本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年4月20日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
米国のウクライナ支援予算、同国下院通過の影響
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
米国下院は4月20日、ウクライナに約600億ドルの支援を供与する補正予算案を可決した。実際に支援が流れていくためには、まずはこの予算案を上院が可決し、大統領がこれを承認しなければならない。これらの必要とされる手続きと、米国の物資がウクライナの前線まで届くまでの物流を考えると、新たな米国の支援が前線の状況に影響を及ぼし始めるのに、今後数週間はかかる可能性が高い。それゆえ、この期間、前線の状況が引き続き悪化していく可能性は高い。ロシア軍が米国支援が届くまでの短い期間につけ込もうとして、攻勢を強める場合、なおさらそれがいえる。前線の安定化をウクライナに可能にする米国の安全保障支援を待つ間の数週間、ウクライナ軍はさらなる後退に見舞われる可能性がある。しかし、再開される米国の支援が迅速に届くことを前提にすれば、ウクライナ軍が現在のロシア軍攻勢を鈍らせることができるようになる可能性は高い。(. . .)
今後数週間、ロシア軍が現在遂行中の攻勢作戦及びミサイル・ドローン攻撃を強化していく可能性は高い。その目的は、ウクライナ側の物資面での制約が続く期間が短くなるなか、その短い機会を活用することにある。(. . .)
米国による安全保障支援の前線への到着遅延にもかかわらず、ウクライナの作戦面での立場は2024年6月までに大幅に改善されることになる可能性が高い。そして、ロシア軍統帥部は6月に発動されるとみなされている大規模攻勢作戦の大きな内容変更を、検討することになると思われる。だが、ロシア軍統帥部がそれでも予定通りに攻勢を行う可能性は存在する。(. . .)
ウクライナへの米国の安全保障支援が再開される可能性が高まったことは、ウクライナにおける戦争の極めて重要なターニングポイントになる。だが、依然としてクレムリン・西側・ウクライナはさらなる決断をしなければならず、これらの決断が戦争の性質と結果を左右することになるだろう。(. . .)