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【SNS英文投稿和訳】エミール・カステヘルミ氏:ウクライナ戦況 “2024年秋季(9~11月)情勢概要”

日本時間2024年12月2日午前1時台になされた上記リンクから始まるSNS(XとBluesky)での連続投稿は、ウクライナの戦況分析に関する内容の投稿です。

投稿者のエミール・カステヘルミ氏はフィンランドの軍事史家・OSINTアナリストで、同国の戦況分析チーム「ブラック・バード・グループ」の一員でもあります。

以下に続く文章は、カステヘルミ氏の連続投稿を日本語に翻訳したものです。

なお、この翻訳はBlueskyに投稿された英文に準拠しています。X投稿とBluesky投稿の差異は、内容理解にほとんど影響のない程度のものですが、Bluesky投稿のほうがわずかに記述が多かったため、Bluesky版をベースに翻訳を行いました。

また、翻訳記事中で使用した画像は、カステヘルミ氏のSNS投稿に添付されているものの転載になります。なお、[  ]内の記述は、訳者による補足(地名のラテン文字表記等)になります。


日本語訳

今年の秋はウクライナにとって厳しい季節であった。そして、それは今も続いている。

私たちの評価分析によると、9月1日から11月30日までの期間にロシア軍はウクライナ領内で1,600平方km超の領土を占領し、クルスク州において500平方km程度の領土を取り戻した。ロシア軍が被っている損失は甚大であるが、同軍の進撃ペースは毎月、加速している。

※濃い赤色:9月1日までにロシアが占領したウクライナ領土
※薄い赤色:11月30日までにロシアが奪ったウクライナ領土
(BLACK BIRD GROUP)

夏の終わりの時点でもうすでに、事態は懸念すべき方向へと進んでいる模様を呈していた。とりわけ8月にロシア軍が獲得した領土は比較的広大で、クルスク州におけるウクライナ軍攻勢が、ロシア軍の動きを大きく抑制していくようにはみえなかった。

秋の間、ウクライナ領内での前進と並行して、ロシアはクルスク州でいくつかの反撃を敢行した。ウクライナは、突出部状の自軍支配下地域の西側地区を喪失し、東側においても拠点を失いつつある。9月から11月にかけて、この地域でウクライナは大きく前進できていない。

※濃い青色:9月1日時点のウクライナ側支配地域(評価推定)
※薄い青色:11月30日までの時点でのウクライナ側支配地域(評価推定)
(BLACK BIRD GROUP)

この秋の攻勢におけるロシア軍の最重点地区は、ポクロウシク[Pokrovsk]とクラホヴェ[Kurakhove]であり、現在もそうだ。11月、ヴフレダル[Vuhledar]陥落後、ロシア軍はヴェリカ・ノヴォシルカ[Velyka Novosilka]に向けても迅速な進撃を進めた。現在、前線における動きの大部分が、140km幅の地区上で起こっている。

ロシア軍はほかの地区でも圧力をかけ続けているものの、広く全体をみると、大きな戦果が上がっているわけではない。ウクライナ軍はトレツィク~チャシウ・ヤル~シヴェルシク[Toretsk-Chasiv Yar-Siversk]線上の方面をうまく守っており、ドネツィク州北部においては、ロシア軍がさらに大きく前進する動きをすべて阻止している。この秋、ザポリッジャ州戦線で大きな変化は観察されていない。

※濃い赤色:9月1日までにロシアが占領したウクライナ領土
※薄い赤色:11月30日までにロシアが奪ったウクライナ領土
(BLACK BIRD GROUP)

クプヤンシク方面において、ロシア軍はオスキル[Oskil]川まで何とか前進し、この地域[*注:オスキル川東岸地域]でのウクライナ軍の部隊展開を分断してしまった。とはいえ、ロシア軍がオスキル川に到達しているかどうかに関係なく、この地域は、ロシア軍にかなり大きな好機を与えるものではない副次的な戦線とみなすことができる。

※濃い赤色:9月1日までにロシアが占領したウクライナ領土
※薄い赤色:11月30日までにロシアが奪ったウクライナ領土
(BLACK BIRD GROUP)

今年の残りの期間にどのようなことが起こると考えられるだろうか?  現状の傾向をみると、ロシア軍がポクロウシクからヴェリカ・ノヴォシルカに続く方面での攻勢を継続していける可能性は大きい。また、ウクライナ領土がさらに500~700平方km分、奪われることが予測できる。クラホヴェとヴェリカ・ノヴォシルカが陥落してしまう可能性もある。

ロシア軍がクルスク州でも進撃を継続させようとする可能性は高い。しかし、この地域にかなり大きな戦力を集結させることは、最善の部隊運用とはいえないだろう。一方で、このことはウクライナにも当てはまる。[ウクライナ領内]東部戦線において、毎月、連続的な後退が生じているなか、予備戦力はクルスク州以外のほかの場所で必要になってくるだろう。

私は最近、あまり投稿できていませんでしたが、それは業務多忙だったためです。さまざまな記事や報告書の執筆、講義や発表、インタビュー、テレビ出演、ポッドキャスト収録、刊行予定の軍事史に関するノンフィクション書籍の執筆といったことに、私の時間のほとんどが取られてしまっているのです。

私たち「ブラック・バード・グループ」は情勢の注意深い観察を続けています。また、私たちのチームは、常に喜んでインタビュー取材要請を受けますし、協力の提案もいつも歓迎しています。

以下は、日々更新を続けている私たち制作のインタラクティブ地図です。

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