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車椅子は最初からあなたには必要なかった

残暑が厳しい日が続きますが、皆様体調お変わりありませんでしょうか?

さて、昨日はびっくりする再会がありました。
私が勤めている職場で昔、利用者だったYさんと予想もしなかった再会を果たしました。
正直、私はYさんに対して苦い記憶があり、再会をすぐには喜べなかったのですが・・・。

Yさんは私が担当する利用者さんで、一言でいえばとにかく依存的。
どんなに声かけをしても「やだよ」「やってよ」「できないよ」の三拍子がお決まりのセットでした。

Yさんは車いすを使用していましたが、
実は車いすがなくてもご自分でスタスタと歩くことが出来る人でした。
当然、私たちは自分の足で歩くように働きかけます。
もちろんYさんは全面拒否です。
理由は、車いすに乗ってれば楽だから。

私たち職員は懸命に、Yさんに一人で歩けることのメリットや楽しさを伝えました。
しかし、言えば言うほどYさんは頑なになっていきました。

いったい、どうすればいいのかと思い悩んでいた時に
Yさんは病状が悪化して病院に入院することになりました。
そして、そのまま退所。
もう会うことはないのかと思いながら数年がたち、昨日、通院先での劇的な再会でした。

Yさんは「おれ、おれだよ。覚えてる?」と声をかけてきました。
忘れもしません。ぼっさぼっさだった髪は短く整えられており、
ひげもいつも嫌がって、なかなか剃ってもらえなかったのですが、
きちんと剃られてこざっぱりとしていました。

私が何よりも一番驚いたのはYさんの生き生きとした目でした。
私が知っているYさんはいつも卑屈な態度で、あきらめに満ちた目をしていました。そんな私の気持ちを察したかのように
「おれさ、今この近くのグループホームに住んでるんだよ。今もこの病院に通ってるんだ」Yさんはニッと自慢げに笑いました。

そう、もうYさんは車いすは使ってませんでした。
ちゃんと自分の足で歩いているのです。
Yさんはグループホームでの生活を少し話した後、
「おれ、もう行かなきゃ。じゃあね」と軽やかな足取りで去っていきました。私はYさんの後姿を複雑な思いで見送るだけでした。

何がYさんをここまで変えたのかは分かりません。
ただ、Yさんが今の生活を心から楽しんでいるということだけはよく分かりました。

それに引き換え自分は、仕事や将来の不満、不安が強すぎて「楽しい?」と聞かれても素直に「うん」とは言えません。

変われたYさん
変わらないわたし。

私は分かってるいるのです。なぜ変われないのかを。
私には今の生活を楽しむ勇気がないのです。
一時の迷いや将来の不安、色んなことを言い訳にして変わることをためらっているのだと。

私はYさんの後姿を見て、認めたくなかったこの気持ちに気がつかされて、ずっと心がざわざわしていたのです。

ほんの少しの勇気。それが今の私の必要なこと。
季節も、風の色ももう秋へと変わっていくのだから。
それが理由でもいいじゃないかと。少しだけ心が軽くなった一日でした。




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