BAR《八方塞がり》
イントロダクション
ゴブレットビュートの夜は静かで、どこか物思いにふけりたくなるような冷たい風が吹いている。ナナモ大風車、その中の一室に目立たぬように掲げられた小さな看板がある。「BAR<八方塞がり>」――何とも不思議な名前だ。冒険者はその扉の前に立ち、一瞬だけためらう。
しかし、微かに漏れる暖かなランプの光と、室内から漂う植物の香りが、
足を踏み入れるよう静かに誘った。
扉を開けた瞬間、冒険者は息を呑んだ。中に広がるのは、
外の夜とは一変した緑豊かな世界。壁には蔦が這い、天井から吊るされた
観葉植物がゆらゆらと揺れている。そこには、植物に囲まれたジャングルのような密度と、インダストリアルな無骨さが見事に調和していた。
鋼鉄のフレームやむき出しの配管が壁を彩り、都会的でありながら荒々しいデザインが、自然との融合を際立たせている。照明は暗めに抑えられ、
ランプの暖かな光が植物の影を壁に映し出していた。その影が揺れるたび、店内全体が生き物のように息づいているように感じられた。
カウンターの奥には、銀髪のミッドランダー族の店主が立っている。
整然とした動きでグラスを磨き、静かな表情で店内を見渡している彼の姿には、どこか物静かな威厳があった。その目は、まるで訪れる者たちの迷いや悩みを見透かすかのようでありながら、否定することなく受け入れているような優しさを感じさせた。背後の棚には、ずらりと並んだ酒瓶と、
ヴィンテージ感のあるバーカウンターの装飾が、洗練された雰囲気を漂わせている。
冒険者はカウンター席に腰を下ろす。
その背後には、蔦が垂れ下がる緑の壁が広がり、視界の端には観葉植物が
小さなテーブルを飾っていた。まるでジャングルの一角に腰を落ち着けたようなその空間は、外の世界から完全に切り離されているかのようだった。
グラスを手にした他の客たちが談笑しながら酒を楽しむ声が、穏やかな音楽とともに耳に心地よく響いている。
ふと目をやると、カウンターの端で、常連客らしい冒険者たちがグラスを
傾けながら、店主と話している。
会話の内容は聞き取れないが、真剣な表情を見せる人もいれば、どこかほっとしたような微笑みを浮かべる人もいる。この店では、誰もが何かを吐き出し、そして受け止められるような空気があるのだ。
店内の隅に目を向けると、観葉植物に囲まれた小さなテーブルでは、
一人で静かに本を読む女性がいた。隣のテーブルでは、二人組の冒険者が深い話に没頭している様子だ。その光景が青々とした植物とランプの揺らぎに包まれていることで、どこか映画のワンシーンのような静謐な美しさを感じさせていた。
冒険者が注文したグラスがカウンターに置かれる。
透き通る琥珀色の液体がランプの光に映え、柔らかな輝きを放つ。
その瞬間、店主が微かに笑みを浮かべて頷いた。その無言のやり取りには、この店でしか味わえない穏やかさと信頼感があった。
この店が「BAR<八方塞がり>」と名付けられている理由はわからない。
しかし、名前の通り、迷いや悩みを抱えた者たちが集まり、
それぞれのやり方で息を抜いているのが感じられる。
この店のジャングルのような緑と、無骨な都会の要素が組み合わさった空間は、外の世界から逃れてくる者たちのための隠れ家なのだろう。
冒険者がグラスを口に運ぶと、静かで柔らかな夜の時間がゆっくりと流れ出す。葉擦れの音、ランプの揺れる影、低く抑えられた会話の響き
――その全てが心を解きほぐし、この場所で過ごす時間を特別なものにしていた。
「BAR<八方塞がり>」は、名前とは裏腹に、迷いの中にいる者たちを
そっと迎え入れ、リラックスと小さな救いを与える場所。
このジャングルのような隠れ家では、悩みを抱えた人々がそれぞれのペースで自分を見つめ直し、また新たな一歩を踏み出す力を得ていくのだった。
店内の様子
基本情報
BAR<八方塞がり>
MeteorDC Shinryu ゴブレットビュート30区 ナナモ大風車35号室
不定期営業
#八方塞がりFF14
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