CASE1.チャクラを練る男
婚活パーティーで知り合った男性(32)との初デートはドライブだった。
①車窓問題
海辺ドライブだから仕方がないものの、やけに開いた車窓からの風が強い。
隣を見ると、彼側の窓は閉まったままではないか。
私の目線に気づいた彼はわたしに問いかける。
Q.なぜ俺のほうの窓だけ閉めているかわかる?
A.俺の髪型が乱れるから。
わたしの髪は、荒ぶる海風でボッサボサなのであった。
ちなみに彼の髪型は、FINAL FA●TASYの某キャラクターを模したものであり、20歳を超えた私に理解できるセンスではなかった。
②都会問題
ドライブのBGMは、とあるアーティストのカバーアルバム。知っている曲ばかりで楽しくなってきた。
細い道を抜け、海が見えるその直前。「もうすぐ海だよ!俺、流したい曲があるんだ!」
♪テンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテンテン!テーン!
「あ〜あ〜〜!果てしない〜〜〜!(絶叫)」
ここは大都会じゃなくて大自然んんんんん!!!!
わたしは真顔で車窓を見つめた。
③ついに、練る時
「アニメとか漫画とか好き?」ありがちな話題で盛り上がり始める車内。
「俺、NARUT●が好きなんだよね」この言葉がすべての始まりだった。
わたしも好き!なんて言わなければ…。
赤信号で停止中、パッ…パッ…パッ…パッ…なにかのポーズを取る彼。
「なんだよー。わからないのかよー。基本の術だよ?」
練っている…彼はチャクラを練っているのだ………!固唾を飲んで見守る私。
「口寄せ!!!!」
なにも来なかった。彼への気持ちもどこかへ消えた。
彼とのデートは常にネタの宝庫で、上記以外にも5分に1回は小ネタがあった。
未だに彼を超える愉快男子には出会ったことがない。
どうしようもなく辛い時、一年に一回くらい一緒に飲みに行きたい男性だった。
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