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街場文化のクオリティ
わが国のロウ・カルチャー、つまり街場の文化のクォリティの高さは世界屈指。折り紙つき。マイセンの焼き物は、当時、ヨーロッパ市場で不足した「柿右衛門」のコピーから発達したもの。印象派の画家たちが神を描くことを卒業し、いよいよ「街場の美」を発見しようとしはじめた、その契機になったのが「日本の浮世絵」。北斎や広重、歌麿たちが「江戸の日常」に美を見いだした、その姿勢にインスパイヤーされたもの。ゴッホなどは大の日本好きを自認していた。
大正も終わりの頃、柳宗悦は、日本各地の焼き物、染織り、木や竹の細工物に、ハイカルチャー(ファインアート)でなくとも、それと同等の美がありさらに日常生活に活かせる作品(「用の美」)だとして、それらを再評価しようとする民芸運動を立ち上げた。明治以降、日本政府は徳川を否定するためにも「欧化」一辺倒で、しかもハイカルチャーの移入にご執心だったから。でも、かんじんの本家=ヨーロッパは、すでに江戸時代も後期頃には色濃く日本のロウ・カルチャーに刺激を受け、文化の変質をはじめていた。
印象派の画家たちが活躍し始めてから200年くらいだろうか。
ようやくハイ・カルチャーとロウ・カルチャーの境はあいまいになりつつあり、アジアのを「アジアだから」と下に見る風潮もなくなってきた。文化は闘争ではないので「革命」のような判りやすいメルクマールはないけれど、述べてきたような導引があって、状況は確実に変わりつつあるのだろう。
政治や経済の面ではいざ知らず、街場の文化の面では日本は旗手。美術品や工芸品だけでなく、ワインやチーズ、パテシエさんやブランジェさんの仕事、つまり「食」の分野まで、世界のどこにも追随を許さないクオリティを持っている。
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なぜって、17世紀以降、こんなに平和で都市が豊かだった国が他にないから…追いつこうと思っても追いつけない。つまり、この分野に飛び込むだけで、僕らは400年分の資産を手にできるということ。
そのことも忘れたくないこと。
僕らにとってグローバル化に勝ち残っていけるものは「日本文化」。特に街場の文化。恐る恐るお作法を気にしながら、おびえた眼差しで外国語を眺めるより、足許を見つめ直してみること。
自信を持てば、存外、上手く行っちゃうと。