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いちごパウダーの小袋をもつ年配の男性はきらいですか?
溶かして使うさまざまな形や色のチョコレート、トッピング用のスプレー、デコペン、ハートの形のアルミカップ、リボンやボックスなどのラッピング用品などなど・・・
1月の後半になるとスーパーの一角に登場するのが、バレンタインデーに向けた手作りチョコの材料コーナー。
バレンタインデーとは無縁の年齢になって久しいし、そもそも手作りチョコを作る立場でもないので、これまでは立ち寄るどころか一片の興味すらわかない人生を送ってきたのに、パン作りをし始めてからは見つけるたびに吸い寄せられるように足が向いてしまうようになった。
いや、もちろん想い人に贈るためのチョコパンを作ろうとしているわけではない。パン作りにも共通して使える材料がそこに売られていることがあるためだ。
ほとんどのスーパーには製菓材料コーナーがあるけれど、品揃えはそれほど豊富ではないので、ほしいものが手に入らないことも多い。沖縄には製菓・製パン材料の専門店は私が知る限り1店のみ。そうそう通えるわけでもないので、あの材料があれば作れたのに、と作るのを断念したパンも数知れず。
そういう苦しい状況のなかでは、年に1度のバレンタインデー前にあらわれるスーパーの手作りチョココーナーは、普段なかなか買えない材料を見つけることができるかもしれない、パン作り沼でおぼれるものにとっての救世主なのだ。
しかし、カラフルでキラキラした手作りチョココーナーを、およそチョコを作るとは思えない体の大きな年配の男性がうろついているのは、周囲の人からどう見えているんだろうな、とほんの一瞬気になったりはするけれど、こちらはそれどころではないので、陳列されている商品を嬉々として物色する。
さいわい私が訪れる時間は、仕事を終えて帰宅する途中の遅い時間なので誰もいないことがほとんど。変な男がいるからと遠巻きにして立ち寄るのをためらっている人がいることもないだろう。いないよね?
そんな至福の時間も今週いっぱい。次の週末を過ぎれば、手作りチョココーナーは、最初からそんなものはありませんでしたよと言わんばかりに消え去って日常の風景に戻ってしまう。
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今年ゲットしたのは、パン生地に練り込んだりして使ういちごパウダーとシークワーサーパウダー。こういう素材が、スーパーの製菓材料コーナーには意外に置かれてないのだ。
ただ、このいちごパウダー、パンに使うには分量が少なすぎることに今気づいてしまった。あと2、3袋はほしいところだけれど、まだ売っているだろうか。この週末のパン作りのために、また大きな図体をひきずって若さと愛でキラキラな手作りチョココーナーに突進するのだ。
世の女性たちよ。いちごパウダーの小さな袋を手にしてウロウロしている男を見かけても、けっして変態ではないので、ぜひ大きな心でみまもってほしい。もし機会があったら、私の作った手作りパンをプレゼントしよう。あ、いや、けっして愛の告白ではないので、その点も安心してほしい。