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【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #25

【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】

 生きている以上、死ぬつもりで生きないともったいない。
 一生なんて、残酷なくらいに短いんだから。


【語り部:五味空気】

「……」
 目を覚まし、辺りを見回す。
 ここは宇田川社の地下牢で、俺はその中に置かれた粗末なベッドで眠っていた。
 俺は、宇田川社へ業務妨害を行った殺人鬼として拘束されている男――五味空気である。
 自分の両手を開いたり閉じたりさせるのを眺めながら、己が何者であるかを確認する。
 俺以外には誰もいない。
 静寂に闃寂を重ねた、無音の地下牢。
「あいつは誰なんだ……?」
 今の今までみていた夢の内容を反芻し、考える。
 場所も相手にする連中もばらばらで、唯一共通していた点と言えば、あの声の主くらいのものだ。少女は共犯者と考えたが、そうだとして、俺とあいつは一体誰を待っているのだろう。
 あいつは「もうすぐ会える」なんて喜んでいたけれど、あれだけ人を殺し尽くしてでも会いたい『誰か』とは、何者なのか。そもそも、殺戮を繰り返してしか会えない人物なんて、この世に存在するのか?
「……あ、そうか」
 ――暴れ回った甲斐もあったってもんだ。やっと〝K〟班も投入される!
 夢の中でのあいつの言葉が反響する。
 他でもない、業務妨害先であるところの宇田川社がそれなんだ。
 つまり、会いたいと願う『誰か』は「〝K〟班」とやらに所属しているのではないか? あの言いかたからして、普段はあまり出てこないらしい「〝K〟班」を、宇田川社の仕事を妨害することで問答無用に引っ張り出し、『誰か』と会って、そして。
「会って、どうするつもりなんだ……?」
 どうにもやることが遠回りで大掛かり過ぎる。殺戮が目的なのか、邂逅が目的なのかも曖昧だ。それに俺が利用される理由も、いまいち判然としない。というか「〝K〟班」って、確か――
「――おやおや? 起きてたんすか、あちゃさん」
 慎重に記憶を辿り推理していたところに、突然に声が響いた。
 見れば、その瞳と同じ水色のセーターを着た女子中学生が、鉄格子の外に立っているではないか。
「むむ、まさに寝起きって感じっすね。うけるー」
 なにが彼女の笑いの琴線に触れたのかは不明だが、いやに上機嫌な様子で女子中学生は牢に這入ってきた。そうして流れるような動作で俺の両手を取ると、そのまま両手首に手錠をかける。そのあまりに自然な運びには、もはや苦笑いすら出てこない。
「ええと、あの、的無ちゃん……?」
「今日はドクターの代わりに、わたしがあちゃさんの治療をしてやるっす」
 言いながら、持ってきた救急箱を自慢げに見せる女子中学生。
「わかったらほら、とっとと脱ぐっす。あ、上だけで良いっすからね」
 手錠をかけられた状態で無茶を言う……と思うが、口には出すまい。もぞもぞと身体を捻るようにして、どうにか治療が行える程度に背中を見せる。
「ねえ的無ちゃん、今日は君一人なのかな」
 包帯を外し始めた女子中学生に、なんとはなしに話しかけてみる。背後でせっせと包帯を外す未成年女子と二人きりという状況に、どうしても耐えられなかったのだ。
「いいえ? このあとドクターも来るっすよ。今はちょいと先行して準備中なのです」
 女子中学生は、俺の中に渦巻く妙な緊張感などは知らないとでも言いたげに、平然と答えを返してきた。この子も肝が据わっているのか、或いは単純に危機意識が極端に低いのか……。意識されまくるよりは気楽で良いのだけれど。
「準備?」
「ですです」
「なんの?」
「すぐにわかるっすよ」
 あからさまに質問をはぐらかされてしまった。これ以上は言う必要がないということか。
「おお、さすが回復型。もうほっとんど治ってきてるっすね」
 少しして、包帯を解き終えた女子中学生は、傷口の辺りを指でなぞりながらにそう言った。若干爪を立てられているにも関わらず、それ以上の痛みはない。つまりは言葉の通り、ほぼ完治しているのだろう。全く、化物じみたものだ。
「あの情報屋さんに会いに行くって聞いてたから、ちょーっとだけ心配してたっすけど、これなら痛み止めを大量に飲ませなくとも良さそうっすね」
「……」
 それは裏を返せば、痛み止めを大量に飲ませてでも情報屋のところまで連行するつもりだったということか。末恐ろしい。

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