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喫茶Raindrop

イントロダクション

ゴブレットビュート拡張区の一角。砂漠の乾いた風が吹き抜ける中、ひっそりと佇む喫茶店がある。

その名は——『喫茶Raindrop』。

とある冒険者が、疲れ切った表情で人々の忙しない足音を避けるように路地を進んでいた。すると、その視界に静かに佇む喫茶店が飛び込んできた。
長い旅路の末に辿り着いた街。彼はこの数週間、終わりの見えない砂漠で魔物と戦い抜き、つい先日、共に旅をしていた仲間たちと別れたばかり。背負った武器の重さが肩に食い込み、何度も乾いた喉を鳴らしながら、彼は足を引きずるように歩いていた。その目は砂嵐にかすみ、足取りはまるで石を運ぶように重い。

外の世界は厳しい。太陽の熱気が肌を焼き、砂嵐が視界を遮る。彼はその度に顔を覆い、疲れ果てた足を引きずるようにして歩いていた。乾いた空気と喧騒が渦巻く街並みの中で、彼の目に飛び込んできたのは『喫茶Raindrop』の看板だった。淡いブルーの背景に白い文字で描かれたその名は、彼の胸に懐かしい記憶を呼び覚ました。看板を見た瞬間、彼は幼い頃に祖母と通った小さな町の喫茶店を思い出した。その喫茶店は、学校帰りに立ち寄っては甘いお菓子と温かな飲み物で迎えてくれる特別な場所だった。その記憶が不意に甦り、この『喫茶Raindrop』に足を踏み入れたいという思いを強くした。

ドアを押すと、心地よい鈴の音が響き渡る。冒険者が足を踏み入れた途端、外の熱気が一瞬で消え去り、涼やかで柔らかな空気が彼を包み込んだ。店内に漂う微かな花の香りと、温かい木材の匂いが、まるで砂漠の中で見つけたオアシスのようだった。

室内はエキゾチックで温かみのあるデザインに彩られている。アラビアン風の柱が目を引き、柔らかな青や紫のランタンの光が空間全体に幻想的な雰囲気をもたらしている。冒険者は視線を動かしながら、室内の細部に目を凝らした。温かみのある木材と石材が調和し、巧みに配置された植物たちが自然と人工の光を浴びて生き生きとしている。

壁際の円形の本棚には、冒険の記録や詩集が並んでいる。その中には、彼がかつて読んだことのある詩集も見つけた。思わず目を細めながら、懐かしさが胸を満たす。ローテーブルの上にはカラフルな砂時計が置かれており、時の流れを視覚的に示している。彼はその砂の動きをぼんやりと眺めながら、自身の過去の旅路を思い返した。

「いらっしゃいませ。」

カウンターの向こうから優しい声が響いた。声の主はミコッテ族の女性だった。白く染めたショートヘアにピンクのメッシュが映える。褐色の健康的な肌には、頬にピンク色の蝶がペイントされている。彼女は冒険者に柔らかな微笑みを向け、自然体で話しかけてきた。

「初めてのお客様ですね。どうぞ、お好きな席にお座りください。」

冒険者は一瞬戸惑いながらも、指し示されたソファに腰を下ろした。白いソファにはカラフルなクッションが並べられ、そこに腰掛けると、心地よい柔らかさが体全体を包んだ。彼女の声には不思議な温かみがあり、初めて訪れた場所であるにもかかわらず、どこか懐かしさを感じさせるものがあった。

「お疲れのようですね。」

彼女は静かに言い、カウンターから近づいてきた。冒険者が答えを返す前に、彼女は続けた。

「こういう時は、ミントティーがおすすめです。香りが疲れた心を癒してくれますよ。」

彼女が運んできたカップからは、優しいハーブの香りが立ち上る。冒険者は一言も発さずに頷き、カップに口をつけた。その瞬間、まるで冷たく乾いた砂漠の風が、一瞬で緑豊かなオアシスの爽やかな風に変わったかのような感覚に包まれた。ティーの温かさが喉を通ると、それは疲れた体にじんわりと広がり、心臓の奥深くまで染み渡っていった。砂漠で感じ続けた緊張感が、ふっと溶けていくようだった。ふと、彼はまだ幼い頃、風邪をひいた時に母親がよく作ってくれたハーブティーを思い出した。母親の温かな手が震える彼の小さな手にカップをそっと渡してくれたあの瞬間。カップから立ち上る優しい香りと共に、心が癒された記憶が、今この瞬間、鮮明に蘇ってきた。

カウンターに戻った彼女は、他の客と談笑しながらも、時折冒険者の方に目を向けて様子を伺っていた。彼女の振る舞いには、さりげない優しさと気遣いが滲んでいた。近くでは、常連客らしき男性が店主と親しげに話している。彼の笑顔や穏やかな声から、この場所がどれだけ人々に愛されているかが伝わってきた。

やがて、冒険者は店内の静かな雰囲気に馴染み始め、周囲をより注意深く観察する余裕が生まれた。壁の本棚には冒険の記録や詩集が並び、ローテーブルにはカラフルな砂時計が置かれている。店内のどこを見ても、日常の喧騒から切り離された安らぎを感じる。

ふと、彼は気づいた。自分が口数少なく、ただ座っているだけなのに、この店の空間と店主の存在だけで心が満たされていることを。

店を出る頃には、冒険者の顔にはわずかな安堵の表情が浮かんでいた。再び訪れることを確信しながら、彼は静かに扉を閉じた。鈴の音が再び鳴り響き、店の外へと戻る。砂漠の風が再び彼を迎え入れる。だが、その冷たさも、肌を焼く熱気も、今の彼にはただ穏やかに感じられた。
『喫茶Raindrop』という小さなオアシスが、砂漠の荒れた風に新たな命を吹き込むように、彼の心に安らぎをもたらした。この扉をもう一度開ける日が、そう遠くないことを彼は確信していた。

「また此処を訪れた時、自分がどんな顔をしているだろうか。」

そんなことをふと考えながら、彼は砂漠の道を歩き出した。
その後も『喫茶Raindrop』は、彼にとって特別な場所として心に刻まれることになるのだった。

店内の様子

店主さん
店内ハウジング
店内ハウジング
店内ハウジング
実際の様子

基本情報

喫茶Raindrop
MeteorDC Belias ゴブレットビュート 19-50
不定期営業
#Raindrop_FF14

© SQUARE ENIX

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