Russian Offensive Campaign Assessment, October 13, 2024, ISW ⬇️
戦況分析:ドネツィク・ザポリッジャ州境地域でのロシア軍の攻撃
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ドネツィク・ザポリッジャ州境地域において、ロシア軍は最近、戦術レベルでの攻勢を示す攻撃を再開し、局地的な攻撃で戦術的な戦果をあげた。しかし、今のところこの動きが、ドネツィク州西部における広域なロシア軍攻勢作戦を支援する意図をもった、作戦レベルでのより大きな攻勢遂行の一部であるようには見えない。10月12日と13日にロシア・ウクライナ双方の情報筋は、ロシア軍第336海軍歩兵旅団(レニングラード軍管区[LMD]・黒海艦隊所属)と第394自動車化狙撃連隊(東部軍管区[EMD]・第5諸兵科連合軍[CAA]所属第127自動車化狙撃師団隷下)の各隷下部隊が、レヴァドネ[Levadne](ヴェリカ・ノヴォシルカ[Velyka Novosilka]から南西の方向)付近で地上攻撃を仕掛け、ウクライナ軍防衛網を突破したという見解を示した。ウクライナ人軍事ウォッチャーの一人は、ロシア軍がレヴァドネ郊外にまで到達し、ノヴォダリウカ[Novodarivka](ノヴォダリウカ[*注:原文ママ]から南西の方向)に向けて前進したことを指摘した。複数のロシア軍事ブロガーが広く主張しているのは、ロシア軍がレヴァドネを掌握し、ノヴォダリウカ南側郊外にまで進出したということだが、ISWはこれらの主張を裏付ける情報を確認できていない。
これらの戦術レベルの戦果は、ロシア軍の突破行動が突然であったり、予期されていなかったものであったりした結果ではない。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍が10月11日辺り以降、ヴェリカ・ノヴォシルカから南西方向の地点で地上攻撃を再開したことを伝えている。10月3日にウクライナ軍ホルティツャ部隊集団報道官ウラディスラウ・ヴォロシン大佐は、ロシア軍が近いうちにザポリッジャ州で攻勢作戦を行うために、攻撃部隊グループの準備を進めていることを伝えた。だが、ヴォロシン大佐は、ウクライナ軍が自国南部においてロシア軍の大規模な集結を確認していないことも伝えた。この計画されたロシア軍の攻勢的行動は、ロシア軍の戦術的な状況の改善と、これに続く攻勢行動のための戦術的足場を築くことを目的としていると、ヴォロシン大佐は付け加えて指摘した。10月上旬になってロシア軍は、戦線上で長らく静かな地区だったザポリッジャ州西部のカミヤンシケ[Kamyanske](ステプノヒルシク[Stepnohirsk]から南の方向)付近で、その行動を活発化させた。だが、ここでの動きは現状、限定的なものであり、わずかな戦術的戦果しかあげられていない。ロシア軍攻勢作戦のうち最も優先度の高いドネツィク州での作戦からウクライナ側の注意を逸らす意図で、また、ウクライナ南部戦線のウクライナ軍を拘束し、ここの部隊がドネツィク州に再配置されるのを阻止する意図で、ロシア軍がウクライナ南部の比較的活動が見られなかった戦線上の地区で、再度動き出している可能性は高い。
ドネツィク・ザポリッジャ州境地域でロシア軍が攻勢作戦を連携して進めることは、それができた場合、T-0518高速道路(ヴェリカ・ノヴォシルカ~バハティル[Bahatyr])沿いに進撃し、ドネツィク州西部に展開するウクライナ軍集団の西側面に圧力を加えることによって、ドネツィク州西部に大きく形成されているウクライナ側支配の突出部を取り除き、H-15高速道路(ドネツィク市~ザポリッジャ市)に至るまで前進しようというロシア軍が現在進めている作戦上の取り組みを、理論上は支援することができる。一方でロシア軍は、T-0518高速道路に沿ってその西方で流れるモクリ・ヤリ[Mokryi Yaly]川の西岸とヴェリカ・ノヴォシルカ西側郊外で、その行動を活発化している。そして、ドネツィク州西部に形成されているウクライナ側支配突出部の西側面から分岐する地域で、ロシア軍は現在、前進を試みている。ロシア軍がT-0518高速道路を北進し、ウクライナ側支配突出部の西側面のなかへと大きく前進しようとするならば、同軍がヴェリカ・ノヴォシルカを奪取しなければならなくなる可能性は高い。なお、T-0518高速道路に沿った前進や、ウクライナ側支配突出部の西側面内への大きな進撃といったことを行うには、モクリ・ヤリ川東岸のヴェリカ・ノヴォシルカからすぐ南側に位置する地点で、激しい攻勢行動を行う必要が生じるだろう。クレムリンに後援されている軍事ブロガーのなかの有名なアカウントの一つは10月13日に、スタロマヨルシケ[Staromayorske]とウロジャイネ[Urozhaine](ともにヴェリカ・ノヴォシルカから南の方向にあり、モクリ・ヤリ川西岸にスタロマヨルシケが、東岸にウロジャイネがある)から北の方向におけるロシア軍の活動は静かなものであると述べた。レヴァドネ~ノヴォダリウカ地区でのロシア軍の前進は、仮定として示したヴェリカ・ノヴォシルカ奪取を目指す攻撃をロシア軍が強化するのに先立って、フリャイポレ[Hulyaipole]とヴェリカ・ノヴォシルカをつなぐ道路を遮断し、ヴェリカ・ノヴォシルカに向かうウクライナ側兵站能力を低下させることを、理論上は意図している可能性がある。だが一方で、ロシア軍がドネツィク・ザポリッジャ州境地域ではっきりと目立つ大規模な攻撃を行っているという報告、あるいは、ウクライナ東部での攻勢作戦に匹敵する烈度で攻勢を遂行するためのマンパワーと物資を集積しているという報告を、ISWは確認していない。それとは反対にロシア軍は、ドネツィク・ザポリッジャ州境地域とウクライナ南部のいずれかの地点にこれまで展開させていた部隊を、ウクライナ軍のクルスク州進攻への対応のために配置転換している。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[1]~[10]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所
ウクライナ戦況地図(戦争研究所)