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Barルクス

イントロダクション

夜のゴブレットビュート拡張区は、砂漠の夜に独特の生命を宿していた。
遠くから聞こえる噴水の音は、静寂の中に心地よいリズムを与え、街灯に照らされた石畳の道が優しく光を反射していた。吹き抜ける風に混じる砂の匂いと、どこかで漏れ聞こえる人々の笑い声が、夜の空気に温もりを添えていた。その中を歩む冒険者の足取りは重く、胸の内には微かな緊張が渦巻いていた。扉の上にかけられた木製の看板には、控えめな装飾で「Barルクス」と刻まれている。

冒険者は足を止め、看板をじっと見つめた。扉の向こうに広がる未知の空間に思いを巡らせるたび、胸の内で緊張が膨らむ。自身の重い鎧がこの空間に不釣り合いではないかという不安が、頭をかすめた。それでも好奇心が勝り、意を決して扉を押し開けた。その瞬間、柔らかな輝きと心地よい温かさが彼を迎え入れた。

柔らかな照明と洗練された内装が目に飛び込む。カウンターの背後に控える巨大な水槽が、柔らかな光を湛えている。揺れる水面と色とりどりの魚たちの姿が、冒険者の心を静かに解きほぐしていった。

「いらっしゃいませ。」

柔らかな声に顔を上げた冒険者の視界に、ヴィエラ族の店主が静かに立っていた。白いシャツと茶色のネクタイ、端正なベストが形作る姿は、どこか彫像めいた威厳を漂わせつつも、穏やかさを兼ね備えていた。目元に浮かぶ穏やかな微笑が、冒険者の胸に一瞬で安らぎの波を送り込んだ。店主は胸に手を当てて軽く一礼すると、微笑を浮かべた。その礼儀正しい仕草が、彼の心に静かなさざ波を立てた。冒険者は肩の力が抜け、軽く頷いて応じた。

「初めてのご来店ですね。お好きな席へどうぞ。」

冒険者は店内を見渡し、カウンターの隅にある席を選んだ。椅子に腰を下ろすと、木製の椅子が静かに軋む音が聞こえる。その小さな音が、彼に自分の存在を確かめさせるようだった。

店内には、ミコッテ族やアウラ族と思しき女性たちがカウンターやテーブル席で談笑している姿があった。彼女たちは洗練された装いで、グラスを手に静かに微笑む者もいれば、親しい仲間と軽やかに笑い合う者もいる。その穏やかで心地よい空気が、冒険者の緊張をさらに和らげた。

目の前にはアンティーク家具が配された空間が広がり、柔らかな照明が赤レンガの壁を照らしていた。だが、冒険者の視線を真っ先に奪ったのは、巨大なアクアリウムだ。水槽越しに揺れる光が空間に幻想的なリズムを加え、月と星を模したライトの輝きと相まって、異世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えさせた。細部まで計算され尽くしたテーマが、それぞれ調和していたのだった。

「お飲み物はいかがされますか?」

店主の穏やかな声が、冒険者の警戒心をさらに薄れさせた。冒険者は短く考えた後、低く簡潔に答えた。

「おすすめを。」

店主は微笑みを深め、手早くカウンターの向こうで作業を始めた。氷がグラスに落ちる涼しげな音や、シェイカーを振るリズムが耳に心地よく響く。
数分後、透明なグラスに注がれた琥珀色の液体が冒険者の前に差し出された。

「こちらは当店オリジナルのカクテルです。香り豊かな一杯になっています。」

冒険者はグラスを手に取り、琥珀色の液体を光に透かして眺めた。香りをそっと鼻に近づけると、柑橘系の爽やかさと、ほのかに漂うスパイスの温かみが混じり合い、期待感が胸に広がった。一口含むと、まず舌先に広がる甘み、そして徐々にやってくるほのかな苦味が、絶妙なバランスで調和していた。滑らかな舌触りと、喉を通る瞬間の心地よい温かさが体を包む。

その味わいに驚きながらも、彼の表情には微かな安堵が浮かんだ。この一杯が、彼にとって初めての店の緊張を完全に解きほぐしてくれたようだった。

「どうぞ、ごゆっくり。」

店主はそう言うと、一礼してカウンターの向こうへ戻った。その背中を見送りながら、冒険者は静かに息を吐いた。初めて訪れた店の空気は、思った以上に心地よいものだった。耳に聞こえる噴水の音や微かな笑い声も、今やすべてが遠い世界のもののように思えた。

冒険者は新たな安らぎを胸に、グラスを傾けた。Barルクスの静謐な空間は、彼に予期せぬ喜びを届けていたのだった。

店内の様子

店主さん
店内ハウジング
店内ハウジング
店内ハウジング
実際の様子

基本情報

冬の光と影で彩られた空間でお寛ぎ下さい
Barルクス
MeteorDC Unicorn ゴブレットビュート 4-60
不定期営業
#BARルクス

© SQUARE ENIX

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