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睡眠の秋、お泊まりの秋


柚菜「今度の三連休、ゆなんちこない?」

○○「え?」

柚菜「お泊まりしよーよ!」


どうやらご両親が夫婦で旅行らしく、
彼女の柚菜の家に呼ばれた。



柚菜との出会いは僕の一目惚れ。


高校の入学式で柚菜に惹かれてから約1年、
どうやら僕の好意はバレバレだったらしい。



色んな人に背中を押され、
2年の夏になんとか告白したら
笑ってOKされた。


柚菜「ふふ、もうずーっと待ってたんだから」


の一言は一生忘れられない。



めでたくカップルになって約3ヶ月。


活発な柚菜は、
緊張しいで恥ずかしがりで
なかなか恋人らしいことができない僕に
いつも新しい体験をくれる。

ふたりで登校したり、

ふたりでお昼を食べたり、

ふたりで宿題をしたり。

 

今回もだけど、
柚菜がいつも誘ってくれる。

 

デートも何度かして、
色んなところに行った。



一緒に手を繋いで歩いたり、
ふたりで過ごした時間はまだ短いけど
たくさんの幸せを重ねてきた。



でも家なんて入ったことないし、 
お泊まりも当然まだだ。


今回も身体が勝手に緊張して、
どうしようなんて悩んでるうちに約束の日。 


デートの待ち合わせをしたり、
帰りに家まで送ったり、
何度か来た柚菜の家の前。


このインターホンを押したら
お泊まりデートが始まる。


緊張がいよいよ止まらない。



ピンポーン


柚菜「はーい!」



少しして、
ドアが開いて顔を綻ばせた柚菜が顔を出す。


柚菜「いらっしゃい!入って入って!」



柚菜「もう、緊張してるんでしょ〜」

柚菜「早く行くよ!今日は○○とやりたいこといっぱいあるんだから!」



柚菜は今日も僕の緊張を見透かして、
助けてくれる。





柚菜「まずは映画を見まーす!」


手を洗ってリビングに通されると、
準備万端。


カーテンは閉められ、
ポップコーンやジュースが並んでいた。



柚菜「これ見るの楽しみにしてたんだから、真っ暗だからって寝ちゃダメだよ」

○○「大丈夫だって」

柚菜「でも○○授業中はいっつも寝てるじゃん」

○○「ま、まあ授業と映画は別だよ」

○○「それに柚菜だって授業中寝てるじゃん」



そんなこんなで始まった映画は
甘酸っぱい恋愛モノ。


電気も消して本当に真っ暗な部屋で、
僕らの正面のテレビだけが眩く光っている。


その灯りに目を奪われている柚菜は
とても綺麗だ。



「アタックが足りないぞ」

「そこはもっと君から行かなきゃ」

なんて
引っ込み思案な主人公に注文をつける君の心に

僕はどう映っているんだろう。



柚菜「あー楽しかった!」

柚菜「恋っていいね、キュンキュンしちゃう」

○○「恋愛映画なんて久しぶりに見たなあ」

柚菜「○○は映画よりゆなのこと見てたでしょ」


○○「…」

柚菜「ゆな可愛かった?」

○○「え、うん…」

○○「その、すごく綺麗だったよ」





柚菜「えへへ、ありがとうね」



いつも笑顔の柚菜が、
もっと幸せそうに笑っている。


恥ずかしくても、緊張しちゃっても
もっと自分から伝えたいな。


柚菜の幸せそうな笑顔が見たい。



柚菜「もう、なに固まってんのさ」

柚菜「ご飯作るよ〜!」


いつの間にかキッチンにいて手招きする柚菜。


隣に行って手伝う。

2人とも料理ができない訳じゃないので
わりとスムーズに進んでる。



慣れた手つきで野菜を切る柚菜の横顔が

とても綺麗だ。


○○「大人になってもこうやって料理したいな」


ボソッと呟いた一言は届いていたようで、

 
柚菜「ゆなもだよ」




柚菜「もう、自分で言って真っ赤にならないでよ」

 
なんて言う柚菜の顔だって赤い。



こんなやり取りもありつつ
完成したシチューは絶品で、

ふたりで舌鼓を打った。


その後はお風呂をいただき、
寝る前に学生らしく課題の時間。


柚菜「メガネのゆななんて家族にしか見せたことないんだからね」



ってアピールしてくる柚菜が可愛すぎて
課題が手につかない。


○○「め、メガネも似合ってるよ」

柚菜「ふふ、○○ってほんとに慣れないんだね」

柚菜「でもありがと、嬉しい」



結局色んなお喋りをして、
ふたりとも課題はほとんど進まなかった。



柚菜「じゃ、もう寝よっか?」

柚菜「話しちゃうからぜんぜん進まないじゃん」


○○「僕はどうしたらいい?」



柚菜「え、ここに決まってるじゃん」

柚菜「ゆなと一緒に寝るんだよ?」

○○「えっ、、、」

柚菜「ほら早く!」


柚菜のベッドに引っ張り込まれる。


柚菜「ね、いい感じじゃない?」



夏も終わり、冷房のいらない季節。

開けた窓から少しひんやりした風も
吹き始めるような季節。


ふたりで身を寄せ合うベッドは
確かに居心地がいい。



また電気を消して、
今度は本当に真っ暗な部屋。

柚菜「ねえ」

○○「なに?」

柚菜「○○がゆなのこといっぱい褒めてくれるのは嬉しいけど、」

柚菜「無理はしなくていいんだよ?」


○○「無理はしてないよ」

○○「その、恥ずかしいし緊張はするんだけど」

○○「やっぱり柚菜のことが好きだし」

○○「柚菜が喜んでくれるのが嬉しいんだ」


柚菜「へへ」

柚菜「ゆなも○○のこと、好き」

柚菜「じゃあおやすみ」

○○「あ、うん、おやすみ」




暗闇の中、目を凝らしてみると

もうスヤスヤと眠っている柚菜。


一緒のベッドなんて緊張して寝れるはずがない

そう思ってたのに

何だか眠くなってきて、、、




柚菜「うーーーん、おはよー!」

翌朝、朝日と
元気な柚菜の声に起こされるまで
気持ちよく寝てしまった。


柚菜「めっちゃよく寝たー!」

○○「んー、おはよ…」

○○「朝から元気だね」

柚菜「○○と一緒に寝れたからかなあ」

柚菜「もうひとりで寝れなくなりそう」

○○「すごい寝心地よかったね」


柚菜「ね」

柚菜「もうちょっとゴロゴロしよー」

○○「せっかく休みだもんね」



ふたりですごす
何もせずただゴロゴロする時間は
とても幸せで、



カーテンを揺らす秋の涼しい風と

その隙間から射し込むまだ強い朝日が

僕らの幸福を彩ってくれる。



「三連休最終日」の憂鬱なんて気にもせず

僕たちはこの贅沢な時間を

ただ、楽しんでいた。







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