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2024年個人的10曲

はじめに

こんにちは、isuzu_mmです。
この記事はhishowcase Advent Calendar 2024 19日目の記事となっています。

今回の記事は、2024年にリリースされた様々な楽曲のうち、個人的に印象深かった10曲を選んで紹介するというものです。

音楽的な素養とかは皆無なので基本的には物語上の文脈の話をしており、それすらない場合は結局「ここが楽しくて好き」としか言っていないような記事ですが、読んで頂ければ幸いです。なお、だいたいリリース順に並べています。

1. 輪符雨リフレイン / MyGO!!!!!

作詞:藤原優樹(SUPA LOVE)  作編曲:木下龍平(SUPA LOVE)

2022年に放送されたアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の作中に登場するバンド、MyGO!!!!!が2月にリリースしたデジタルシングル。リングから、符はそのまま音読みしてレインからレインと拾って、「リフレイン」。リフレインの語義に「詩や楽曲の最後の部分を繰り返すこと」とあるように、雨の日になると祥子からCRYCHICの解散を言い渡された日のことを思い出してしまうそよに対し、その思いを分かち合いつつ前に進もうとする燈の心情を描いた曲である。燈とそよのやり取りに関しては、ガルパに同時実装されたイベント『雨粒に混ざる色』に詳しい。

歌詞は全体を通じてCRYCHICについての思いを語ったものになっており、特にラスサビの歌詞は、燈からそよへの返答としてもそのまま読めるような語り口が印象的だ。この歌詞が、ギターのリフレインが前面に出た間奏と、全体的にやたらと存在感のあるベースに乗っている。7月に行われた6thライブでは、間奏でベースにスポットライトがあたる演出がなされていたのも思い出深い。(同じ話をしている人がインターネットにあまり見当たらないので、筆者の幻覚だった可能性が出てきていますが……)

2. EVERYONE CAN BE A DJ / tofubeats

作詞:tofubeats  作曲:tofubeats

この項では、この曲単体がどうこうというよりは、EP『NOBADY』の話をしたい。『NOBADY』はtofubeatsが全曲Synthesizer V、つまりAIボーカルを全曲にわたって利用して製作したアルバムである。基本的には花隈千冬のボイスデータを使っているが、 一般的なボーカロイド作品のようにキャラクター性を前面に押し出すことはなく、通常のゲストボーカルと同じように扱っている。
このEPの大きな特徴として、歌詞の内容の極端な薄さが挙げられる。例えば、2曲目に収録されているEVERYONE CAN BE A DJの歌詞は、「だれでもDJにはなれる」「だれでもステップを踏み鳴らす」「なんでもいいから繰り返す」という3つのフレーズのみで構成されている。歌詞というものが持つ必然的な性質として、それを口にする歌手本人と結びついて響いてしまう部分がある中で、キャラクターの付与されていないAIが歌唱する曲ならば歌手の存在を無視した異様に単調な歌詞を書くことができる、というtofubeatsの考え方は、ボーカロイド文化に馴染みのある自分にとっても非常に新鮮だった。

ここからは完全に私事になるが、今年の3月頃に人生で初めてDJ機材を触りDJの真似事をする機会があった。それが何というわけではないのだが、DJというものの面白さや難しさについて改めて考えていた時期に、「だれでもDJにはなれる」と繰り返し語りかけてくるこの曲がリリースされたことに、数奇なタイミングの良さを感じたりもした。
残念ながらEVERYONE CAN BE A DJはMVが公開されていない。代わりというわけではないんだけど、同EPのリード曲であるI CAN FEEL ITのMVも、映画『ベイビーわるきゅーれ』の深川まひろ役で知られる伊澤彩織の珍しい黒髪姿が見られて楽しいので、ぜひ再生してみてほしい。

3. 心象的フラクタル-beni shoga / トゲナシトゲアリ

作詞・作曲:okoge  編曲:玉井健二・高橋亮人

2024年に一世を風靡したアニメ『ガールズバンドクライ』の劇中挿入歌。といってもトゲナシトゲアリの正式な楽曲ではなくて、海老塚智とルパがトゲトゲに合流する前に組んでいたユニット・beni shogaとしての曲である。作中での扱いとしては、第6話の挿入歌として間奏辺りが一瞬だけ流れて、その後シングル『視界の隅 朽ちる音』のカップリングとして収録されて、それでおしまい。ちょっとした舞台装置でしかない曲なんだけど、こうして2024年ベスト10に入れてしまう程には気に入っている。
何がそんなに気になるかと言えば、やっぱり絶妙に合成音声チックなボーカルだ。自分でもうまくは説明できないが、「音楽をやりたいんだけど、自ら人前に出て歌うのは難しい」という人たちの音楽として、かつてのボカロシーンに通じるものを大いに感じてしまう。結局、誰(何)がボーカルを担当しているのかは明かされておらず、智の歌声にオートチューン等を掛けたものにも聞こえるんだけど、少なくともコーラスには白神芽音というSynthesizer Vが使われている
そして何より、キーボードのメロディーが一貫してかっこいい。エレクトロ・ポップって感じ。

4. Luna say maybe / 初星学園

作詞:美波  作曲:美波  編曲:美波・真船勝博

初星学園、つまり『学園アイドルマスター』に登場するアイドル・月村手毬のソロ楽曲。ゲームを一切プレイしていない身分で曲だけに言及するのは自分でもどうかと思うんだけど、そんなことを言っていられないくらいに素晴らしい曲だと思っている、ということで一つ。
まず、イントロのメロディの贅沢さで一瞬にして心を掴まれる。稀代のヒットメイカー・美波の面目躍如と言っていい。そして何より、2サビからC、D、落ちサビを経てラスサビへと向かっていく展開の全て。「どこまでいけるのか」で一度転調してからのC、「3秒前バックステージ」でぐっと音が減った……と思いきや最高のギターが入り、「きっと、そう、きっと」から始まるDを経て再び転調、クラップから落ちサビに入り、そのままラスサビへと繋がっていく。この間だいたい40秒。音という道具のみで、よくこんなにもドラマチックな時間を演出することができるものだと、何度聞いても呆然としてしまう。

音楽の話からは若干逸れるが、この曲はMVもまた、世にあまり類を見ないくらい高クオリティだ。イントロでは手毬の「あのね。」という言葉がエフェクターを何台も通すうちに刺々しい刃に変化する様が描かれ、一方アウトロでは、曲の終わりに向かってエフェクターが次々と取り払われていき、手毬のありのままの言葉として「あのね、」が放たれる。ラスサビ前の「だから、この場所を大切にしたいの!」で満を持して登場するリップシンク付きのアニメーションも見事の一言。

5. RADIAL CITY / 内田真礼

作詞:山本メーコ  作曲:Dr. Lilcom・渡邉俊哉  編曲:Dr. Lilcom・渡邉俊哉

内田真礼のアーティストデビュー10周年記念4thアルバム『TOKYO-BYAKUYA』に収録されている楽曲。内田真礼が生まれ育った土地である"東京"をテーマとしたアルバムであり、いくつかの曲は新宿、秋葉原といった具体的な街を指定して制作されている。その中で、ここで扱うRADIAL CITYは渋谷を担当している楽曲だ。
この曲の最大の魅力はもちろん、2Bからサビをスキップして「Escape」の一言と共に始まる間奏だろう。主にキーボードから成る華やかな音色が、賑やかな夜の渋谷の街へと駆け出していく様子を想起させてくれる。また、歌詞に「忠犬」「公園通り」といった言葉がさり気なく散りばめられているのも嬉しいポイント。

6. 水金地火木土天アーメン / しろねこ堂

作詞:山田尚子  作編曲:牛尾憲輔

2024年8月に公開された映画『きみの色』の作中に登場するバンド・しろねこ堂の曲。「水金地火木土天アーメン」という耳慣れない言葉は、作中で主人公・トツ子が地学の授業からの帰り道で突然思いつく言葉に由来している。
『きみの色』は本当に良い映画だったんだけど、あの映画が傑作たりえた理由の半分くらいは作中に登場する音楽の素晴らしさにあったと、真剣に思っている。ピアノ・ギター・テルミン・オルガンという独特な構成から奏でられる3つの曲は、それぞれに違った良さがあって本当に衝撃的だった。特に、反省文〜善きもの美しきもの真実なるもの〜のイントロの低音を耳にした瞬間の驚愕と感動は忘れ難い。

ここで取り上げた水金地火木土天アーメンは、作中のライブシーンを締める最後の曲、しろねこ堂の代名詞となる曲として演奏された。「きみの色」「ルイ腺」「とつぜん」と、冒頭の数行でメンバー3人の名前を慌ただしく回収しにかかる所も、「土天アーメン」と「あったかソーメン」で踏んでくる所も、日暮ひぐらしトツ子という人物の色そのものみたいな可愛らしさで、本当に素敵な歌詞だと思う。

7. 月夜見海月つくよみくらげ / スリーズブーケ

作詞:ケリー  作編曲:塚田耕平

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのユニット・スリーズブーケの曲。問答無用の2024年個人的ベストソング。素顔のピクセルの衝撃からたったの一年足らずで、それに勝るとも劣らない曲が同じユニットからリリースされたことが、未だにちょっと信じられない気持ちすらある。

この曲の本当に全部、歌詞も曲も振り付けもジャケ写も衣装もヘアアレンジも全部を愛しているんだけど、あえて何かを語るとするなら、まずは歌詞に言及すべきだろう。
この曲の主題は、伝統を尊ぶ一方で自らのことを価値のないものとして卑下してしまう所のある人物・百生吟子が、先輩や同級生たちとの関わる中で一歩を踏み出せるようになる、という物語である。この主題を、人魚に憧れる海月の苦しさに擬えて歌うのが月夜見海月の歌詞の大筋だ。
もちろん、この歌詞に込められているのは百生吟子の物語だけではない。例えば、2Aの「人魚姫を真似た馬鹿馬鹿しい事でしょうか」は、スクールアイドルに憧れて名家・乙宗家を飛び出してきた梢の過去に、2サビの「苦しさは諦めていない決意の証だ」は、その病弱さから不自由な生活を強いられていた花帆の長野時代に結びついていると言える。
そして、歌詞に込められた意味合いの一部は振り付けにも反映される。1Aの「似合うわけないくせに夢見るのは変でしょうか」と吟子が歌う箇所ではカメラが引きの構図となって、先輩ふたりが吟子に向かって首を振ってみせる様子が映し出される。2Bでは「抵抗してみようか 見苦しさも私らしさなのだから」という歌詞を梢と吟子が歌い継ぎ、それに合わせて、後ろを向いて佇む吟子の正面に先輩ふたりが回り込み、ステージに向かって吟子の背中を押すのである。
何より、ラスサビで梢が歌う「大丈夫 誰より知っている 涙の味なら」は、一昨年と昨年のラブライブ!での辛酸が思い出されて涙なしに聞くことはできない感動的なフレーズだ。その直後に、なんと、めちゃめちゃ気持ちのいいブレイクが入る。出会いの喜びも、先輩への感謝も、惜別の悲しみも、どんな情緒だって爽やかなアイドルポップに包んで歌い上げることのできる最高のユニット・スリーズブーケの曲として、これ以上ない爽やかな締め方だと思っている。

月夜見海月制作に至る過程での、活動記録第4話の一コマ。
せっかくなので、Fes×LIVEの該当位置に飛ぶリンクを埋め込んでいる。

8. echo / higma feat. 初音ミク

作詞・作曲・編曲:higma

ボカロPであり、クリエイター集団・CDsの一員でもあるhigmaによる曲。筆者がコンポーザー・higmaとの出会ったきっかけは、8月に行われた電音部ハラジュクエリアの1stライブでサプライズ披露されたまぼろしのほしという曲だった。それ以来、窓辺のモノローグ(yosumi)、ながいよる(somunia)といった馴染みのあるVシンガー達にも曲を書いていたことを知り、それらがとても良かったことから贔屓にするようになっていった。
echoはYouTube Music Weekend 8.0に併せて投稿された曲であり、この曲の制作風景、ひいては本人の制作態度をそのまま作品にしたような歌詞とMVが特徴的な作品だ。サブスク時代にしては珍しく1分40秒もあるイントロは、メトロノームのクリック音だけの状態からキーボード・ギター・ドラムといった順で楽器が徐々に参加していき、音楽の制作過程を表現しつつ、曲の盛り上がりを滑らかに構成していて楽しい。
MVと曲のリンクもとても効果的に使われている。3分近く待たせて漸く始まるサビでは、画面の裏の人物も曲に合わせて拳を掲げ、視聴者と共に盛り上がる。そして何より、「まだ まだ まだ」と繰り返されるCパートでは、画面の裏の人物がギターを奏でる姿と、画面の中のミクがマイクに向かって歌う姿がシンクロする。全体を通じてコンセプトはシンプルながら、非常に手の込んだ愛情を感じる作品になっているので、ぜひ一度再生してみてほしい。

9. いつもの街に / in the blue shirt, サンポ(cv. 黒沢ともよ)

作詞・作曲・編曲:in the blue shirt

ジャンプTOONという謎の媒体で9月から連載されている『ぬのさんぽ』という漫画のテーマソング。曲を作っているin the blue shirtは、以前星宮ととのライブにゲストDJとして来ているのを見かけて以来個人的に贔屓にしている、インストを中心に素晴らしい曲を書いているコンポーザーだ。そして、歌っているのはなんと黒沢ともよ御大。こんなに嬉しいコラボって、人生でもあんまりない。漫画の内容を反映した素朴に可愛らしい歌詞も、中学生らしい幼さと前向きさに溢れる黒沢ともよの歌声も、全部が嬉しい曲だ。
なお、漫画の方も柞刈湯葉が原作、強風オールバックで知られるイラストレーターの小津が作画というとても豪華な布陣であり、毎週とても楽しいので是非読んでもらいたい。下のPVは、連載開始を記念して制作された"アニメOP風のアニメーション映像"なのだが、小津の作画がそのまま動いて非常に可愛らしいので、必見。

10. BE NOISY! / KMNZ

作詞・作曲・編曲:水槽  ギター:Hylen  MIX:NNZN

2023年12月1日にKMNZ LIZ活動終了の報せが出てから、約1年。この1年の間に、KMNZの新体制での活動がこんなにも見事に軌道に乗るなんて誰が予想していただろうか。まずは、この記事にKMNZの名前を書けること自体に心から感謝したい。

この1年でKMNZがリリースした新曲は計6曲。どれも大好きなので1曲に絞るのは非常に難しいが、あえて選ぶのならば、馴染みのあるアーティストである水槽が曲を寄せているBE NOISY!を出すのが筋だろう。
まずイントロ。歌詞本編に入る前のちょっとした掛け合いはKMNZのお家芸とでも言うべきものなんだけど、今回はそれが水槽のトラックに乗っているし、"suisoh, HURRY UP baby."というサウンドロゴまで入っている豪華仕様。「超満員のフロア照らすAntares」から始まるサビも、ライブ中の高揚に満ちた無敵感を見事に描き出していて背中を押されるし、「OH YEAH! BE NOISY! 」という掛け合いは、ライブでは最高のコーレスになるんだろうと期待している。1月のライブ、チケット取れるといいなぁ。

総括

この記事のサムネイルに使った画像は、stas.fmというアプリで出力した「2024年によく再生したアーティスト・トップ8」である。左上から順に、電音部、TEMPLIME、星宮とと、MyGO!!!!!、ナナヲアカリ、スリーズブーケ、夏川椎菜、長瀬有花と続く。この8者の中で、今回の記事に登場したのはMyGO!!!!!とスリーズブーケだけなので、いわゆる表紙詐欺というやつになる。「たくさん聴いたアーティスト」と「とても良かった曲を書いたアーティスト」って意外と被らないらしく、不思議なことだなぁと思った。(終)


I CAN FEEL ITのMVに伊澤彩織が出ていると書いたんだけど、そういえば『きみの色』に出てくるしろねこ堂のボーカル・作永きみの声優は髙石あかりなので、偶然『ベイビーわるきゅーれ』のちさととまひろが揃った形になったようです。

読んでくださった方はありがとうございました。
皆さんの2024年10曲もぜひ教えてください。

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