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闇市からのやり直し

あの頃。

大正バブルによって生じていた余剰人口を、国費を投じることでなんとかしようとした…それが当時は軍需産業。海軍工廠や三菱ドッグで戦艦を建造するだけじゃなく、兵隊さんの弁当箱を作るんだって「軍需産業」…というわけで、国家総動員法の前から、すでに一億が「軍需で喰う」状態にあり、外国から搾取してきた分を国内生産に上乗せして享受するという状態にあった、それが当時のこの国。

(余剰国民を「移民」として海外に追いやるという措置も取られていた)

しかし、軍需に頼った経済振興策は、当然ながら軍部の暴走を呼び込み、外国からの搾取は当事者国だけでなく、それ以外の国際社会からも非難轟々で、だから第二次世界大戦…そして、1945(昭和20)年の敗戦によって軍需と植民地を一気に失い、庶民にとっては貯め込んだ軍事国債も紙くずになり、都市部では、ほとんど仕事が無くなった(徴兵によって働き手を失った農村も疲弊)。

あの頃の苦境を「敗戦」と結びつけてばかり考えがちですが「国が戦争に負けた」からというより、直接的には「政府の財政難と、いっぺんに仕事がなくなってしまった」ことが、あの頃の、特に都市部での、うちのひいばあちゃんをして「死ぬかと思った」といわしめた苦境の原因。人々の仕事が失われれば、もちろん、彼らを消費者にとった小売業などもアウト。髪結いさんも、まずはお客さんが喰えている状況があったればこそ…そして、行政はシステム崩壊死。食糧の配給は滞る、もちろん福祉は機能しない…

さて

1980年代以降、この国の産業は「土建」な感じで、どんどんと「国費」あるいは「自治体の支出」に頼る感じになってきている。「軍需」に頼った戦前のこの国と同じように、地域経済だけでなく国家の経済だって公共事業と日銀の葉っぱのお金に支えられてる感じ。そして、その手法が破綻しそうだというのが今です。

お役所の膨大な借金に一端が現れていますが、それでも東京五輪を行った。あの頃、負け戦を前にさらに巨艦を建造していたのに似ている。横浜市みたいに一日に支払う利息だけで1億円という自治体もあるのに。

今度は連合国に負けるのではなく何に負けるのか。少子高齢化に疲弊する農村は、兵隊に男たちをとられたあの頃の農村に似ているけれど、それを「AIに拠る無人化」によって切り抜けるとして、それで助かるのは経営者だけ。マニュアル・レーバーな仕事が増えるわけではない。
高度成長期、各人にもたらされた余力も、たいていが「貯金」。だから、どかっとインフレが来ればひとたまりもありません。

そういうわけで

僕は、近く、多くの人の貯金がすってんてんで、巷から仕事が消える日が来るのだろうと思っている。だって「あの頃」に状況が似ているから。

たいていの地域経済な地元企業はバブル崩壊以降、お役所からの発注にべったりで、故に競争力もないから、借金だらけのまま税収を減らし、高齢者の扶養負担を強いられる地方自治体が、彼らを支えきれなくなったら一巻の終わり。大きな企業だって、収益率がいい企業ほど極端なまでの少数精鋭。就業の場の提供に積極的ではありません。居酒屋チェーンやマンション・デベロッパーは、巷から「就業」が消えれば「死ねばもろとも」でしょう。

あゝ。

やっぱり「闇市からのやり直し」かな…と。