生きること。死ぬこと。生き続けることの難しさ。
「人生」ってなんだろう。
わたしの父は63歳で亡くなった。
癌だった。
病気がわかったあと、抗がん剤治療をしながら仕事を続けた。
最初と最後に検査入院を1泊2日でした程度で、それ以外は亡くなるまで我が家で普通に生活をしていた。
もういよいよだと病院の先生に告げられたあと、わたしたちは最期を過ごす場所について考えた。
緩和ケア病棟も見学に行ったけど、最期の日まで父がここでひとり寂しく暮らすことを想像して「無理だ」と思った。
わたしが耐えられない。後悔すると思った。
亡くなる前の約2ヶ月、わたしはひとり暮らしの家を出て実家に戻った。
最後の1ヶ月は東京で暮らす弟も戻ってきた。
父、母、わたし、弟。
ほんとうに最後の<4人暮らし>をした。
(父から見て)甥っ子たちも時々顔を見にきてくれて、みんなでワイワイご飯も食べた日もあった。
父は少しずつ、でも突然弱って、車椅子になったけど。
それでも最期まで頭はしっかりしていた。
好きなものもモリモリ食べていたのでその点に関しても後悔してないと思う(笑)
わたしの父は自宅のベッドで眠るように亡くなった。
いよいよオムツ生活がはじまる…いよいよ最期の時がくる…そんな風にみんなが覚悟を決めた日に父はスパッと亡くなった。
わたしたちに「介護」させることなく、ほんとにびっくりするぐらいあっさりと亡くなった。
それは、プライドの高い父の最後の「意地」だったのかもしれない。
家族にも仕事仲間にも惜しまれながら、最期の時を自分ががんばって建てた家の自分の温かいベッドで迎えた父は幸せだったと思う。
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わたしの祖母はそこそこボケていて、そこそこ元気だ。
そこそこの「ボケ」は介護施設に入れるほどのレベルではないが、自宅で自分に関わるすべてのことをうまくこなせるほどにはしっかりしていない。
祖母は戦争も経験しているし、学校へ行くこともままならず必死で生きてきた。(っぽい。)
それでも、祖父と結婚して、子ども4人を産んで育てて、そこそこ広い土地にそこそこ広い家を建てて幸せに暮らしていた。(たぶん。)
旦那さん(わたしの祖父)を早くに亡くして未亡人になり、病気をして何度か手術もしているし…結婚後も苦労が多かったみたいだけど娘息子たちが結婚して、わたしのようなかわいい孫たち(ん?w)に囲まれて幸せだったはずだ。
(まぁわたしが結婚してないことについては、非常に気に食わんみたいだがwwwwwwww)
そして、今、90歳になろうかというころ。
おばあちゃんは祖父と一緒に手に入れたそこそこ大きな自分の家を出なければいけない。
おばあちゃんがおばあちゃんの家から出なければいけないなんて…なんで?寂しい。めちゃくちゃかわいそう…。(いつになるか今はまったくわからないけれど)最期の時を自分の家で迎えられないなんて…。
と思う自分がいる。
でもこれは綺麗事でしかない。
じゃあおまえが面倒見れるんか?
と言えばNOだからである。
わたしにはわたしの生活があって、終わりの見えない介護なんてできるわけがない。そんな甲斐性なんてない。おばあちゃんには申し訳ないがぜったいに優しくできない。
わたしは心がとてつもなく狭いので暴力をふるう自信もある。(ヲイwちなみに、父にもいつも優しくはできなかった。)
家でずっと過ごせるように外部の人を雇ってあげられるお金ももちろんない。
一生独身の予定なので自分の老後のお金が必要だし(笑)その前に未亡人となった母の老後も考えないといけない。
ほんとうに申し訳ないけどおばあちゃんのことは母とその兄弟でなんとかしてもらうしかない。
これが現実なのだ。
母も叔父も叔母も。みんな自分の人生がある。終わりの見えない「介護」は簡単なことじゃない。
いつもしっかりしていて、テキパキ動いて、口も達者なパワフルばあちゃんがどんどん弱っていく。
とても小さくなってヨボヨボゆっくり動くおばあちゃんを見ると心がキュッとなる。
(まぁ相変わらず口は達者だけどw)
わたしは「超」がつくおばあちゃんっ子で、おばあちゃんが死んだら生きていけないと小さい頃は本気で思ってた。
それぐらい大好きなおばあちゃんなのに。何もしてあげられない大人にしかなれなかった。
これが現実なのだ。
「長い人生」を送るって幸せなんだろうか。
祖母を見て思う。
祖母は自分の立場(?)を理解していて、これから老人ホームのようなものに入るのも仕方のないことだと思っている。
きっとみんな「年をとればそうやって自分が普通には暮らせなくなる」ことを昔から知っていて、「その時が来たな」とその時点では既に覚悟が決まってるんだろうけど…でも…なんか…やっぱり寂しいよな。
綺麗事なんだけどさ!自分の家から出て行くって寂しいよな!!!綺麗事だけど!!!!!を繰り返している(笑)
わたしの父は少し早く亡くなったけれど、母もわたしも弟も元気だったから最期の最期までそばで見守る覚悟ができた。
これが10年後だったら?20年後だったら?
きっとみんなあの頃より体力も気力もなくて何もしてあげられなかっただろう。
60代で亡くなった父と90を迎えようとしている祖母。
「人生」ってなんなんだろう。
「幸せ」ってなんなんだろう。
答えのない問いだと分かっていても考えずにはいられない。