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(1)――「キミはもう二度とこの部屋から出られない」 「今からキミを、この部屋に軟禁する!」 猛暑の気配が残る夕暮れどき。 大学で夏休み前最後の講義を受け、スーパーで食糧品を買い、ネット通販で買った諸々の受け取りを終え、ようやく一息つけたところで、彼女は高らかに意味不明且つ不穏な宣言をしたのだった。 「今度はどんな映画を観たんだよ、ユカリ」 僕はスーパーで買った安いカフェラテを飲みながら、それだけ返した。 所謂「ごっこ遊び」が突発的に始まる程度、僕と彼女の間柄で
(1)――「血を、寄越せ……!」 その日の帰り道は、生憎の雨だった。 今日はせっかくの満月の日だっていうのに、空は一面厚い雲に覆われ、月のつの字もない。 雨だ。 豪雨だ。 土砂降りだ。 ざあざあと、雨が強くアスファルトを叩いている。 そんな最悪な帰り道の、途中。 暗い道に、思い出したかのようにある街灯の下。 そこに、一人の女が座り込んでいた。 ぐったりと項垂れ、意識を失っているように見える。 酔っ払いだろうか。それにしたって、酔い潰れるには早い時間の