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ツンツン幼なじみに惹かれてる!?



○○「お願い、課題見せてください!」

蓮加「無理」

○○「そこをなんとか!」

蓮加「ほら、早く行くよ!遅刻したらどうすんの」


幼なじみの岩本はなぜか俺だけに当たりが強い。

課題は見せてくれないし、

 


蓮加「あんたは別にいいでしょ」

そのくせ自分が忘れ物をした時は
俺のを勝手に使うし、


蓮加「何こっち見てんのよ」

ちょっと様子を窺ってるだけで怒られる。


蓮加「放課後ちょっと先生に呼ばれてるからちゃんと待ってなさいよ」

まあ俺に自由は無い、基本的に。



そして厄介なことに

岩本は、


顔がいい。

良すぎる。




今までは特に意識せず普通に接してきたけど、

最近ドキッとすることが増えた。
   


俺にはずっとあんな感じなのに

他の人と笑顔で喋ってるのを見ると、


その笑顔にやられてしまう。



かわいいな、


昔みたいに楽しく過ごせないのかな、


なんてどうしても思ってしまう。



昔は仲が良かった。すごく。



蓮加、○○ってお互い名前で呼びあってたし。

いつも一緒に通学してたのは今と同じでも、

会話は弾んでいたし、

お互いずっと笑顔だった。



まあ近すぎたが故に、

あいつも気まずいのかもしれないな。



蓮加「あんたなにボサっとしてんの」

蓮加「課題やるんでしょ?」

○○「…」

○○「見せてください!」

蓮加「だから無理」



いつも通り会話のないまま学校に着き

こんなやり取りの後、

別の友達に借りた課題を写す。



ふと教室の隅に視線をやれば、

仲のいい吉田さんや阪口さんと話す岩本。



あの眩しい笑顔が、

大きな笑い声が、

最後に俺に向けられたのはいつだろうか。



普段はこんな感傷に浸る人間じゃないのに、

一度思い出してしまうとなぜだか止まらない。 


 
ふたりで行ったカラオケ、

ふたりで行ったテーマパーク、

ふたりで行った花火大会。


楽しかった記憶を数えていたら

1日が過ぎるのは一瞬で、


蓮加「今日は吉田たちとカラオケ行くから」


そう言われて1人で
思い出の中を彷徨いながら家路に着く。



久しぶりにひとりぼっちで歩く通学路には、

いつもとまた違った静寂が広がっている。


??「あ、○○じゃん」




○○「あ、久保、どうした?」


小学校の時から俺も岩本も仲良くしている久保に

久しぶりに声をかけられた。



史緒里「今日は蓮加は?」

○○「吉田さんたちとカラオケ行くってさ」

史緒里「ふーん、で、最近蓮加とはどうなのよ」

○○「……」




そういえば、俺はあいつと「どう」なんだろうか?


いつも一緒に通学している時点で

まあ仲が悪い訳じゃないんだろう。


でも現状仲がいいとも言えない。


だからといって

なんの感情も抱いてないわけじゃない。



史緒里「わかんないんでしょ、」

史緒里「自分と蓮加がどういう関係か」


○○「まあ、うん…」

史緒里「はっきり言うね」

史緒里「変な感じでしょ?」




○○「そう、だな…」


史緒里「今のままでいいの?私はダメだと思う」

史緒里「あんまり他人同士の関係性に首突っ込むもんじゃないと思うけどさ、」


史緒里「お互い良くないんじゃない?」 


○○「……」



史緒里「単刀直入に聞くけどさ、」

○○「うん」



史緒里「○○、蓮加のこと気になってるんでしょ」



俺が、岩本のことを気になってる?



気になってるって、「好き」みたいなことか?


史緒里「ずっと蓮加のこと気にしてるでしょ」

史緒里「授業中も休み時間もずっと蓮加の方見てるの気づいてるからね」


○○「「好き」とかそういうのかはわかんない」

○○「でも、最近ずっと、前みたいに楽しく過ごせたらなって思ってる」



史緒里「そっかあ、」

史緒里「他に蓮加に対して思ってることない?」



○○「うーん、」

史緒里「まあ言ってみなよ」


○○「その、さっきのと同じなんだけどさ、」


○○「あいつの笑顔が見たいんだ」


史緒里「うん」


○○「あいつの笑顔ってすごいじゃん」 

○○「ほんとに楽しそうに笑うしさ、」

○○「また2人で話してる時にあの笑顔を見せてくれたらなって思う」



史緒里「それはわかる」

史緒里「でもまずあいつ、って呼ぶのやめな」

史緒里「ちゃんと蓮加って呼んであげて」



○○「……」


史緒里「まあこれに関しては蓮加も良くないなって思うけど」


史緒里「高校生にもなってずっと仲良い異性の幼なじみのままってのも、」

史緒里「お互い恥ずかしいだろうなとは思う」


史緒里「でも今のふたりは外から見たらすごいギスギスして見えるよ」

史緒里「それはなんか嫌でしょ?」



○○「まあ確かにな…」


史緒里「あと、蓮加の気持ちもちゃんと考えてあげなよ」


史緒里「じゃあバイバイ、私こっちだから」


○○「ああ、色々ありがとな」


史緒里「ううん、前みたいに楽しそうなふたりに戻って欲しいからさ」

史緒里「相談ならなんでも乗ってあげるからね」




久保と別れてまた一人。



俺、あいつのことが好きなのか?


確かに、笑顔が見たいなんて他の人に思わないし



あいつと2人でいた頃は楽しかったし心地よかった



でもそれだけで「好き」かはわからない。



仲の良い幼なじみに戻りたいだけなのか、

異性として意識しているのか。


久保の言う、「気になってる」も

どっちの意味かわからないし。



何より久保も言ってたけど、 

あいつの気持ちが大事だし。


そういえば、

あいつは俺の事をどう思ってるんだろうか


「なんでも話せる幼なじみ」のはずが

分からないことだらけだ。



でも、

また今度、前みたいに話しかけてみるか。



それで少しでも前みたいな関係に近づけたら、

なんて。




 ○○「あ、おはよう、蓮加」



蓮加「あ、お、おはよ」


○○「昨日吉田さんたちとカラオケ行ったんでしょ、どうだった?」


 
岩本、いや蓮加に話しかけるって

こんな感じで良かったんだっけ。



蓮加「ん、まあ、いつも通りだよ?」

蓮加「ふふ、なんか久しぶりだね、この感じ」


○○「ああ、そうだな…」



ぎこちなかったけど

久しぶりのなんでもない会話。



蓮加が零した笑みは

きっと一生忘れないだろう。










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