか全部遠い感じで悲しいとかそういうのもないなあ。
ああ、ああいう人たちとも一緒に過ごしたことあったな、っていう気持ちどまり。
今の俺は、毎日色んなフルーツの香りに誘われて踊って歌いながら走り回って、食べて、適当に俺のフルーツ食べにくる奴ら観察して、寝て、そんな感じ。
無為と言えば無為で、先もみえないし、まあぱっとしないっていうのは変わらないけどなんかこう焦燥感みたいなのはそんなにないなあ。
満たされてるって訳でもないけど。適度なのかもしれねえな、睡眠時間とか生活の中でフルーツ探してる時間の割合とか、適当に俺のフルーツ食べにきてる奴との会話とか。リズムがいい。そういえば海の魔物を探すとかもどうでもよくなってきたかも。
まあ、会えたら会えたでいいだけどね。ミーハー心はなくなったよ。
そうやって落ち着いて、そうマイペースに身体改造してるうちに、俺の頭からは、パイナップルの上からオレンジだけじゃなくて、サクランボとか色んなものが生えてくるようになって、俺の毛穴からの匂いも、フルーティー。
すごいフェロモンなのか、色んな奴らが俺に寄ってくる。
ちょっとね、くるのは構わないんだけどあまりに来られると面倒くさい。
フルーティーな匂い漂わせてて、感じ悪くする訳にもいかないじゃん?
怒るとこっちも心乱れるし。
だからといって身体改造、好きだからさ、やめて匂いを弱めたりするのも嫌だし、まあ森だと匂い伝わりやすいかなと思って、なんとなく風が強かったりとか水があって匂いを弱めてくれる方角、そういう方向に意識して進むように方針転換。
まあちょっと風景変わるよね。今までいた方はさ、ザ・ジャングルって感じで緑が密集した感じだけど、今はなんていうの、スカスカっていうか、緑もあるし、水もあるし、眺望なんかも楽しめる、拓けたスペースに出てきた気がするね。
ヒャッホーイ!!っていいながら、毎日全力で走ってるうちに、目の前が水だけになっちゃって、水の中でもノープロブレムなんじゃね?と思ってそのまま水の中に全力疾走っていうのも無理な話で、そのままずんずん下に沈んでってだんだん息がきつくなる。
やっぱずっと陸を走ってた訳だし、水の中だと俺生きていけない訳?いやこの状態で生きていけないって言われてももう水の中は行っちゃってる訳だから、困る訳!生きていけるようにしないと!!
どうにかなんねえのかよ!!と眼光鋭くもがく俺。息苦しさの限界近づいて意識が遠のきそうになった瞬間、プワっと身体が浮いたように感じた。
俺は死体になっているんだろうか、死体になっているんだろうか、と考えられている時点で俺はまだ死体ではない。てかいつのまにか息出来るし。しかも周りに、小魚的な軍団がうじゃうじゃいて俺を運んでる。運んでるっていうか、運ぶことを口実に俺の頭のパインとかめっちゃついばんでる。魚もフルーツ好きなのかよ。
てか魚に色んなところを吸われてなんかくすぐった気持ちいい。森の奴らとは違った繊細な口使い。しかもどこかしらに運んでるみたいだし。全身マッサージ受けながらタクシー乗ってる感じ?いやタクシーどころじゃない、ウォーターベッドで移動している感じだ。
俺はしばらくうとうとした。ちょっと意識はあるけど、うとうとして半分寝てるっていう気持ちいい状態ね。そしたらいきなりどさっと下におろされる感覚がして目を覚ます。
水中だけどどさっとかあるのね。てかここ海底?
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