本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月10日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図
は、すべてISW制作のもの(インタラクティヴ・マップの画像も含む)である。また、地図の一部は加工してある。
ウクライナ軍を牽制するロシア軍
日本語訳:
ロシア軍は10月9日、ドネツィク州のアウジーウカ地区とザポリージャ州西部のオリヒウ南西で局地的な攻勢作戦を発動した。この局地攻勢の目的は、ウクライナ軍戦力をロボティネ地区から離れた地区に釘付けにしておくことにある可能性が高い。ロシア軍はアウジーウカ北西のオチェレティネ付近、トネンケ付近、ベルディチ付近、そしてアウジーウカ南西のヴォディヤネ〜オピトネ線において、攻勢的行動を増加させた。ロシア軍はまた、オリヒウ南西のピャティハトキ〜ジェレビャンキ線でも攻撃を仕掛け、ロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はこの地区で2km前進したという。ウクライナ軍参謀本部は、最大3個大隊のロシア軍がアウジーウカ方面で攻撃を行ったことを認めており、ISWはこの地区での戦闘の動画を確認している。だが、本報告執筆時点で、上述のロシア軍進撃の主張を裏付けるものを、ISWは確認していない。ロシア軍事ブロガーの多くはアウジーウカ地区での作戦を大規模な攻勢の取り組みとして示しており、その目的はアウジーウカにいるウクライナ軍部隊の包囲と同市占領にあるとしている。ドネツィク州戦線で最も堅固に要塞化された場所の一つであるアウジーウカの包囲を成功させるには、ロシアが現在、アウジーウカ〜ドネツィク市作戦に振り向けている戦力よりも、もっと多くの戦力が必要になる可能性はかなり高い。ロシア軍はこの戦線に主として非正規部隊を投入しており、その中心はドネツク人民共和国(DNR)軍第1軍団とそこに付随する志願兵部隊になっている。これらの部隊は大体の場合、不適切で残虐的な指揮のあり方、ロシア軍正規部隊との対立関係といったことに起因する被害を被っている。ISWは、ロシア軍部隊の最近の投入を確認していない。また、この戦争の過去1年半の間、ロシア軍はアウジーウカ付近において比較的ごくわずかな領土奪取を意図した、じりじりと進む攻勢作戦を行ってきた。そして、アウジーウカ占領を進めるためには、現在この地区に投入している戦力よりも能力の高い部隊がもっと多く必要とされるだろうし、そのことをロシア軍統帥部が理解している可能性は高い。
アウジーウカ地区とジェレビャンキ地区でのロシア軍攻勢活動の増大は、ルハンシク州及びザポリージャ州東部で別途行われている攻勢と同調する動きである。そして、これらはすべて、ウクライナ軍戦力の拘束を意図している可能性が高く、また、ウクライナ軍統帥部が戦線上の最重要地区であるザポリージャ州西部に、予備戦力として戦力を移管できないようにすることを目的としている可能性も高い。ウクライナ当局者はこの件に関してここ数週間以内で幾つか見解を示しており、特に指摘しているのが、アウジーウカ〜ドネツィク市線沿いでのロシア軍攻撃の意味は、ここのウクライナ軍戦力のザポリージャ州への移管阻止にあるというものだ。
ウクライナ軍反攻の状況
日本語訳:
ウクライナ軍はバフムート周辺とザポリージャ州西部で反攻作戦を続けた。また、ドネツィク・ザポリージャ州境地域での同軍の前進が確認された。10月9日投稿の動画で、撮影地点の特定が可能なものに、ウクライナ軍がミキルシケ(ヴフレダル南東3km、ヴェリカ・ノヴォシルカ南東約30km)の北東で前進したことが示されている。ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍がアンドリーウカ(バフムート南西7km)付近で部分的な成功をおさめたと報告した。あるロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍はノヴォフェドリウカ(ロボティネ北東15km、ヴェルボヴェ北東6km)西方で前進したとのことだ。