青かった日々。

ふと聞いたドラえもんの主題歌が良すぎて、ある人のことを思い出した。

「宝物はそこにあるよ 気がついてよ」
「世界中探しても 君は君しかいないよ」

彼女は4年前からドラえもんが好きだった。
その人の影響で「のび太の新恐竜」という映画を見たと伝えたら、これまで見せたことのなかったような笑顔で、「え、ほんと!」と飛びつき、自慢げにミュウとキュウ(映画に出てくる恐竜のキャラクター)のキーホルダーを見せてきた。
ペットボトルを入れるのが無難なはずのリュックの側面にあるメッシュポケットに、ミュウとキュウは丁寧に差し込まれていた。
友達にクレーンゲームでとってもらったらしい。
その後も、ドラえもん関連の出来事があったら逐一報告していた。
サーティーワンのケーキを食べると伝えたら「ドラえもんのケーキだったら教えて」などと世界一実りのない会話をし、今度ドラえもんの特番やるね〜、映画の予告見たよ〜という会話もした。
1番欲しい秘密道具は?と聞けば、あたかもこの質問に正解があるような自信満々の表情で「ハツメイカー」と答えてくれた。
そしてその後は必ず、ハツメイカーが他のひみつ道具に比べてどれだけ便利で、どれだけのことが可能になるのかを熱弁されるのがお決まりだった。
ドラえもんのことを嬉しそうに語る彼女が大好きだった。

そこから3年以上経ち、ある日共通の会話をしたいがためにドラえもんお誕生日スペシャル見たよと伝えたら、まだ見ていないと返された。
毎週聞いても「時間がなくてまだ見れてないんだよね〜」と帰ってくるのでもう聞かなくなった。
気づけば、ドラえもんのことを嬉しそうに話すことはいつの間にかなくなっていた。
もうドラえもん好きな彼女はいないのかもしれない。
もしかしたら、もうドラえもんへの熱は冷めているのに、それに気づかない私のために好きなふりをしているのかもしれない。

リュックの側面にあるメッシュポケットにはもう、ミュウとキュウの姿はなかった。
今はポムポムプリンが丁寧に差し込まれている。

気づかない間に、絶えず変化が起こっている毎日。
全て気づきたくて、全てを忘れたくなくて、日記を毎日つけているけど、逆に日記をつけることで変化に敏感になってしまった。

知らぬ間に変わっていくことに追いつけない。追いついた時に、「前はこうだったのにな」と自ら寂しさを生み出しにいっている自分が嫌いだ。

変わらないで、と思うことは悪なのだろうか。
大好きなものをずっと大好きでいたいだけなのに、またドラえもんの話がしたいだけなのに。

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