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PUB【髭と眼鏡】

イントロダクション

ゴブレットビュートの夜は、街灯に照らされた石畳と、微かに漂う霧が幻想的な雰囲気を作り出していた。冒険者はその夜、理由もなく足を運んでいた。心を揺さぶるものも、特別に満たされるものもない。
ただ、この街角に漏れる柔らかな光に引き寄せられたのだ。
「PUB 髭と眼鏡」――金属のプレートに刻まれた名前が、冒険者の足を止めさせる。

扉を押し開けた瞬間、外の冷たさとは対照的な温かみのある空気が迎え入れてくれる。磨き上げられた木のカウンター、ボトルの列、壁に並んだ本棚とそこに置かれた花瓶や観葉植物。細部まで丁寧に整えられたその空間には、ただ「居心地の良さ」が溢れていた。冒険者は促されるまま席に腰を下ろし、背中を椅子に預ける。その瞬間、肩の力がすっと抜けていくのを感じた。

店内には、さまざまな客が静かに過ごしていた。
窓際の一角では、一人の女性が本を開いている。そのページをめくる音が微かに聞こえるたびに、彼女が何か重要な事柄をじっくり考えているように見えた。その横に置かれたグラスには赤いワインが注がれており、光を受けて穏やかに輝いている。時折、彼女がグラスに手を伸ばし、ゆっくりと口に運ぶ仕草には品があり、ここがただのバーではないことを示しているようだった。

別の席では、常連らしき二人組の冒険者がカウンターを挟んで店主と会話を交わしていた。彼らの話し声は低く抑えられており、内容は断片的にしか聞こえない。しかし、その柔らかな表情や時折響く笑い声から、話題が気心知れた仲間同士の記憶に触れるものであることは明らかだった。店主は口数は少ないが、相槌を打つタイミングや短い言葉が絶妙で、二人が心地よく語り続けられる空間を作り出していた。

さらに奥のソファ席では、一人の男性がゆっくりとグラスを回していた。彼の視線は窓の外の霧の揺らぎに向けられ、何か遠い日の出来事を思い返しているように見えた。手元のグラスには琥珀色の液体が注がれ、その中に映り込む暖かな照明が、彼の表情を柔らかく照らしている。その姿にはどこか孤独が滲むが、ここにいる限り、その孤独は安らぎの中に溶け込んでいた。

冒険者がグラスを口に運ぶと、液体の滑らかさと深い香りが舌の上を広がり、喉を滑り降りるたびに体がじんわりと温まっていく。目を閉じると、木樽の香りとほのかなバニラの甘さ、微かに感じるスモーキーな余韻が心に広がる。それはただの飲み物ではなく、彼の心に静かで確かな癒しを届けるものであった。

店内の端のテーブル席には、仲睦まじい若い冒険者のカップルが座っていた。片方が身振り手振りで楽しそうに何かを話し、もう片方は微笑みながら頷いている。その間に置かれたグラスには、鮮やかなカクテルが彩りを添えていた。彼らの控えめな笑い声が、店内の穏やかな雰囲気に小さなアクセントを加えている。

窓越しに見える霧は、街灯の光を反射しながら微かに動きを見せている。
その光景に目を向けているうちに、冒険者はこの店に偶然足を踏み入れた理由を思い返していた。それは目的ではなく、必要だったのかもしれない。この温かな空間と、それを静かに支える店主の存在が、彼に何か忘れていた感覚を思い出させてくれたのだ。

「いかがです?」
店主が柔らかく声をかける。冒険者はグラスを掲げ、微笑みながら軽く頷いた。その一杯の余韻とともに、この店の穏やかな空気が体の隅々まで染み込んでいくのを感じていた。

PUB「髭と眼鏡」は、ただのパブではない。ここでは、人々がそれぞれの物語を静かに紡ぎ、共有することなくも自然と一体になれる空間がある。
暖かな灯りと静かな喧騒、揺れる霧と穏やかな会話が、この店の特別な夜を作り上げている。その灯りは外の寒さが深まる夜でも変わらずに輝き、訪れる者たちの心をそっと温めていた。

店内の様子

店主さん
店内ハウジング
店内ハウジング
実際の様子

基本情報

PUB【髭と眼鏡】ゼロムス鯖店
MeteorDC Zeromus ゴブレットビュート 14-19
不定期営業
#PUB髭と眼鏡

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