【SNS英文投稿和訳】クルスク州におけるウクライナ軍の新たな攻勢(エミール・カステヘルミ氏)
フィンランドの軍事史家であり、OSINTアナリストでもあるエミール・カステヘルミ氏が、日本時間の2025年1月5日午後9時台に、XとBlueskyの双方のプラットフォーム上で、クルスク州におけるウクライナ軍の新たな攻勢に関する見解を発表しています。
以下に続く文章は、カステヘルミ氏のこの投稿を日本語に翻訳したものです。なお、翻訳記事中で使用した画像は、カステヘルミ氏のSNS投稿に添付されているものの転載になります。
日本語訳
ウクライナ軍はクルスク州での攻撃を続けており、装甲車両の隊列はボリショエ・ソルダーツコエ[Bolshoye Soldatskoye]の方向に進んでいる。また、伝えられた話によると、戦闘がほかの村々で続いているとのことだ。
ただし、これらの動きが極めて大きな結果をもたらすことができる可能性は低いものと私はみている。
ウクライナ軍は自軍よりもずっと強大な敵と相対している。奇襲効果によって、ウクライナ軍が何らかの戦術的成功をあげることは想定できる。最良のシナリオにおいては、ウクライナ軍はいくつかの村落に突入できるかもしれない。だが、全体として、今後の情勢全般は変わらないままである可能性が高い。
2024年8~9月にウクライナ軍がクルスク州で支配していた最大支配地域の半分以上の土地を、同軍は失失っている。仮に今回新たに始まった攻撃が10kmの進撃をもたらしたとしても、戦闘が起こることになるのは、ここ数カ月間、戦われてきたのとおおむね同じ地域であることに変わりはない。
作戦レベルで戦況を新たに大きく変えるに足るほどの強力な戦力を集結させることは、かなり困難である。ウクライナ軍がグルシュコヴォ[Glushkovo]方向へと重点をシフトさせたとしても、それは以前すでに失敗した試みと変わらないだろう。
なお、ウクライナ軍がボリショエ・ソルダーツコエに進出できた場合を考えてみても、ウクライナ軍は自軍支配下の突出部の一番角側で戦果をあげるだけであり、それは両側面間の幅を広げることのないままで戦線を引き伸ばす結果に終わるだろう。そして、この攻撃が行われている地点で、直近の数カ月間、ロシア軍は徐々にウクライナ軍を押し戻していたのだ。
クルスク州での攻勢は、現在、ドネツィク州内の諸拠点が継続的に失われ、前線が恐るべきレベルでドニプロペトロウシク州へと接近しつつあるという情勢のなかで続いているものなのだ。クルスク州にさらに多くの将兵を投じることの代価が、ウクライナ領の喪失につながることはありうる。
総合的にみて、ここ最近、クルスクにも好ましい側面は存在している。領土を失ってはいるが、ウクライナ軍はクルスク州内に何とか立てこもることができており、戦闘の一部をロシア領内に持ち込めている。クルスクはまた、ロシア側の政治的問題として、さらに大きな問題になっている模様だ。
ここでの戦闘は本質的にウクライナ側戦力を拘束する結果になっている。一方で、ロシアもまたVDV[空挺軍]のような質の高い部隊をこの地域に送り込んでいる。この冬、ロシア軍が大きな損失を被った代わりに得たのは、比較的わずかな進撃だけだった。ウクライナ軍が今回の攻勢を続けたいと考えている可能性は高い。それは直近の進展から判断することができる。
以下の2枚の地図は、ロシア側からみた状況を示している。さまざまなロシア側チャンネルからの情報によると、ウクライナ軍は初期段階における何らかの成功を達成したが、大きな変化はまだ何も起きていないということだ。
私たち「ブラック・バード・グループ」はロシア・ウクライナ双方の領内における進捗を、引き続きモニターしていきます。以下から私たち制作のインタラクティブ地図にアクセスできます。