シェア
(1)――「血を、寄越せ……!」 その日の帰り道は、生憎の雨だった。 今日はせっかくの満月の日だっていうのに、空は一面厚い雲に覆われ、月のつの字もない。 雨だ。 豪雨だ。 土砂降りだ。 ざあざあと、雨が強くアスファルトを叩いている。 そんな最悪な帰り道の、途中。 暗い道に、思い出したかのようにある街灯の下。 そこに、一人の女が座り込んでいた。 ぐったりと項垂れ、意識を失っているように見える。 酔っ払いだろうか。それにしたって、酔い潰れるには早い時間の