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化けの皮(3/4)

「昨日の動画見た?」

「見た見た! メッチャ面白かったよな!」

「先生、テレビつけてよー!」

「ジャンケンポン! あっち向いて、ホイ!」

「だあぁ、また負けたぁ!」

「先生バナナ食べていいですかー?」

「り、理科室!」

「釣り」

「り、り……リス!」

「すずり」

「もー! さっきっから『り』ばっかり!」

「先生、隣郷(りんごう)君が車酔いしたみたいです!」

 移動中のバスの車内というのはどうしてここまで混沌としているのか。こちとら五時起きして学校に来て、今日の日程や当番の確認を先生方としたりバスの運転手さんと打ち合わせしたりで、朝から大分体力使ったにも関わらず、ほどよく揺れる車内では一睡もしちゃいけない状況だっていうのに。
俺は席を立ち、走行中のバス内を歩く。

「安津(あんづ)と水宇里(みずうり)、危ないから席を立つな。そんなことしてもテレビはつけないからな。隣郷、大丈夫か? 一番前の席に来ていいぞ」

 隣郷がいる真ん中寄りの席に向かい、隣郷を俺の横の席に移動させた。そして戻る際に斜向かいに座る立花を一瞥した時、思わず目を見張った。

「立花お前、本当にバナナ持ってきたのか!?」

 立花はこれ以上ない憎たらしい笑みを浮かべた。

 立花の膝の上で開いた大幅なリュックの中には、十本近いバナナが入っていた。しかもそれらは全て、プラスチックでできた専用のケースに一本ずつ収納されている。ケースのお陰でバナナが潰れることもなければ、匂いも多少は抑えられるだろう。立花がいつになく得意気になるのも納得だ。

「ビックリするのはまだ早いぜ」

 そう言って立花は一本のバナナケースを取り出し、これ見よがしにケースの蓋を開けた。前後や横にいる子たちも懸命に首を伸ばして見ている。そして俺と一緒に仰天した。

 そこには真っ黒なバナナが入っていた。木炭と一緒にされたら見分けがつかないくらいの黒さだ。開けたと同時に、バナナ特有の粘っこい甘い香りが鼻を突いた。

「スゲー! 真っ黒だ!」

「焼きバナナ?」

「大丈夫かよ、それ?!」

「腐ってんじゃねぇの!?」

「そう思うだろ?」

 天狗のように鼻を伸ばした立花はさらに、ゆーっくりとバナナの皮を剥き始めた。すると中身は何の変哲もないバナナだった。子どもたちはさらに興奮し、騒いだ。

「あぁ、もう静かにぃ!」俺は半ば自棄になって言った。「立花、バスの中ではお菓子もバナナも食べるのは禁止だ」

「え~、そりゃないよ~! 皮剥いちゃったしさ!」

「ケースがあるんだから大丈夫だろ。向こう着くまで我慢しろ。それと皮をその辺に捨てたりするなよ。誰かがそれ踏んで転んだら一大事だからな」

 子どもたちは爆笑した。立花は唇を尖らせブーイングを発したが、俺はそれをあしらい、子どもたちを席に座らせながら自分の席に戻った。

 笹倉と大場の姿も目に入る。笹倉は隣にいる峰とキャピキャピと談笑し合い、俺が見ているのに気づいてウインクしてきた。

 大場は亡霊のようにただひっそりと窓の外を眺めていた。俺の視線に気づいて、ガラスの反射越しに目が合ったが、こちらを振り返ることはなかった。

 二人とも、今日もいつも通りだ。昨日も一昨日もいつも通りだった。そうなると、三日前の一件は全て夢だったんじゃないかと思いそうになる。
無論そんなことがあるはずない。いつも通りであったからこそ、その些細な変化は顕著だった。

 今までの二人は、互いに互いを空気のような存在として扱っていた。空気であるがゆえに、例え接触する機会があっても衝突することはなく、視界に入っても存在しないも同然だった。

 だが今の二人は常に、互いに明確な敵意を向け合っていた。俺が授業で笹倉を指した時、大場は笹倉のことをナイフのような目線で見ていた。大場が列の提出物を回収して俺に渡しに来る時も、笹倉は大場を銃口のような視線で追っていた。そのことが俺の恐怖や不安を増幅させ、ここ数日の安眠を妨げた。 

 だから、眠気を感じている今、到着まで一時間以上ある今ここで寝かせてほしい。十五分でいいんだ。


「先生、百田先生。起きてください」

「……ん~……あと五分……」

「五分前にもそう言ってましたよ。いい加減起きてください」

 強めに体を揺らされて、俺は渋々瞼を開けた。そこにはベテラン教員で同室の尾輪(びわ)先生の困り顔があった。太い眉が下がっている。

「さぁ、百田先生。見回りの時間ですよ」

「あぁ、あの時グーを出していれば……」

「まだ言ってるんですか? 遅刻するとあとで鬼無先生にどやされますよ?」

「うぅ、行ってきます……」

 俺はタオルケットをソファの端に追いやり、顔を洗ってコテージから出ようとした。その直前に尾輪先生が懐中電灯を渡してくれた。

 外の澄んだ空気は寝惚けた俺の頭にはほどよい眠気覚ましになってくれた。星もよく見える。山は好きでも嫌いでもなかったが、こうしてみるといいものだと思う。これが仕事じゃなければもっとよかったのにとも思う。

 集合場所まで早足で向かった。その道すがら、周囲の茂みや森の奥にも注意を払う。

 その昔、ウチの児童に、教員宿舎の前に監視役を置いて、夜な夜な抜け出した児童がいた。その予防の他にも、万が一が起こらないようにと、学年主任の鬼無先生は教員全員にいくつもの注意事項を念入りに読ませた。
大人たちがいくら注意を払ったところで、子どもたちは誰しも冒険したがるものだ。監視役を任されていた俺が言うのだから、間違いない。できれば意中の子と抜け出す方になりたかったと、今でも思う。

 コテージの総合管理事務所として利用されている建物に到着した。そこには既に人がいた。

「三分遅刻よ、百田先生」久里浜先生はムスッとした顔をして言った。「『児童の手本になるように五分前行動を心がけなさい』って、鬼無先生も言ってたでしょ」

「お願いします、鬼無先生には黙っておいてください」俺は軽く息を切らしながら頭を下げる。

「ねぇ、百田先生知ってる? この間駅前に新しいケーキ屋さんができたんだって。そこのピーチタルトがメチャクチャおいしいらしくて、開店前に並ばないと即完売しちゃうくらい超人気らしいよ?」

「……今度ご馳走させてください」

「えっ、いいのー?」

「他でもない先輩のためですから……」

「わかってるじゃない!」

 俺の背中を叩いた音が響いた。

「さ、とっとと終わらせて、さっさと部屋に戻りましょ」

「は、は~い……」

 俺と久里浜先生は二手に別れて見回りを始めた。俺は男子児童のコテージ群、久里浜先生は女子児童のコテージ群を中心に見回る。

 去年ここで、同じように林間学校をしていたある小学校の男性教師が、見回りに乗じて女子児童の下着を盗もうとした事件があったそうだ。あくまで噂だが、公になっていないところに真実味があった。

 それを受けてウチでは、男性教師は女子児童のコテージの見回りをしないことになった。仕事量が半分になったのは本当にありがたい。久里浜先生の言う通り、早く終わらせて早く寝るとしよう。

 合鍵を使ってコテージのドアを開けた。常夜灯の緑色の光が室内をボンヤリと照らしている。耳を澄ませば、児童たちの寝息や布が擦れ合う音が聞こえた。それらは玄関から見て両サイドの壁に計六台備え付けられた二段ベッドから聞こえてくる。また各ベッドのカーテンは、この部屋にいるはずの児童の人数分、きちんと閉められていた。

 教師としての経験はまだまだ浅い俺だが、何人か、あるは全員が起きていることは推測できた。少なくとも当時の俺は起きていた。

 かと言って、ひとつひとつのカーテンを開けて確認するのは無粋だし、やられた側からすればかなり気持ち悪い。本当に寝ている子を起こしてしまう可能性もある。

 だから俺は、かつての恩師がやっていた画期的な方法を用いる。

 ぷ~~~っ、ぷっ!

 腕に口を押し付けて息を吐き、おならのような音を鳴らした。ほどなく、いくつかのベッドから密やかな失笑が聞こえてきた。

「早く寝ろよ~」

 ほどほどのボリュームで彼らにそう言って、俺は外に出た。

 そんな調子で他のコテージを見回った。雑にやったつもりはなかったが、結果的に予想よりもかなり早く終わった。

 事務所の前に戻ってきた。異常の有無の確認のために久里浜先生とここで再会する手筈になっているが、先生の姿はまだなかった。デートに誘った恋人を待つような緊張やロマンチックがあれば眠気にも勝てただろう。俺は何度も何度も大欠伸を溢しながら先生の到着を待った。

 暗闇の奥に光が見えた。激しく揺れ動きながらこちらに近づいてくるのがわかった。ほどなく久里浜先生の姿も浮かび上がる。先生は懸命に走っていた。

 何かあったのだろうか? 嫌な予感がして、俺は先生に歩み寄った。

「百田先生、大変!」

「どうかしましたか?」

「笹倉さんと大場さんがいないの!」

「えっ?!」

 心臓が跳ね上がったのを感じた。

 久里浜先生は俺の前で立ち止まった。膝に手を着き、肩で息をしている。

「どういうことですか、二人がいないって」

「はぁ、はぁ……く、靴……!」

「靴?」

「私ね、こういう見回りの時、下駄箱に入ってる靴の数を、調べるようにしてるの。そしたら二ヶ所で、靴の数が少なかったの。誰がいないかを確認したら、最初は大場さん、次に笹倉さんがいないってことがわかって……。他のコテージに見回っても、靴が増えてるところはどこにもなかったから、嫌な予感がして、同じ部屋の子全員起こして確認したの。そしたら笹倉さんと同じ部屋の峰さんが言うには、『夜中に大場さんを呼び出す』って……!」

 流れる水のように体温が下がるのを感じた。だがその後間もなく、汗が滲み出すほどに体温が急上昇する。

「先生は他の先生方に知らせてください! 俺は先に二人を探してきます!」

「わ、わかった!」

 俺はすぐさま駆け出した。彼女たちの居場所の当てはない。それでも目星をつけなければ何も始まらない。

 俺ならコテージの後ろに広がる森の中に向かう。脱出と帰還の際に教師たちと遭遇する可能性を考えれば、わざわざ管理事務所や男子児童のコテージ群の方には行かないだろう。また戻ってくる時間も考慮して、森の奥深くまで進むこともしない。二人を捜すならその辺りだ。

 コテージの横を通り森に入った。生い茂る葉に空が覆われているため、暗さと不気味さが急に増した。

 怯えている暇はない。周囲を入念に確認しながら進む。

 ほどなく金網フェンスが現れた。色褪せた「危険! 立ち入り禁止!」と書かれた看板がまず目につく。高さは俺の身長の倍、四m近くはある。上部には返しと有刺鉄線があるからに、これを越えることは容易ではないだろう。

 フェンス沿いに進めば、いずれ二人に遭遇するだろうか。それとも、危険だが高確率で人がやってこないであろうフェンスの向こう側に行ってしまったのだろうか。

 しばらくその場で立ち往生していると、ふとそれを見つけた。

 地面接したフェンスの一部に穴が空いていた。穴の周囲が錆びているところをみるに、老朽化による自然発生的なものか、あるいは脆くなっていたところを動物がいじってできたものだろう。さほど大きくはない。だが小柄な子どもならスルッと通り抜けられそうだ。

 腹は決まった。縁を蹴って穴を広げたり地面を手で掘ったりして、何とか穴を通り抜けた。

 しばらく進んだところで、懐中電灯をあの場に置いてきてしまったことに気づいた。不安は拭いきれないが、仕方がない、このまま行こう。

 さらに進むこと数分、人の声が聞こえた。聞き間違いかと思って耳を済ませると、やはり聞こえる。自然と息を殺し、密やかに声のする方に向かった。

 開けた場所に出た。微かな星光に照らされて、華奢な二人のシルエットが見た。顔までは見えないが、笹倉と大場で間違いないだろう。

 二人は手が触れ合いそうな距離で向かい合っていた。何か話していたのかもしれないが、俺が接近していることに気づいて、二人ともこちらを向いた。

「笹倉、大場」

「もしかして、も……太郎くん?」俺から見て右の子が言った。

「笹倉か。大場もそこにいるな」俺は冷静さを装って二人に近づく。「二人とも捜したぞ。さぁ、早くコテージに帰るぞ」

「その前にしなけらばならないことがあるでしょ?」向かって左にいる大場は早口に言う。「私たちのどっちを選ぶんですか?」

 俺の心臓が強く鼓動した。

「……やっぱりそのことを話していたのか」

「いいから答えて!」

 大場の声が周囲に響いた。対して笹倉は落ち着いた佇まいだった。
俺は軽く深呼吸をして、答えを告げる。

「かなり悩んだが……大場、申し訳ないが、俺はお前とは付き合えない」

「――っ!」

「俺が好きになったのは笹倉だ。その気持ちはこれからも変わらない。教師生命が絶たれても、後ろ指を差されることになっても、俺はこれからも笹倉のことを愛していたい」

「太郎くん!」

 笹倉が俺に抱きついてきた。腹に顔を埋め、髪を揺らす。久しぶりに抱きつかれたせいだろうか、笹倉の感触や香りに新鮮みを感じた。

「認めない……」

 寒気を覚えるような、それでいて熱が籠った声がした。

「そんなの認めない!」

 大場は怒声を上げてこっちに走ってきた。そしてあろうことか、笹倉の髪を鷲掴みにして彼女を無理矢理に俺から引き剥がした。

「太郎くんが好きなのは私だ! お前なんかじゃない!」

 高い声で叫びながら、大場は笹倉もろとも倒れた。笹倉に覆い被さった体勢から、彼女は右手を高く振り上げて拳を握る。だが途端に、彼女は横に倒れた。大場が笹倉の腹部を思いきり蹴って倒したのだ。

「選ばれたのはこの私なの!」勝者の余裕を見せつけるかのごとく、笹倉は立ち上がって大場に言う。「お前は素直に負けを認めろ!」

「この卑怯者っ!」

「お前にだけは言われたくない!」

 大場は立ち上がると、笹倉に突進して彼女の頭を思いきり殴った。鈍い音がして、笹倉は倒れた。

「止めろ、大場!」

 さらに殴りかかろうとした大場を、俺は羽交い締めをして止めた。言葉にならない声を発して大場は暴れた。力はさほど強くはないが、油断すると振り払われてしまいそうだった。

「笹倉、大丈夫か?!」

 返事こそなかったが、笹倉は立ち上がった。ただ、彼女の動きがあまりにもゆっくりとしていたため、俺は安心よりも恐怖を覚えた。

「さ、さぁ二人とも、早くコテージに――」

 短く高い音が響き渡った。笹倉が大場を平手で叩いた音だった。

 刹那、耳を劈くような声がした。かと思えば、俺は空を見上げていた。大場に思いきり振り払われ、地面に倒れたのだと遅れて気づく。

 獣のような声が聞こえていた。体を起こせば、大場と笹倉がもみくちゃに取っ組み合っていた。ここからではどっちがどっちか認識できないほど、二人の争いは激しかった。

「止めろ! 二人とも!」

 俺は立ち上がろうとしたが、途端に後頭部に鋭い痛みが走り、膝をついてしまった。倒れた時に怪我をしたらしい。痛みがあった箇所を触るとヌルヌルとした感触があった。だが今は自分の心配をしている場合ではない。痛みに耐えつつも、俺は今度こそ立ち上がった。

 が、そこに二人の姿はなかった。

「……ささくら……? おおば……?」

 思考が追いつかない俺の頭に、ややあって、嫌な音が微かに入ってきた。
マグマが吹き出すが如く体温が上昇したのを感じた。最悪の想像が俺の脳内を濁流のように駆け巡る。それを必死に押さえ込んで、否定しようとしても、まったく気は鎮まらなかった。

 二人が先ほどまでいた辺りに駆け付ける。すると、そこからさらに数m進んだ場所が切り立った崖になっていた。

 破裂しそうな心臓を押さえながら、しゃがんで下を覗き込む。

 崖の底は地獄の深淵のように暗く、まったく見えなかった。だが手の届くところに生えた木の根に、ピンク色のリボンがついたヘアゴムが引っ掛かっていた。

 救急隊員が笹倉と大場を発見した頃には、すでに空が白み始めていた。
二人とも、崖下に続く、長く険しい岩の斜面に全身を激しく打ちつけ、重傷を負った。特に頭部や顔面の負傷は激しく、顔を識別するのも困難な状態だった。

 二人は麓にある大病院に緊急搬送された。俺は手当てをされつつ付き添いで病院に行った。だが終始寝ているような起きてるような感覚で、その時の記憶のほとんどは曖昧だ。唯一鮮明なのは、救急車に運び込まれていく、血まみれでぐちゃぐちゃに潰れた顔面だ。あれが笹倉だったのか大場だったのかさえもよくわからなかった。

 ただ事実として、笹倉は一命をとりとめ、大場は帰らぬ人になった。

「七海ちゃん、昔はよくうちに遊びに来てくれてたんですよ」

 そのようなことを、笹倉の母親が言っていた気がする。

「当時のあの子たちは顔とか背格好が本当にそっくりで。しっかり者の双子のお姉ちゃんができたみたいだって、主人とよく話してました」

 双子みたいだというのは、少しわかる気がした。二人の笑った時の表情は、どこか重なるものがあった。

「けれど、七海ちゃんが私立の小学校に通うようになったり、あとはその……お家のことで色々あって……疎遠になってしまいました……」

 大場の父親は、大場が小一の頃に無職になり、家庭内で暴力を奮うようになったらしい。さらには一家心中までしようとしたそうだ。

 父親はほどなく逮捕された。その後は経済面と世間体を理由に、大場はうちの学校に転入してきた。

「どうして……どうして七海ちゃんも助かってくれなかったんでしょうね……」

 笹倉の母親は涙ながらに言った。そんなことを俺に聞かれても、答えられるはずもない。

 大場の母親とも面会した。病院と告別式、四十九日の場の計三度。だが会話らしい会話はほとんどなかった。いずれの場でも、大場の母親は俺が謝罪しようと何しようと、適当な相槌を打つばかりで、まともに取り合ってはくれなかった。その全てにおいて、彼女から悲哀の感情はほぼ感じ取れなかった。

 大場の四十九日も過ぎてしばらくした頃だった。笹倉が意識を取り戻したと、彼女の母親から連絡があった。だが彼女と会うことはできなかった。笹倉が俺との面会を拒否したからだ。スマホから彼女にメッセージを送ってみたが、既読がつくことはなかった。

 その後笹倉は無事退院したが、卒業式さえ出席することはなく卒業。そのままどこかへ引っ越してしまった。俺もその年に異動となった。

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