【完全版】乳がんを知りぬく - 早期発見から最新治療まで徹底解説
はじめに
皆さんこんにちは。今日は日本人女性の9人に1人が生涯で経験するとされる「乳がん」について、詳しくお伝えしていきます。この記事では京都大学医学部附属病院乳腺外科の専門医の知見をもとに、乳がんの基礎知識から検診方法、最新の治療法まで、包括的に解説していきます。
乳がんは早期発見・早期治療が非常に重要な疾患です。この記事を読むことで、自分自身や大切な人の命を守るための知識を得ることができるでしょう。特に30代以降の女性の方には、ぜひ最後までお読みいただきたいと思います。
目次
乳がんとは?基礎知識を身につける
乳がんの疫学 - 日本における現状
乳がんのリスク因子と予防
セルフチェックの重要性と方法
乳がん検診 - 種類と受け方
乳がんの診断プロセス
乳がんの進行度とステージ分類
乳がんの手術療法詳細
乳房再建術について
リンパ節手術の種類と意義
放射線療法の基礎知識
薬物療法の種類と選択基準
乳がんのサブタイプ別治療戦略
治療後のフォローアップと生活
乳がんと共に生きる - 心のケア
乳がん患者の体験談
最新の研究と治療法の展望
乳がん情報の入手先と相談窓口
まとめ - 乳がんと向き合うために
1. 乳がんとは?基礎知識を身につける
乳がんは、乳腺組織にできる悪性腫瘍です。乳腺は女性ホルモンの影響を受けて発達し、妊娠・出産後には母乳を産生する重要な組織です。では、乳腺のどの部分からがんが発生するのでしょうか?
乳がんの発生部位
乳がんの約90%は「乳管」と呼ばれる、母乳を運ぶ管から発生します。これを「乳管がん」と呼びます。残りの約10%は、母乳を作る「小葉」という部分から発生する「小葉がん」です。
乳管がんは最初、乳管の内側に限局しています。この段階を「非浸潤がん」または「乳管内がん」と呼びます。しかし、がん細胞が乳管の壁を破って周囲の組織に広がると、「浸潤がん」となります。浸潤がんになると、がん細胞がリンパ管や血管に入り込み、腋窩リンパ節や他の臓器に転移する可能性が高まります。
乳房の解剖学的構造を理解することは、乳がんの理解において非常に重要です。乳房は主に以下の構造からなっています:
乳腺組織:15〜20の乳腺葉から構成され、それぞれが乳頭に向かって集まる乳管を持っています
脂肪組織:乳腺組織を取り囲み、乳房の大きさや形を決定します
リンパ管:乳房内に張り巡らされ、主に腋窩(わきの下)のリンパ節に流れ込みます
血管:乳房組織に栄養を供給します
乳がんの進行は、一般的に以下のように考えられています:
乳管上皮細胞または小葉上皮細胞に遺伝子変異が蓄積
非浸潤がん(乳管内または小葉内に限局)の形成
浸潤がんへの進展(周囲組織への浸潤)
リンパ節転移
遠隔転移(骨、肺、肝臓、脳など)
乳がんの進行速度は、がんの性質によって大きく異なります。ゆっくりと成長するものもあれば、急速に進行するものもあります。これは後述する「サブタイプ」によって異なることが分かっています。
2. 乳がんの疫学 - 日本における現状
日本では、乳がんは女性のがんの中で最も発生率が高く、年々増加傾向にあります。日本人女性の約9〜10人に1人が生涯で乳がんを発症すると言われています。これは非常に高い数字であり、多くの方にとって他人事ではない病気であることを意味しています。
乳がんの発症年齢
日本での乳がんの発症は、30歳頃から増加し始め、40代後半から60代後半にかけてピークを迎えます。これは欧米諸国と比較して特徴的で、欧米では60代以降の発症が多いのに対し、日本では比較的若い年齢で発症する傾向があります。そのため、日本では40歳からの乳がん検診が推奨されていますが、30代からの自己検診の習慣化も重要です。
乳がんによる死亡率
2020年には14,650人の女性が乳がんで亡くなっており、これは女性のがん死亡原因の第5位です。1位の大腸がん、2位の肺がん、3位の膵臓がん、4位の胃がんに次いで多い死亡原因となっています。
しかし、乳がんは早期発見・早期治療により、治癒の可能性が高いがんでもあります。5年生存率でみると、ステージ1で発見された場合は約95%以上、ステージ2でも約90%と非常に高い生存率を示しています。このことからも、定期的な検診の重要性がお分かりいただけるでしょう。
乳がん罹患者数の推移
日本におけるがん新規患者数は年間約100万人で、このうち乳がん患者は約9万人を占めています。1975年には乳がんの罹患率(人口10万人あたりの新規患者数)は約20人でしたが、2020年には約90人と4倍以上に増加しています。
この増加の背景には、以下のような要因が考えられます:
食生活の欧米化(高脂肪食の増加)
出産年齢の高齢化と出産回数の減少
初潮年齢の若年化と閉経年齢の高齢化
肥満の増加
検診技術の向上による発見率の上昇
特に、女性ホルモンの影響を長期間受ける状況(初潮が早く、閉経が遅い、出産経験が少ないなど)が、乳がんのリスクを高めることが分かっています。
3. 乳がんのリスク因子と予防
乳がんの発症には様々なリスク因子が関わっています。これらのリスク因子を知ることで、自分自身のリスクを理解し、適切な予防策を講じることができます。
主なリスク因子
年齢:年齢が上がるにつれてリスクは高まります。特に40代以降は注意が必要です。
家族歴・遺伝:血縁者(特に一親等:母、姉妹、娘)に乳がん患者がいる場合、リスクは約2倍になります。また、BRCA1やBRCA2と呼ばれる遺伝子の変異がある場合、生涯で乳がんを発症するリスクは50〜80%にまで高まります。
ホルモン関連因子:
初潮年齢が早い(12歳未満)
閉経年齢が遅い(55歳以上)
出産経験がない、または初産年齢が30歳以上
母乳育児の経験がない
生活習慣関連因子:
喫煙:タバコに含まれる発がん物質は乳がんのリスクを高めます。
飲酒:アルコール摂取量が多いほどリスクが高まります。特に1日あたり純アルコール10g(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)以上の摂取は注意が必要です。
肥満:特に閉経後の肥満は、脂肪細胞でのエストロゲン産生が増加するため、乳がんのリスクを高めます。
運動不足:定期的な運動習慣がない場合、リスクが高まります。
ホルモン補充療法:閉経後のホルモン補充療法、特にエストロゲンとプロゲステロンの併用療法を長期間(5年以上)行うと、乳がんのリスクが高まることが分かっています。
放射線曝露:若年期(特に10代)に胸部への放射線治療を受けた場合、リスクが高まります。
予防のための生活習慣
リスク因子をすべて取り除くことは難しいですが、生活習慣の改善により、乳がんのリスクを下げることができます。
適正体重の維持:BMI 18.5〜25 を目標に、バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。特に閉経後の体重増加には注意が必要です。
定期的な運動:週に150分以上の中等度の有酸素運動(速歩、ジョギング、水泳など)を行うことで、リスクを15〜20%低減できるという報告があります。
アルコール摂取の制限:飲酒する場合は、週に数日の休肝日を設け、1日の摂取量を純アルコール10g未満に抑えることが望ましいでしょう。
禁煙:喫煙は乳がんを含む多くのがんのリスクを高めます。禁煙することで、徐々にリスクは低下していきます。
バランスの良い食事:
野菜や果物を豊富に摂取する
赤身肉や加工肉の摂取を控える
全粒穀物や豆類を積極的に取り入れる
トランス脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取を控える
母乳育児:可能であれば、母乳育児を1年以上続けることで、乳がんのリスクが低下するという報告があります。
これらの生活習慣の改善は、乳がんだけでなく、他の生活習慣病の予防にも効果的です。ただし、これらの予防策を実践していても、乳がんのリスクをゼロにすることはできません。そのため、定期的な検診とセルフチェックを併せて行うことが重要です。
4. セルフチェックの重要性と方法
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