【和訳】英国国防省 ウクライナ情報 2024.12.30
日本語訳
2024年11月末にロシアはある法案を可決したが、これは、2024年12月1日以降に軍務契約を結んだ軍人の借金を返済免除にするという内容である。この返済免除は1,000万ルーブル(約94,400米ドル)までの借金が対象になっており、配偶者も返済免除の対象になるとのことだ。この措置は、ロシア軍人のための借金返済猶予制度に加わるものだ。ロシアの独立系メディア「メディアゾナ」の報道によると、住宅ローンと個人債務の返済猶予件数は、2022年10月以降で411,000件に達しているということだ。
ロシアが付与している、新規入隊兵士向け経済的インセンティブの意図が、着実に増加している死傷者を十分に埋め合わせられるだけの兵力を確保することにあるのはほぼ確実だ。ロシア側死傷者数に関して述べると、現在、死者と負傷者の合計が76万人を超えるに至っており、2024年11月は一日あたり平均で1,523人の死傷者が生じていた。この経済的インセンティブの目的はまた、ロシアが追加動員を実施する必要性に迫られる可能性を小さくすることにもある。ロシア指導部は追加動員を、戦争支持の世論を損なうものとみなしており、また、ロシアにとって不利益な、さらなる大規模国外脱出が起きるリスクを高めるものともみなしている。
債務の返済免除が、2025年にかけて、ロシアの銀行の財務面に関する負担を増すことになる可能性は極めて高い。そして、もうすでに高金利と制裁措置という負担がロシアの銀行にはのしかかっている。返済免除措置が、起こるかもしれない経済危機に対応する体力と能力を、銀行部門から奪っていくことになるのは、ほぼ確実である。