ショッピング・モールには生活がない
ショッピング・モールには「生活の場」がない。「売る」に特化しているから。そういうわけでショッピング・モールは夜になるとゴースト・タウン。
かつての商店街(繁華街にでさえ)には店主家族の生活があったけど(僕が子どもの頃にはヨコハマの元町にも銭湯があった)、ショッピング・モールに「店主」が暮らしているわけもなく(店主さえ不在で)スタッフのみなさんは、それぞれの自宅に引き上げていく。マンションが一体になった建物でもショッピング・モールには「暮らし」というものがない。
ショッピングだけでなくビジネスに特化した街も、夜はゴースト・タウン。街路も厳しく管理されていることが多く、屋台を出すこともできないから、夜ともなれば人の温もりを感じることはかなり難しくなる。ホームレスな方が仮眠をとっていたとしても、警備員さんに追い出されてしまう。ショッピング・モールやビジネス街が都市を席巻していけば、それだけ街の夜は、もの淋しいものになっていく。自明の理。
「人が暮らしている」はずのタワマン群も寂寞とした空間。その寂寞さが人の命を飲み込んでいくよう。みなセキュリティを重視した密閉箱のような住宅に暮らす核家族ばかりだから。
在来の交通機関の利便が悪く、なかなか地区外に出にくい街には、東京の都心でも旧くからの商店街が残っていたりする。縁側のある住宅も散見できる。マンションにも高さ制限があって、比較的、低層。もちろん「通勤」には不便だけれど、でも空は広くて、近所づきあいができる。
つまり、無いわけではない…いや、実際に、かつてのような街は、まだ「ある」。そういうところが残された楽園かな。
そんな街から、今度の「次の時代」を始められたらいい、と。