見出し画像

ひきこもり

 今の時代、家族にひきこもりの方がいて悩んでいる方は多いと思います。その理由は人それぞれですが、特に学校が苦手で不登校になる子どもたちは、集団生活に適応できない場合が多いように感じます。ひきこもりを経験していない方からすると理解しづらいかもしれませんが、毎日嫌な場所に行くことを強いられるというのは、本人にとって相当なストレスなのです。

 私自身、幼稚園に通うことができず、ほとんどの時間を廊下で過ごしていました。教室に入れず、休み時間になると子どもたちが一斉に教室から出てくるのが怖くて、園舎の裏に隠れることが日課でした。そこでコケを棒でつついて時間が過ぎるのを待っていました。陽も当たらないその場所が、私にとっては唯一の逃げ場だったのです。その後も、小学校、中学校、高校と環境が変わっても、自分が周りに馴染むことはありませんでした。

 高校生のとき、不良が多い学校に進学したことで状況はさらに悪化し、いじめや恐喝を受けるようになりました。それでも母は「学校には行け」と言い続け、私がどれだけ怖い思いをしているかには目を向けてもらえませんでした。最終的には母のヒステリー混じりの涙の説得を振り切り、私は不登校になりました。大人になった今では、母が私の感情を理解できなかったのは、彼女自身が同じ経験をしていなかったからだと受け止められるようになりましたが、当時はただ絶望的な気持ちでいっぱいでした。

 本題ですが、もし家族がひきこもりになったら、まずその人が経験してきた苦しみを認めてあげてほしいと思います。ひきこもりの背景には、必ず「逃げざるを得なかった何か」があります。それを甘えや怠けと一括りにせず、少しでも理解する努力をしてみてください。

 「学校に行けなければ社会でやっていけない」と考えるかもしれませんが、実際には社会に適応するスキルはさまざまです。集団での協調が難しいなら、一人でできるスキルを磨かせる道をサポートしてみるのも一つの手です。たとえば、デザインやプログラミング、イラストなどは、フリーランスとして働ける可能性があります。私自身、長年デザインの仕事をしてきましたが、集団生活に馴染めない性格が大きな壁になることも多々ありました。それでもスキルがあれば、会社勤めではなく自分のペースで働く選択肢が生まれます。

 もちろん、ひきこもりの家族を持つ方も多くのストレスを抱えていることでしょう。「自分も我慢しているのに」と思うこともあるかもしれません。しかし、それを本人に直接ぶつけるのは逆効果です。当人は家族の感情を敏感に察知し、ますます心を閉ざしてしまう可能性があるからです。

 私の家庭は片親で経済的にも厳しく、引きこもり続けることは難しい状況でした。母からは厳しい言葉を投げられることが多かったですが、唯一、親戚のおばが「いつかきっと外に出てこれるから」と泣きながら私の手を握ってくれたことを今でも覚えています。その温もりだけが、私の救いでした。

 心を変えるには時間がかかります。焦らず、無理に解決しようとせず、少しずつでも理解を深めていく姿勢を持つことが大切だと思います。そして、どうしても理解できない部分があるなら、下手に言葉をかけない方が良い場合もあります。言葉は心と密接に繋がっているからです。

 皆が皆同じではありませんが、ひきこもりを抱える家族への一つの視点として参考になれば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!