8Mile
言わずと知れた、エミネム主演の自伝的映画『8Mile』。アカデミー賞歌曲賞受賞した「Lose Yourself」が有名。Hip Hopがアカデミー賞を受賞したのは初めてのこと。ノミネートした年にパフォーマンスは無かったらしいが、2021年の授賞式での圧巻のパフォーマスだった。
舞台は1995年のデトロイト。デトロイトと言えば、自動車産業が有名だか、この映画の舞台となった頃は、日本車に押されて米国の自動車産業が下降し、教科書でも有名な日本車を壊す人の写真が撮られた少し後。主人公も自動車の関連工場で働いている。恋人と別れ、母親の元に戻った、主人公。生活は困窮を極めており、ラップで一旗あげたいと夢を持つ。8Mileの向こう側を目指す、立身出世物。
自伝的映画を謳っているのだから、主人公の最終的な成功は約束されている。どん底からマイク1本で成り上がったサクセスストーリーかと思いきや、意外と直接的な成功までは描かれず、成功前夜までの歩み。その虚実入り混じった感じが、意外ながらも良かったと思う点だ。
作品そのものに驚きや感動が仕掛けられているわけではなく、底辺を這いずり回っていた主人公が、自分の才能と運でチャンスを掴む、王道中の王道。黒人文化に白人が入ることによって生まれる、人種差別。被差別の対象となるのが白人という、これまでにあまり向けられることがなかった視点。
自分のこれまでの人生と照らし合わせて、友情やその境遇に感情移入出来るかというとそれは難しい作品。しかし、自分の知らない、縁のなかった世界を覗き見られる作品として、個人的には楽しめた。
本作を見た後で知ったのだが、この"8Mile"って、8Mile≒12.8Kmではなく、8Mile Rd.という通りの名前だということ。
2024年1作目