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スクラムマスターは「学び上手」を目指そう

 アジャイルとは学習活動のことだ、とするならば、スクラムマスターやアジャイルコーチは学びのための先導役ということになる。チームがより良く学んでいるか、学ぶための状況づくりができているか、に着目する「学習の番人」にあたる。

 とすると、学びのためのアクティビティ、プラクティスに関する引き出しを持っておく必要がある。いかにしてチームの学びを促すか、道具を揃えておくことだ。もちろん、それはただ「知っている」という状態のことではない。知っていて、使い方を分かっていて、すぐに道具を取り出し可能な状態にしていることだ。

 この、「取り出し可能状態(レディ)」であるか、そうではないかの差は大きい。チームがリアルタイムで直面する多様な状況に対して、適した道具をその場で提示できるかどうか。「こういうやり方があるから、ちょっと準備するんで、1週間後にやってみましょう」では遅い。舞台の上でスポットライトがあたる、その瞬間に最善の動きが取れなければならない。うまい具合の切り返しができるという単なる大喜利力以上に、実際に場を動かす力が期待される。

 学ぶための最良のタイミングはたいていの場合、1週間後の改まって、準備が整ったときではなく、「いますぐ、ここ」だ。学ぶための素材が今、目の前にあらわれ、学習の必要性が高まってきている、そのときこそ、最も動機づけされる。だから、キャンバスやフロー、マッピング、ワークショップの手がかりについて、いつでも取り出せるようにしておきたい。そのためにチームで試す前に自分自身で練習をしておく。

 学びのための備えができているということは、学習の習慣や仕組み化への意識が高く、「学ぶことをコントロールできている状態」だと言える。スクラムマスターがチームの学びを支える役割というならば、スクラムマスター自身が自分の学びを手の内にしているのは当然と言えるだろう。自分自身の学びも御せないのに、他人やチームの学びを後押しするというのでは辻褄があわない。何よりも、まず自分の学びについてふりかえり、むきなおり、自分なりの学びの仕組みや環境をつくっていこう。

 もちろん、学ぶということに完成形はなく、学び方自体を模索する旅は永遠のように続いていく。「学びのマスターになってから」では遅い。スクラムマスターは学びの過程をチームとともにする。ただ、スクラムマスターを担うのであれば、「学び上手」を目指そう


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