【長編小説】リトライ;リバース;リサイクル #29
【語り部:五味空気】
「雪の降る夜のことでした。あの日は、家族そろって夕飯の支度をしていたんです」
少女は語る。
五年前の陰惨な記憶を。
「特段変わったことなんてない、いつも通りの夜でした。けれど、なにかの気配を察知したのか、両親は慌てて私を抱えると、クローゼットに押し込んだんです。当然抗議しましたが、二人そろって、今までに見たこともない逼迫した表情で、『なにが起きても、「良い」と言うまで出てくるな』と言って、扉を閉めました。両親から仕事の話を詳しく聞かされていなかった