宮崎夏次系の話
毎日更新を目指していたのに、とっても期間が空いてしまいました。やめるのは簡単なのに、続けるということは本当に難しいですね。
何も思ってなかったわけではなくて、むしろ思うことがありすぎて思う方に集中してしまっていてそれをアウトプットする余力がありませんでした。今は少し思うことから距離を置けるようになって、たくさん思ってた自分を1センチくらい離れたところから見ることが出来るのですが、まだまだ書ける状態では無いというか、いつかまたこれについて書きたくなる時がくるんだろうなと思っています。
みなさまGWはどのように過ごされましたか。
弓はというと季節外れのインフルエンザにかかってしまい、10連休のうちの8日くらいを寝て過ごしました。まさかインフルエンザだと思って居なかったのと病院がどこも休みなのとで風邪薬を飲んでなんとかしようと39度の熱を5日間も我慢していました。熱の時は厚着をして暖房を効かせて熱いお茶を飲んで布団にくるまって滝のように汗をかくのが良いという複数の証言を信じてそのようにしてもただただ暑く苦しいだけで一向に下がらない熱、続く関節痛、熱がある時は風呂に入ってはいかんというセオリーをぶち破って入ってみたらなんか関節の痛みが和らいでいる気がする!ということで(他に出来ることも無いし)1日に何度も風呂に入り無駄に体力を消耗させるという荒業なども披露していました。
こんな時に恋人や家族が居なくて良かった、、と思いました。一人でどうにもならない身体と向き合い続けるのは辛いことだけど、恋人や家族が居たら心配してお世話してくれるかもしれないけど、せっかくのGW楽しんでほしい気持ちと側にいてほしい気持ちがどっちもめちゃくちゃわいてきて身体だけじゃなくて気も狂ってたと思います。弓はそういう人間なんです。どういう状況だって悲しいことばっかり考えてるタイプの。だから身体が辛いことだけ考えられて良かったんだと思います。そんなことを書いていると私の大好きな漫画家宮崎夏次系さんの『僕は問題ありません』の塔の話に出てくるおじいちゃまのセリフを思い出します。
「とおこ。ずっと一人で居ろ。一人で居ることを忘れるくらいずっと一人で居ろ。二度と寂しい思いをしなくて済むよ。」というセリフです。
おじいちゃまは、孫のとおこのことをとても心配していて世間から隔離しています。確実に先に死ぬ自分が居なくなったあと、一人で生きていかなければいけないとおこに対して、むしろ社会と隔絶して本当の一人で生きていく方が、二度と大切な人を失わずに済むと考えているのです。(これは脱線なのですが、おじいちゃまが亡くなったあと二人で住んでいたお家が変形して出口の無い塔になってしまい、とおこはおじいちゃまの言う通り本当の一人で生きていくことになろうという時に、とおこの元同級生の轟くんがやってきてモノレールのレールの上から必死にとおこに漫画を渡すシーンがもう本当に鳥肌が立つほど良いんですよね…。)おじいちゃまの愛は一般的に見れば歪かもしれませんが、弓には痛いほどよくわかるのです。弓だけでなく、誰だってこういう気持ちを持っていると思います。それが世間的に正として、或いは言葉として定義されて居ないというだけで、無かったことにされてきた、「もやもやする」という言葉に集約されて来た生身の人間の感情を、宮崎夏次系さんは丁寧に丁寧にほどいて、見える形にしている、と思います。好きという言葉の中にどれだけの感情があるか、計れる人間はいません。それでも全てを「好き」の一言である程度共通認識をもって表現出来ることは、言葉の素晴らしいところであり、難しいところでもあるのだと思います。誰もがご存知チャゲアスの名曲SAY YESの中でも「言葉は心を超えない」という超絶最高な歌詞がありますがまさにその通りで、私達は言葉の便利さに慣れてしまって齟齬が無い程度に伝わればいいやとどこかで思っています。でも若い頃とてもとても好きだったあの人と両思いになっていくらでも好きだと言える関係になった時、好きだよと言うだけでは満足出来なかったのではないですか。だから馬鹿みたいに恥ずかしいポエムが今だってそこかしこで量産されているのです。それを言葉の外で巧みに表現する人が、宮崎夏次系だと私は思っています。宮崎夏次系の漫画に出てくる言葉は淡々としています。それなのに何故こんなにも手に取るようにこの人の考えていることがわかる、何がわかっているのか言葉で説明出来ない、だけど確かに自分も感じたことがある。その体験は、誰かが自分のなんでもなかった感情を掬い上げて大切にしてくれた、そんな風にすら感じる美しい体験です。
私が知人に宮崎夏次系をおすすめする時にはこんな風に長々と話せないので「好きという感情を好きという言葉を使わずに描く人だよ」と説明しています。今まで色々な人に宮崎夏次系の漫画を読んでもらいましたが、正直人を選ぶところはあるのかなと思います。一番ショックだったのは貸した後に「すごくいい漫画だったけど、こんな漫画を読んでいるから鬱になるんじゃないかな」と言われたことです。少しでも気になった方は店頭へと言いたい所ですが普通の本屋にはまず売っていないのでamazonでぽちってください。回し者ではありませんがよろしくお願いいたします。読んでみて好きになったら、一緒にお話したいです。
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