本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年2月6日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ウクライナ東部戦況:アウジーウカ
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
2月6日時点において、ロシア・ウクライナ両軍がアウジーウカ周辺で最近、それぞれ前進したことが確認されている。また、2月6日もこの地域での陣地戦が続いた。2月5日投稿の撮影地点特定済みの動画によって、近頃、ウクライナ軍がアウジーウカ市内南部の住宅街で、わずかだが戦闘陣地を奪還したことが確認できる。2月6日に公開された、上述とは別の撮影地点特定済み動画には、アウジーウカ市内北部でロシア軍が最近、前進した様子が示されている。ロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はアウジーウカ市内北西部のサプロノウ通りとレーシャ・ウクラインカ通りに沿って前進したとのことで、その近辺で撮影された動画で、撮影地点特定済みのものに、アウジーウカ市内北部とアウジーウカ市北側外周部の採石場地区でのロシア軍の前進が示されているとのことだ。ロシア軍事ブロガーの一部のなかに、ロシア軍がペルヴォマイシケ(アウジーウカから南西方向)に向かって最大で1km前進し、この集落の南東側外周部に到達したと主張する者もいるが、ISWはこのような主張を裏付ける証拠となる映像を今のところ確認していない。アウジーウカ市軍政当局長官ヴィタリー・バラバシュは、ウクライナ軍がアウジーウカ市内で、小規模なロシア軍破壊工作・偵察部隊と交戦中であることを指摘したうえで、大規模な市街戦は今のところ起きていないことを強調した。バラバシュと、アウジーウカで作戦行動中のウクライナ軍旅団の報道官がともに強調したのは、この地域の情勢が極めて厳しいことと、2024年3月のロシア大統領選挙を前にして、ロシア軍が政治的・情報影響工作的な理由でこの町の占領しようと試みているということの二点だった。ウクライナ軍旅団の報道官はまた、ロシア軍が、ウクライナ軍ドローンからの防御のために、装甲車両に電子戦(EW)システムを装備させつつあることを指摘した。ロシア軍事ブロガーがロシア当局を繰り返し批判していることを、ISWは近頃、確認しているが、ロシア軍事ブロガーの批判は、ドネツィク州ノヴォミハイリウカ付近でのロシア軍の機械化部隊攻撃が失敗したのちも、ロシア軍にEWシステムが装備されていないことに起因している。そのようなこともあって、アウジーウカ周辺のロシア軍は、自軍の防御能力を向上させるために、戦場から得た教訓を活かそうとしている可能性がある。ウクライナ・ロシア双方の情報筋が言及した陣地戦的交戦が続いている場所は、アウジーウカから北西方向のノヴォバフムティウカ付近、アウジーウカ市周辺、アウジーウカから南方のヴェセレ付近、アウジーウカから南西のペルヴォマイシケ付近であり、さらにそこにトネンケ付近、ステポヴェ付近、ネヴェルシケ付近も加わる。また、伝えられた情報によると、ロシア軍第21自動車化狙撃旅団(中央軍管区第2諸兵科連合軍)がアウジーウカ周辺で作戦行動を続けているとのことだ。
戦争研究所:ウクライナ戦況地図