【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1520 ET 13.08.2023 “ウクライナ軍攻勢:ウロジャイネへの攻撃とその波紋”
8月13日、ウクライナ軍は戦線上の少なくとも2箇所で反攻作戦を行った。また、ドネツィク州西部〜ザポリージャ州東部地域とザポリージャ州西部において、前進できたと伝えられている。ウクライナ軍参謀本部の報道によると、ウクライナ軍はベルジャンシク方向(ドネツィク州西部〜ザポリージャ州東部地域)とメリトポリ方向(ザポリージャ州西部)で攻勢作戦を実施し、ロボチネ(ザポリージャ州西部、オリヒウ南方13km)付近で部分的な成功をおさめたとのことだ。8月12日、複数のロシア側情報筋は、ロシア軍がウロジャイネ(ドネツィク・ザポリージャ州境地域)から撤退したと主張したが、ロシア側情報筋の多くは8月13日、この主張に反駁し、そうではないという主張をした。その反駁した主張とは、ロシア軍はまだウロジャイネ南部地区を占拠しており、戦闘は継続中で、ウロジャイネ地区は両軍が相争う状況だというものだ。ロシア軍がウロジャイネから完全に撤退したことを裏付ける情報をISWは確認しておらず、ロシア軍は現在、少なくともこの集落の南部地区の陣地を保持している可能性が高い。
ロシアの情報空間は、(ドネツィク・ザポリージャ州境地域の)ウロジャイネにおけるウクライナの戦果達成という話題に飛びついて、ロシア軍の士気の低さとこの地域での指揮上の課題を浮き彫りにしている。8月12日、ロシア軍事ブロガーの一人は、ロシア軍第37独立親衛自動車化狙撃旅団(東部軍管区第36諸兵科連合軍隷下)がウロジャイネの歩兵を援護するために戦車部隊を差し向けられなかったことと、この旅団が8月10日に早々と撤退したことに不満の意を表した。なお、この旅団は増援を欠いていたと主張するが、そのとき実際には、この部隊の兵員は後方地域で飲んだくれていたという。この軍事ブロガーは、第36諸兵科連合軍全体にこの集落を防衛する気がなく、ドネツィク人民共和国(DNR)の「カスカド」作戦戦術戦闘部隊と第40海軍歩兵旅団(太平洋艦隊隷下)がウロジャイネの防衛にあたっていると文句を述べた。この不平不満はロシア情報空間内で様々な反応を生んだ。それには、関わりを示されたロシア部隊間の緊張緩和の試みや、第37旅団と第36軍への不平不満のさらなる煽りたてといったものがあり、また、第36軍の評判を貶めて、他の防衛部隊の名声を高めようとしたという、ウロジャイネからのロシア軍の撤退を最初に報じた軍事ブロガーへの非難というものもある。軍事ブロガーの一人は、現在の前線状況を、2023年7月上旬に第58諸兵科連合軍司令官の地位からイワン・ポポフ少将をロシア軍統帥部が解任したことに結びつけて非難した。これら軍事ブロガーが不平不満の対象にしているのが、部隊自体や戦域司令官ではなく、上述の部隊の将兵であることが目立つ。このことが示しているのは、ポポフの解任と噂された他の司令官クラスの追放が、容易にそう仕立て上げることができる、ロシア軍過失のスケープゴートとしての中級クラスのロシア軍司令官を、取り除くことになった可能性である。ウロジャイネ付近を防衛している「ヴォストーク」大隊指揮官アレクサンドル・ホダコフスキーは、ロシア空挺軍(VDV)司令官ミハイル・テプリンスキー大将がロシアは守っていては勝てないと語ったことを引き合いに出した。また、ホダコフスキーは、ロシアはこの戦争の早過ぎる時点でリソースを使い果たし、現状、新たな作戦のリソースを集積するために一時中断する必要があると訴えた。この見解は、この地域におけるロシア軍の弾力的な防衛に限界があるという認識を示すものだ。なお、テプリンスキーはヴェリカ・ノヴォシルカ地域のロシア軍防衛計画策定を担っているとされている。