普遍的健康保障(UHC)と健康経済学:過去、現在、そして未来への洞察


こんにちは、皆さん。今回は、京都大学で行われたアン・ミルズ教授による「普遍的健康保障と健康経済学」に関する講演の内容をまとめてお伝えします。この講演は、健康経済学の発展と普遍的健康保障(UHC)の実現に向けた取り組みについて、深い洞察を提供しています。

ミルズ教授は、健康経済学の第一人者として知られており、特に低中所得国における保健システムの経済分析に関して豊富な経験を持っています。今回の講演では、自身のキャリアを振り返りながら、健康経済学がどのように政策立案に貢献してきたか、そして今後の課題は何かについて語っています。

この記事では、ミルズ教授の講演内容を基に、健康経済学の歴史、主要な研究テーマ、そしてUHCの実現に向けた経済学的アプローチについて詳しく見ていきましょう。

  1. 健康経済学の起源と発展

ミルズ教授は、まず健康経済学の起源について触れています。興味深いことに、健康経済学の起源は17世紀にまで遡ることができるのです。

1.1 サー・ウィリアム・ペティの貢献

健康経済学者たちは、サー・ウィリアム・ペティ(1623-1687)を自分たちの学問の創始者の一人として挙げることがあります。ペティは、健康問題に定量的思考を適用した先駆者でした。彼の考えは、現代の健康経済学でも重要な以下のようなテーマを含んでいました:

  1. 人間の生命の価値を生産への貢献度で数値化(現代の人的資本アプローチに通じる)

  2. ペストの流行時にロンドンから人々を避難させることの費用便益分析

  3. 公的部門と民間部門の相対的役割についての考察

  4. 医療へのアクセスの平等性(UHCの初期の表現とも言える)

  5. 給与制の国営医療サービスの提唱

これらのテーマは、数世紀を経た今でも健康経済学の中心的な課題であり続けています。ペティの先見性には驚かされますね。

1.2 現代健康経済学の誕生

ここから先は

15,273字

¥ 500

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?