本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年1月30日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ロシア軍の動向に関するウクライナ軍情報部の評価
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
予期されていたロシア軍の2024年冬季・春季攻勢は、ハルキウ・ルハンシク州境地域で現在進行中である。ウクライナ軍国防省情報総局(GUR)の局長であるキリロ・ブダーノウ中将は1月30日に、ウクライナにおいてロシア軍攻勢が現在、進められており、ロシア軍の目標は、ジェレベツ川までの到達と、ドネツィク州とルハンシク州の州境までの到達にあると指摘した。だが、ブダーノウの予想では、ロシア軍はこれらの目標を達成できないだろうとのことで、ロシア軍は春の初めの頃までに「完全に消耗してしまう」ことになる可能性が高いと、ブダーノウは述べた。ブダーノウの発言は、2024年1月に入って以降、この作戦軸での攻勢作戦をロシア軍が強化しているというISWの見解と一致している。ロシア軍は最近、クプヤンシクから南東の方向に位置する、クプヤンシクとスヴァトヴェを結ぶ極めて重要なP07道路のクロフマリネ付近の区画沿いで戦術的な戦果をあげており、また、クロフマリネから西と北西の方向で、オスキル川に向かう攻撃を増している模様だ。クプヤンシク方面において、ロシア軍が今後、さらに戦術レベルの戦果をあげる可能性は高いが、このような戦術的成功を、作戦的な意味をもつ大進撃に必要な、機械化部隊による広範な機動作戦へと進展させられるようになる可能性は低い。なお、このような大進撃がなければ、ロシア軍がハルキウ州でさらに多くの領土を占領し、ルハンシク・ドネツィク両州の州境へと戦線を押し上げていくことはできないだろう。ISWの戦場観察によると、西部軍管区に属する第1親衛戦車軍と第6諸兵科連合軍の各隷下部隊がクプヤンシク地区での行動を活発化させており、歩兵主体の正面突撃攻撃の継続ができているとのことだ。だが、これら部隊は、1年前にこの作戦軸に投入されて以降、機械化部隊による大規模な機動作戦を遂行する能力を示していない。クプヤンシク〜リマン作戦軸の情勢に関する、より詳細な作戦分析を、ISWは近々に公開する予定でいる。
参考
キリロ・ブダーノウGUR局長へのインタビュー記事 ⤵️
戦争研究所(ISW) ウクライナ戦況インタラクティブ地図 ⤵️