四十九院紙縞

オリジナル小説を書いてます。 活動場所等のリンク集→https://potofu.me/49in44ma

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マガジン

  • 長編小説『リトライ;リバース;リサイクル』まとめ

    記憶喪失の殺人鬼と、大鎌を携えた少女による、ちょっと歪んだ恋の話です。

  • 短編連作小説『透目町の日常』まとめ

    短編連作シリーズ『透目町の日常』をまとめました。基本的には一話完結なので、気になった作品からご覧いただければ幸いです。

  • 単発短編小説

    一話完結の短編小説置き場。

  • 長編小説『陽炎、稲妻、月の影』まとめ【完結済】

    記憶喪失の地縛霊と霊能力者の女子高生が、校内の心霊現象を解決していく物語です。

  • 長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】

    周囲から孤立している「僕」と自称狛犬の少女が、神社で歌の練習を通して仲良くなっていく話です。

最近の記事

【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #30

【語り部:五味空気】 「……ん? てことは、まだ俺が犯人だって確定していないってこと?」 「はい。まだ半分半分と言ったところです」  果たして、少女はけろりとそんな風に答えるのだった。 「あの笑い声がした近くに居たのが貴方だったから疑っている――というのが現状です。今の話を聞いていた貴方の表情は、いまいちピンときていないようでしたし。まあそれは、貴方に記憶がないだけからかもしれませんけれど」  ひとつ、約束してください。  少女がそう言うと同時に、電車が止まってドアが開いた

    • 【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #29

      【語り部:五味空気】 「雪の降る夜のことでした。あの日は、家族そろって夕飯の支度をしていたんです」  少女は語る。  五年前の陰惨な記憶を。 「特段変わったことなんてない、いつも通りの夜でした。けれど、なにかの気配を察知したのか、両親は慌てて私を抱えると、クローゼットに押し込んだんです。当然抗議しましたが、二人そろって、今までに見たこともない逼迫した表情で、『なにが起きても、「良い」と言うまで出てくるな』と言って、扉を閉めました。両親から仕事の話を詳しく聞かされていなかった

      • 【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #28

        【語り部:五味空気】 「……」 「どうかしましたか?」 「いや、なんか、落ち着かなくて」  昨日まで地下で鉄格子越しにしか会話していない相手と、こうして白昼堂々、駅前で普通に会話しているというのは、改めて考えるまでもなく奇妙な光景だった。傍から見て、まさか俺が殺人鬼で、少女が大鎌を振り回す人間とは思うまい。  そんな意味合いを込めた「落ち着かない」だったのだが、少女はすぐに意味が理解できなかったらしく、小首を傾げたのち、納得したように手を打つと、背負っていたケースを下した。

        • 【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #27

          【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】  生きるのに覚悟なんて必要ない。  そんなものがなくたって、人間は勝手に生きているんだから。  そんなことをおれに訊くなんて、自動販売機に売る気があるのかを訊いているようなものだ。 【語り部:五味空気】  医者猫男が先行して準備していたのは、シャワー室のことだった。  件の情報屋に対し、何日も風呂に入っていない野郎を連れて行くなんてのは宇田川社の名が廃るとかなんとか……そんな理由だそうだ。俺としては久しぶりにシャワーを浴びら

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        • 長編小説『リトライ;リバース;リサイクル』まとめ
          30本
        • 短編連作小説『透目町の日常』まとめ
          17本
        • 単発短編小説
          9本
        • 長編小説『陽炎、稲妻、月の影』まとめ【完結済】
          44本
        • 長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】
          39本

        記事

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #26

          【語り部:五味空気】 「ところであちゃさん、ひとつ訊きたいことがあるんすけど」  使用済みの包帯を片づけながら、世間話の気軽さで話題を振ってくる女子中学生。 「貴方、清ねえのこと、どうしたいと思ってるんすか?」 「……どうしたいって、なにが」 「やだなあ、すっとぼけるんじゃねえですよ」 「すっとぼけるもなにも……」  主語の抜けた会話に全くもって見当のつかない俺を尻目に、女子中学生はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる。 「あんなに素敵なお姉様と出会って、その魅力に魅せられな

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #26

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #25

          【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】  生きている以上、死ぬつもりで生きないともったいない。  一生なんて、残酷なくらいに短いんだから。 【語り部:五味空気】 「……」  目を覚まし、辺りを見回す。  ここは宇田川社の地下牢で、俺はその中に置かれた粗末なベッドで眠っていた。  俺は、宇田川社へ業務妨害を行った殺人鬼として拘束されている男――五味空気である。  自分の両手を開いたり閉じたりさせるのを眺めながら、己が何者であるかを確認する。  俺以外には誰もいない。

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #25

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #24

          第3話 約束【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】  本当はこんなこと、お前が知る必要はないんだ。  不必要な情報が入って、お前がお前でなくなってしまうんじゃないかと、それだけが心配で仕方がない。 【語り部:五味空気】 「ああ、もうすぐだ。もうすぐ会える。会えるんだ」  イヒヒ、と笑う男の声に、俺は覚醒を果たした。  意識が、視界が、混濁する。  うっすらと差し込む日の光が見えて、今が昼間であることを知る。屋内であるらしいが、外と同じくらいに寒く、時折冷たい風が身

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #24

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #23

          【語り部:五味空気】 「では、今日のところはこれで失礼します。明日はなにかと忙しくなると思いますし、しっかり休んで、心の準備をしておいてくださいね」  こんな環境に拘束している側の人間がなにを言うか、と突っ込みたくなったが、それ以外にも引っかかる言葉があった。 「明日? 心の準備?」 「あれ? ドクターから聞いてませんか?」  目をぱちくりとさせる少女。少女の言う『ドクター』とは、恐らくあの医者猫男のことなのだろうが……。 「なんにも聞いてない」  今日はスタンガンを使われ

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #23

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #22

          【語り部:五味空気】 「貴方の回復力がどれほどのものかという検証実験については、最終手段として置いておくとして……」 「えっ、ちょっと?!」  聞き返さずにはいられなかった。  回復力の実験って、とどのつまり、むやみやたらに切り刻まれたりすることを指すんじゃないのか? そんなのが計画段階とは言え、既に存在してるのか……? 「貴方を殺して、一体誰に、どんなメリットがあるんでしょう?」  しかし少女はその点について特に言及することなく、そんな問題を提示する。 「仮に貴方が不死身

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #22

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #21

          【語り部:五味空気】 「さて」  そして案の定、食事が終わると、仕切るように少女は軽く手を叩いた。 「それでは尋問に移ります。こっちに来てください」 「やっぱり今日もやるんだね……」 「当然です」  手招きをする少女に言われるまま、鉄格子に近寄った。  少女は昨日同様、写真を床に並べる。そこには予想した通り、目を背けたくなるような惨憺たる惨状ばかりが収められていた。 「さきほど貴方は、また夢の中で殺されたって言ってましたよね」 「嘘じゃないよ」  念押しの確認に、少女は自身

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #21

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #20

          【語り部:五味空気】  恐らくは夕方頃。  食料と『お茶』を携えやってきたのは、案の定、大鎌少女だった。今日も今日とて制服姿である。学校帰りにここへ寄っているのだろうから、今が夕方だろうと推測する。 「背中、もう抜糸したそうですね。おめでとうございます」  コンビニのオムライスを食べながら、特別感情を籠めずに少女は言う。  抜糸についてはなにも聞かされていなかったのだが、たぶん俺の意識が朦朧としている間にでも処置したのだろう。そう言えば、包帯が減った気もする。 「傷の治りが

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #20

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #19

          【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】  こんな気持ちは初めてで、正直、どんな行動が正解か判然としない。  それでも、この衝動だけははっきりとしている。  おれは、君に谿コ縺輔l縺溘>。 【語り部:五味空気】  目が覚めると、またぞろ医者猫男にスタンガンで麻痺させられ、昨日と同じく空調の効いた地下室に連行されていた。なにをするのかと言えば、殺し合いと称した検査以外は考えられまい。  だが昨日と違い、今日渡されたのはナイフだった。  ナイフは拳銃よりもずっと直接的で

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #19

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #18

          【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】  救いを求めようと思えるほどの人生を送ってきてはいない。  それでも救いというものを求めるのであれば、おれにとってそれは、たった一人の存在のことを言うのだと思う。 【語り部:五味空気】  ああ、今夜も風が冷たい。  仰向けになったまま俺は、寒くて死んじゃうよ、と独りごちた。  そんなこと言ったって、どうせ死にはしないんだろうけど。  ため息を吐きながら、ふと夜空を見上げる。たまには待っている間、星空を眺めているのも良いかもし

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #18

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #17

          【語り部:五味空気】 「……うん?」  なんとはなしに三件目の写真を眺めていると、あることに気がついた。  五人分の死体。  二月の深夜。  肺が凍ってしまいそうなほどの冷え込み。  頭の中がざわつく。  この中の一人の顔に、どうして見覚えがあるのだろう。 「なにか思い出しましたか?」  さすがに目敏い。少女は射抜くような瞳で訊いてきた。 「いや、なんでも――うっぐ!」  適当に誤魔化そうとした途端、凄まじい威力で首を絞められた。ああくそ、そうだった。俺には首に枷をはめられ

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #17

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #16

          【語り部:五味空気】 「まず前提として――貴方、宇田川社がどんな会社か、知っていますか?」 「知らない」  即答だった。  これまでの話を総合しても、裏社会で人殺しを生業としているという程度の認識しかない。しかしそれは少女も予想していたのか、でしょうね、と肩を竦めて話を続ける。 「ざっくり言えば、ここは民間の警備会社です。用心棒とかボディーガードと言ったほうがわかりやすいでしょうか。〈裏〉ではそこそこ大手で有名な会社です」  用心棒、ボディーガード。  なにかが脳にチクチク

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #16

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #15

          【語り部:五味空気】  ――貴方に死なれたら困るんです。会社の為にも、私の復讐の為にも。  ふと、昨日の少女の言葉が蘇る。  言っている意味がわからなくて重ねて質問をしてみたが、結局詳細はわからず仕舞い。少女は「早く記憶を取り戻してください」の一点張りだった。記憶がないなりに一晩考えてはみたが、この言葉の真意は掴めないまま。  会社の為はともかく、復讐の為というのがさっぱりだ。復讐相手とやらが俺であれば、会社の為と並列で話すのはおかしい。だから生かしておいてこそ、その復讐に

          【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #15