Russian Offensive Campaign Assessment, September 19, 2024, ISW ⬇️
ロシア軍のクルスク州方面反撃計画
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
報道によると、ロシア当局は軍に対して、2024年10月中旬までにウクライナ軍をクルスク州から追い出し、10月末までにウクライナ北東部のロシアと国境を接するウクライナ領内の国境地域に「緩衝地帯」を確保することを命じたとのことだ。ただし、これはかなり大きな任務であって、このような短期間にロシア軍がこの任務を達成できる可能性は非常に低い。ウクライナ報道メディア「RBCウクライナ」は9月19日に、とある情報源からの話として、ロシア軍がクルスク州内に37,000人の兵力を集めていることと、ロシア当局が10月中旬までにウクライナ軍をクルスク州から追い出すよう指示していることを報じた。このRBCウクライナの情報源によると、クレムリンは反撃作戦を開始する前に、5対1の兵力比でウクライナ軍よりも優勢になる規模の部隊集団をクルスク州内に集結させることを望んだが、9月10日に「反転攻勢」を開始する前に、この規模での部隊集団を編成することはできなかったということだ。ロシア軍はクルスク州のウクライナ側支配下突出部内に向けての反撃を始めている。だが、クルスク州からウクライナ軍を完全に追い出すことを目的とした全面的な反転攻勢作戦であることを示す大規模な戦闘行動を、今のところはまだ始めていない。クルスク州でロシア軍が反転攻勢作戦を維持するためには、ウクライナ領内から引き抜いた部隊をクルスク州に再配置することをさらに進める、あるいは、ロシア国内で新たに編成した部隊をウクライナ領内の前線ではなくクルスク州に投入する(または、両方を実施する)必要がロシア軍に生じることになる。一方でウクライナ軍は、クルスク州の自軍支配下の突出部内全域を完全に統制するに至っていない。しかし、ウクライナ軍が突出部内の一部地域に陣地を準備しているのはほぼ確実で、このような陣地はロシア軍が全面的な反撃を遂行する際の障害になる。
RBCウクライナの情報源はまた、ロシア当局が軍に対して、10月30日までに「ロシアと国境を接する州」の領土上に「緩衝地帯」を設ける任務を命じたことも語っている。これはおそらく、ウクライナ軍火力投射部隊をロシア領からかなりの距離、遠ざける目的で、国境沿いのウクライナ領内に進撃することを命じたものだろう。ロシア軍が5月10日にハルキウ州北部で攻勢作戦を発動した際、ロシア側の目的はハルキウ州北部に「緩衝地帯」を設けることだった。しかし、攻勢開始以降、ロシア軍はハルキウ州北部のほとんどの場所で、最長でも縦深10キロメートル程度しか前進できていない。ウクライナ軍のクルスク州進攻は、ハルキウ州北部のロシア・ウクライナ国境地域の外側で行う計画だったロシア軍攻勢作戦を妨害する結果になったと伝えられている。なお、このロシア軍攻勢作戦計画は、ウクライナ北東部の広域な戦線沿いで戦闘地域を拡張し、ウクライナ軍をさらに長大な戦線沿いに拘束し、かつ、その戦力を引き伸ばすことを意図していた可能性が高い。クルスク州からウクライナ軍を追い出し、その直後に、ロシア軍のハルキウ州北部攻勢作戦を彷彿とさせる、ウクライナ領内国境地帯への進攻を実施した場合、これは、かなりの規模のマンパワーと物資を割り当てる必要が生じる大規模な作戦任務になるだろう。ロシア軍統帥部は、ウクライナ軍のクルスク州進攻が引き起こした作戦遂行上の圧力から、ポクロウシク方面でのロシア軍攻勢作戦に置かれている優先度の高さを守りたいという意向を、ずっと示している。しかし、ロシア軍の反撃と、それに続く国境地域での攻勢作戦を実施した場合、作戦遂行上、新たな戦力が必要になるのはほぼ間違いなく、このことは、ポクロウシクへの進撃にマンパワーと物資をさらに注ぎ込むロシア軍の能力に大きな影響を及ぼすことになる。なお、ポクロウシクへの進撃にもっと多くのマンパワーと物資を投入するロシア軍の能力は、すでに低下している。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[9]~[17]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所
クルスク州方面戦況地図(戦争研究所)