Bar《CuracionNoche》
イントロダクション
シロガネの夜は、街灯の明かりが石畳にぼんやりと影を落とし、海風が遠く波の音を運んでくる。人通りも疎らな静かな通りの一角、控えめな明かりに照らされた扉がひっそりと佇んでいる。その扉には《CuracionNoche》の名が記されていた。
冒険者は扉の前でしばし立ち止まり、周囲を見渡した。
夜の静けさの中、この場所だけが時間を忘れたかのように独立した空間を醸し出している。彼は無言で扉に手をかけ、ゆっくりと押し開けた。
扉の向こうには、まるで別世界が広がっていた。
暗めの色調で統一された空間は、どこか落ち着きと高級感を漂わせながらも、植物や水槽の柔らかな光によって自然の息吹を感じさせる。
その中心に鎮座するバーカウンターの背後には、青い光を放つ大きな水槽が設置されており、中で緩やかに揺れる植物や鮮やかな花々が幻想的な雰囲気を作り上げていた。
ステンドグラス越しに漏れる柔らかな光が天井を彩り、カウンターやテーブルに置かれたグラスがその光を受けて静かに輝く。足元からは木の床材がしっかりとした温もりを伝え、人工的な要素と自然が絶妙に融合しているこの空間が、訪れる者を優しく包み込んでいる。
カウンターには、金髪のミコッテ族の男性が立っていた。
軽く乱れた髪型が自然体の雰囲気を醸し出しているが、黒いベストと白いシャツをきっちりと着こなし、左手を胸に当てた姿勢には誠実さと洗練が滲んでいる。穏やかな笑みを浮かべた彼の目は、静かに冒険者を迎えていた。
「いらっしゃいませ。」
柔らかな声が静かな空間に響く。その一言には、どこか心を解きほぐす力が込められているようだった。冒険者は無言で軽く頷き、カウンター席の一つに腰を下ろした。
店主は必要以上の言葉をかけることなく、棚に並ぶボトルを目で探る。やがて、琥珀色の液体が入ったボトルを手に取り、グラスに慎重に注ぐ。その動きは滑らかで、音を立てることさえも計算されたような丁寧さがあった。
「どうぞ、お楽しみください。」
差し出されたグラスを手に取ると、ほんのりスモーキーな香りが鼻をくすぐる。冒険者は一口飲み、口の中に広がるまろやかな風味をゆっくりと味わった。体に染み渡るような温かさが、旅の疲れを静かに溶かしていく。
カウンターの隣には、静かにグラスを傾けるロスガル族の男性が座っている。彼もまた寡黙で、グラス越しに揺れる水槽の光景をじっと見つめているだけだ。一方、奥のプライベートラウンジエリアでは、二人のヒューラン族の女性が低い声で談笑している。その声は静かな調和を乱すことなく、空間に心地よい温もりを加えていた。
ステンドグラスから差し込む光が、彼らのシルエットをぼんやりと浮かび上がらせる。店内に響くのは、グラスが軽く触れ合う音や、遠くで聞こえる波の音だけだ。その静寂が、この場所を特別な空間にしていることを冒険者は感じていた。
グラスを空にした冒険者は、ふと立ち上がり、水槽の前に歩み寄る。
水槽の中では緑の葉と色とりどりの花が、ゆっくりと流れる水に揺れている。その光景は、彼が見てきたどの風景とも違い、穏やかでありながら幻想的だった。
「この空間が、少しでもあなたの心に安らぎを与えられたなら幸いです。」
背後から店主の声が聞こえる。冒険者は振り返ることなく、小さく頷いた。言葉を多く交わす必要はない。この静かなやり取りだけで十分だった。
冒険者が立ち上がると、店主は変わらぬ穏やかな笑顔で一礼し、その姿を目で見送る。扉を押し開けると、外にはシロガネの夜風が広がっていた。冷たい空気が頬を撫でるが、店内で過ごした時間の温かさが胸の中に残っている。
冒険者は振り返らずにその場を後にした。
静かで幻想的な空間と、寡黙な店主の笑みが、記憶の中で優しく光っていた。またあの場所に戻る日が来るかもしれない――そんな思いを抱きながら、夜の通りを静かに歩き始めた。
店内の様子
基本情報
落ち着いた空間で素敵な夜を。
Bar《CuracionNoche》
MeteorDC Mandoragora シロガネ 23-41
不定期営業
#Bar_CuracionNoche
© SQUARE ENIX