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ユグドラシルの樹(GaiaDC店)

イントロダクション

ラベンダーベッドの夜は、まるで静けさそのものが息をしているかのように穏やかだった。風が木々を揺らし、遠くで川のせせらぎが聞こえる。空は満天の星で埋め尽くされ、その光が水面に揺れている。

その自然の中、一人の冒険者が木造の扉の前に立っていた。
ユグドラシルの樹」。
名は知っていた。老舗の有名店――しかし、訪れるのは初めてだ。長い旅を終え、ふと聞いたその名に導かれるようにここまで来た。

「教えてくれていればな……」

冒険者の瞼に浮かんだのは、笑い声と焚き火の夜――。
今はもう戻らない日々に、誰かがこう言った気がする。
「あそこは、疲れた心に灯をともす場所だ」と。

重厚な扉に手をかけ、ゆっくりと押し開ける。

カラン――。
小さなベルの音が澄んだ余韻を残し、店内の温かな光が冒険者を迎え入れた。

店の中は、まるで「別世界」のようだった。
温かい木の香り、淡いステンドグラス越しの光、観葉植物が静かに息づく緑――賑わいの中にも、どこか穏やかな時間が流れている。

「いらっしゃいませ。」
カウンターの向こう、銀髪を整え、赤いレンズのサングラスを掛けたエレゼン族の店主が静かに一礼する。白いシャツと黒のベストが、彼の無駄のない所作とともに、店全体に漂う「歴史」を物語っていた。

冒険者は席を探して歩き出す。
その途中――。

店の隅では、無骨な手がグラスを傾ける音が微かに響く。
ロスガル族の一団が陽気に笑い声を上げ、肩を叩き合った拍子に、グラスの中の酒が揺れてテーブルに滴る。
「おいおい、零れてるぜ!」
隣の席に座るララフェルの男性が、眉をひそめてテーブルを小さな布で拭いている。その仕草がどこか滑稽で、ロスガル族たちはさらに笑い声を大きくした。

別のテーブルでは、ヒューランの女性が窓際に座り、熱心に本を読んでいる。時折、目を細めながらメモを取るその姿は、この空間の中で静かな「ひとつの物語」のようだ。

その合間――一人のミコッテが立ち上がり、ポケットから小銭を落とす。
「しまった!」
硬貨が床を転がり、冒険者の足元に止まった。屈んで拾い上げ、ミコッテに手渡すと、彼は少し照れ臭そうに頭を掻いて笑った。
「助かったよ。いや、酔い過ぎたかな。」

冒険者は空いている席に腰を下ろし、革張りの椅子が優しく沈む感触に安堵する。
店内の賑わいが耳に心地良く、これまでの旅の疲れが少しずつほぐれていく――そんな感覚がした。

「何になさいますか。」
静かな声に顔を上げると、店主が柔らかな笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
「……お任せで。」

店主が小さく頷き、棚から一本のボトルを取り出す。動きは一切の無駄がなく、まるで儀式のようだ。
グラスに注がれた琥珀色の液体が光を受け、ゆらゆらと揺れる。

「どうぞ。」
手渡されたグラスに口をつけると、甘く深い香りが鼻腔をくすぐり、舌の上で柔らかく転がる――ほのかな苦みと温もりが、喉を伝って身体の芯まで染み渡る。

「……旨い。」

その一言が零れた瞬間、店内が息を潜めた。
グラスを置く音、遠くの椅子が軋む音、誰かが小さく息を飲む音――。
一瞬だけ、時間が止まったかのように静まり返る。

だが次の瞬間、ロスガル族の笑い声が再び弾け、グラスが触れ合う音が響いた。賑わいが戻る――まるでこの店そのものが、生きているかのように。

店を出る頃には、夜の空気がひんやりと頬を撫でていた。扉が閉まると同時に、遠くでベルの音が風に揺れる。

ラベンダーベッドの夜は静かだが、その静けさの中に確かに温もりが残っている。風が木々を揺らし、遠くの川のせせらぎが耳に届く。微かなラベンダーの香りが漂い、空には星々が揺れ、水面に光が滲む――まるでこの地全体が眠りに就こうとしているかのようだ。

冒険者はふと立ち止まり、振り返る。
窓から零れる光は、まだそこに人々の笑い声と温かな時間が流れていることを伝えていた。

「――また来るだろうな。」

夜風がその言葉をさらい、遠くへと運んでいく。
足元では蛍が光を灯し、夜の帳に小さな命を輝かせていた。

店内の様子

店主さん
店内ハウジング
店内ハウジング
店内ハウジング
店内ハウジング
実際の様子

基本情報

ユグドラシルの樹 ガイアDC店
GaiaDC Durandal ラベンダーベッド9区 リリーヒルズ25号室
営業日:隔週火曜 23:00-24:00
#ユグドラシルの樹

© SQUARE ENIX

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