【SNS英文投稿和訳】エミール・カステヘルミ氏:ウクライナ戦況分析:ドネツィク州クラホヴェ方面&ロシア領クルスク方面(日本時間2024.11.14 05:30頃投稿)
上記リンクから始まるSNS(XとBluesky)での連続投稿は、ウクライナの戦況分析に関する内容です。
投稿者のエミール・カステヘルミ氏はフィンランドの軍事史家・OSINTアナリストで、同国の戦況分析チーム「ブラック・バード・グループ」の一員でもあります。
以下に続く文章は、カステヘルミ氏の連続投稿を日本語に翻訳したものです。なお、この翻訳記事中で使用した画像は、カステヘルミ氏のSNS投稿に添付されているものの転載して使用しています。なお、[ ]内の記述は、ウクライナ及びロシアの地名のラテン文字転写です。綴りはカステヘルミ氏の原文に沿っていますので、グーグル地図等の表記と異なっている場合もあります。
日本語訳
ロシアは進撃し続けているが、その過程でかなりの規模の兵員と物資を浪費し続けている。
この連続投稿で私は、二つの重要な方面を検討していくつもりだ。一つはクラホヴェ[Kurakhove]であり、そこで懸念されている展開も扱う。もう一つはクルスクでのウクライナ軍反攻であって、これは政治的な動機によって進められている。
クラホヴェにおいて、ロシア軍はほぼすべての方向からこの町に迫りつつある。ロシア軍はクラホヴェ東部に進入しており、すでにウクライナ軍強化防御拠点のいくつかを陥落させている模様だ。ロシア軍部隊の一部は、ダリニェ[Dalne]という村落にも突入している。
現時点におけるロシア軍の最前進地点は、ウスペニウカ[Uspenivka]とイェリザヴェティウカ[Yelizavetivka]の間に位置するウクライナ軍陣地を脅かすに至っている。ロシア軍がダリニェへの部隊展開をどの程度しっかりと確立できているのかは不明であるが、ロシア軍がこれほどすばやくダリニェに到達しているという事実が、もうすでに問題である。
クラホヴェから北方の地域で、ロシア軍はクラホヴェに向かう主要補給路から7km圏内に位置している。南側からの場合、まだ11km離れている。だが、ウクライナ側の現状維持を不可能にするために、ロシア軍は必ずしも補給路をあらゆる方向から物理的に支配する必要はない。
ロシア軍の戦果達成は、ウクライナ側の弱点を探し出していること、かなり強力な陣地を迂回していること、小さな突出部をつくってウクライナ軍に撤退を迫っていることに起因している。これは、ロシア側に好ましい条件が形成されたため可能になっている。その条件というのは、ウクライナ軍の兵力がロシア軍を下回っており、ウクライナ軍が大規模な反撃を遂行できないというものだ。
ロシア軍の戦術は極めて犠牲の大きいもので、人員・装甲車両・砲兵・航空支援面での数的優勢の複合的効果に依存している。ウクライナ軍の予備兵力不足、マンパワー問題、不十分な作戦遂行能力は、ウクライナ軍が効果的に防衛任務を遂行することを損なっている。
クルスクでロシア軍は攻撃を再開した。そして、現在、ウクライナ軍が支配するクルスク突出部の西側面と北側面で特に、強力な圧力をかけ続けている。ロシア軍がポグレブキ[Pogrebki]とプレホヴォ[Plekhovo]を奪還した可能性は高い。また、その他多くの村落の状況は不明だ。
私たちの評価見積では、クルスクにおけるウクライナ軍支配領域は、500平方kmである。村落の多くの情勢は非常に流動的であり、何がしかの不確実さが存在する。そうであるとはいえ、ウクライナが現在、占領地域を最大時の半分未満しか保持できていない可能性はかなり高い。
クルスクの戦いの様相は、ますます政治的なものになりつつある。伝えられた話によると、ロシアはこの地域に約5万人の兵力(空挺軍、海軍歩兵部隊、自動車化狙撃連隊に属する部隊等)を展開させているとのことだ。一方でウクライナは、この地域全体で2~3万人の兵力を集結させているものと思われる。
これらの戦力は現在、比較的重要度の低い、周辺的な田園地帯で戦闘を続けている。重要な兵站ルートや軍事施設、都市やその他インフラに深刻な脅威を与えるような場所に、ウクライナ軍は現在、展開していない。
ウクライナ軍をクルスクから追い出すまでは、あらゆる交渉に応じるつもりはないと、ロシア側は明言している。ウクライナが支配している領土の規模とその特徴を考えると、このような見解はロシア側を不必要に硬直した政治的立場に固定してしまっている。
ロシア軍は、実際よりも少ない戦力を展開し、クルスクにウクライナ軍を拘束しつつ、ウクライナ領内のより重要な目標を追い求めることができたかもしれないが、現実はそうではなく、ロシア軍は現在、私たちが目撃している作戦を選択した。
自軍に多方面で攻勢作戦を進めるのに十分な戦力と装備があり、クルスクで消耗しても、そのことが、連動するほかの計画への大きな齟齬にはならないと、ロシア軍は見積もっているのかもしれない。あるいは、ロシア軍は何にもまして政治的目標を最優先にしているのかもしれない。
人口6千人の小都市を含む数百平方kmの地域が、想定されうる交渉にどれほど大きな影響を及ぼすことができるのかを判断することは難しい。クルスクよりも重要なほかの多くのファクターが、現に存在している。軍事的観点で見ると、クルスクは副次的な戦線に過ぎない。
互いの戦力の削り合いが続き、この地域に相手側の重要部隊が拘束されていると、双方の陣営が考えているというのが、現在の状況なのかもしれない。ウクライナは、いやウクライナも、クルスクに配置している兵力をほかの場所で使うことができるのだが、クルスクを部分的に占領するために、ドネツィク州を犠牲にしているともいえる。
幸運なことに、ロシアがクルスクで現在、採用しているアプローチは、激戦の一部をロシア国境の内側に持ち込んでおり、これはウクライナにとって好ましいことだ。
私を含めた「ブラック・バード・グループ」のチームは、X上で、また、今後はBluesky上でも、この戦争の成り行きを今後も見守っていきます。