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スナックうるすら

イントロダクション

エンピレアム拡張区の一角、雪に覆われた街並みの中でひときわ異彩を放つ扉があった。金属の質感が際立つその扉には、「スナックうるすら」と小さく刻まれたプレートが取り付けられている。冒険者はその前で足を止めた。外の冷たさとは対照的に、扉の隙間から漏れるアンバー色の灯りが、どこか温かさと興味をそそる魅力を放っていた。

扉を開けると、ひんやりとした外気が一瞬だけ店内に流れ込み、すぐに蒸気と金属の香りに包まれる。中に足を踏み入れた冒険者がまず目にしたのは、まるで機械仕掛けの夢の中に迷い込んだかのような光景だった。至る所に張り巡らされた配管やバルブ、ギアが壁や天井に埋め込まれており、暗めの照明がそれらを淡く照らしている。メカニカルなディテールの中で静かに動く蒸気の演出が、空間に命を吹き込んでいるかのようだった。

「いらっしゃい!」
カウンターの向こうから親しげな声が響く。そこには、短い黒髪にタンクトップ姿の店主が片手を挙げ、軽やかに挨拶をしていた。その仕草と笑顔には、不思議と距離を感じさせない親しみやすさがあり、冒険者は自然とその場に馴染んでいく自分を感じた。

カウンターに腰を下ろすと、冷たい鉄製の椅子が体を受け止めた。目の前には棚に整然と並べられたボトルが見え、それぞれのラベルがアンバー色の照明を受けて輝いていた。近くの壁には圧力計や古びたバルブが装飾として取り付けられており、空間全体がまるで稼働中の古い工場の一部であるかのような没入感を生み出している。

店主が冒険者にカクテルメニューを手渡す。その間にも、背後の装置からは蒸気が立ち上り、ふわりとした霧が空間に動きを与えていた。冒険者はその雰囲気に呑まれながらも、特製ハイボールを注文した。

グラスが目の前に置かれると、琥珀色の液体に細かい気泡が立ち上り、ほんのりとしたスパイスの香りが漂ってきた。一口含むと、舌の上で弾ける爽やかな炭酸と、かすかに香るシナモンのような温かみのある余韻が広がる。その液体が喉を滑り降りると、蒸気が体内を満たしていくような心地よさがじんわりと広がった。

店内を見渡せば、他の客たちがそれぞれの時間を楽しんでいるのが目に入った。窓際では、一人のララフェル族がノートを開き、何かを書き込んでいる。その顔には集中の色が浮かび、時折グラスを傾ける手つきはリズムに乗っているかのようだ。奥のテーブルでは、数人の冒険者が楽しげに乾杯を交わしていた。蒸気の演出が彼らの間をふわりと流れ込み、笑い声とともに溶け込んでいく。

冒険者は再びグラスを口に運びながら、店内の奥に設置された小型の発電装置を目に留めた。その装置が微かに震え、青白い光を放つたび、まるでこの店全体が生き物のように息づいているかのように感じられる。このスチームパンクの世界観の中で、機械仕掛けの静寂と、人々の温かい活気が絶妙に融合していた。

「スナックうるすら」はただのバーではない。ここでは、蒸気機械のロマンと未来的な幻想が織り重なり、訪れる者たちを非日常へと誘う。店主の笑顔と、蒸気と金属が奏でるこの空間は、外の寒い夜を忘れさせる温かさと驚きを届けてくれる特別な場所だった。

冒険者はもう一口、特製ハイボールを口に含みながら、再び店内を眺めた。この場所は一度訪れれば、忘れることのできない体験を与えてくれる。それはこの夜もまた、新たな物語の始まりを予感させる瞬間だった。

店内の様子

店主さん
店員さん
店内ハウジング
店内ハウジング
実際の様子

基本情報

スナックうるすら
MeteorDC Belias エンピレアム 9-51
不定期営業
#スナックうるすら

© SQUARE ENIX

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