勝負は自分たち自身の「動力」を失わないこと ("組織アジャイルの円運動")
書籍で「組織の芯からアジャイルを宿す26の作戦」として、
という言葉をその一つに挙げた。「組織は戦略に従う」とは、アルフレッド・チャンドラーが残した超有名な言葉だ。ここでは、平常運転時の組織ではなく、昨今のような変化に迫られた時代における組織を前提においている。
これまでとは異なる方向性へと動き出すためには、相応の舵取りが必要だ。従来の延長線を辿っていくだけで、いつの間にか別のところへ到達する、ということはない。どこへどのように向かい、どこには足を踏み入れないのか。組織が動き出すための「戦略」が必要になる。
そして、そうした方針がどこから生まれるかというと、「意図(目的、狙い)」に依る。ゆえに、意図なき組織はどこかへ向かうという動機自体が存在せず、迷走を続けることになる。意図、つまり「芯」たるものを組織の中に見出す、あるいは作り出せるかが、組織アジャイルにおけるハイライトにあたる。
だから、もう一歩深めてみよう。意図はどこから生まれるのか?と。結論、意図は「組織」から生まれる。そこに居る人たち自身がどうありたいのか。どこからどこへと向かいたいのか、何を価値と置き、何を自分たちを表す言葉として用いるのか。そう、「自分たちは何者なのか」に何と答えたいのか。
もし、これからの組織の戦略や方針に、取ってつけた感を感じるならば、そこには意図が足りていないかもしれない。どうありたいかを表すストーリーが存在していないのかもしれない。では、ストーリーを語るのは誰か。自分たち自身にほかならない。
経営が語るストーリー、マネジメントが語るストーリー、現場が語るストーリー、それぞれがありえる。その整合を取るために、われわれはハンガーフライトを開き、1on1で補完し、むきあわせの場を意図的に作る。
そこでは、自分自身を語ることが出来ているか? に向き合いたい。これもできて当然のように思えて、意外と難しい。自分たち自身を語る言葉に「わくどき感」を感じないとしたら、まだ、自分たち自身のことがよく分かっていないかもしれない。
組織の中に「回転」を生み出そう(組織アジャイルの円運動)。注意したいのは、この回転をいきなり「大車輪」で始めようと思わないことだ。対象とする組織の範囲を目一杯広くとり、大回転させるには相応の時間と、無数の整合をあわせていく必要がある。まず、自分たちのチームから、そして、自分たちの部署で。
組織は良くも悪くも、歯車が噛み合って動いている。あなたの部署が回転し始めた時、別の部署や上のほうとぶつかっていくはずだ。最初は噛み合うことがなく、そこで生まれる摩擦は不協和音でしかないかもしれない。
だが、自分たちが回転を続ける限り、噛み合うためのチャンスを持ち続けることにもなる。つまり勝負は自分たち自身の「動力」を失わないこと。
何が自分たちにとっての「燃料」となるのか、その「燃料」は足りているのか。自分たち自身に向き合う定期メンテナンス(ふりかえり、むきなおり、かさねあわせ)が必要なのはこのためだ。
(本稿はシン・アジャイルAdvent Calendar 4日目として書いている)
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