【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1920 ET 25.07.2023 “ロシア:連邦構成主体ベースの軍事会社創設への動き”
ロシア政治指導部はワグネルがいなくなったことで生じた安全保障体制上の空白を、連邦構成主体(州・地方等)を基盤とした、公的だが中央政府に属さない軍事「企業」を創設することによって、埋め合わせていこうと試みている。7月25日、 ロシア連邦下院は連邦構成主体での武器流通を規定する連邦法の修正を、第二・第三読会で可決した。この修正法により、ロシアの連邦構成主体の長は、地方単位の公営専門企業を立ち上げることができるようになる。ロシア反体制メディアの指摘によると、この修正法に含まれる込み入った規定によって、地方行政当局の長は、民間軍事会社(PMC)に類似した地方ベースの公営軍事企業を、戒厳令下の動員期間中に設立できるとのことだ。この修正法がとりわけ要求しているのは、この専門企業の財源を地方予算から賄うことである。なお、この専門企業はロシア国防省から小火器が供与される予定で、ロシア連邦保安庁(FSB)・内務省(MVD)・その他軍事当局を支援して、社会秩序の確保及び国境警備にあたることになる。この修正法によって、ウラジーミル・プーチン露大統領は一時的な枠組でこの種の企業を設立し、その後、解散させることができるようになるだろう。なお、解散後1カ月以内に該当企業は小火器及びその他兵器をロシア国防省に戻す必要があるとしている。
クレムリンが、二つの相反する安全保障上の必要性の間でバランスを取ろうとしている可能性は高い。その一つは、武装蜂起とベラルーシへの再配備後にワグネルが残していった役割を満たすことができる戦闘部隊が必要だということで、もう一つは、ワグネルの独立性が生み出したロシア国家への組織的脅威の再発を防止したいという考えである。国境警備と国内での法執行任務を担う予定の公営軍事企業を正規に創設することは、ワグネルが残していったギャップを埋め合わせることを、部分的には意図していると考えられる。だが、これらの企業がほとんど中央政府の監督下に置かれず、地方行政当局を基盤に、そこからの支出によって、国内治安機関が後援する形で任務にあたる予定であるという事実から考えられるのは、ロシア国防省は強力なワグネルの類似組織が再び出現するリスクに、今後もずっとさらされるということであり、それゆえ、国防省はこれら企業が個々にもつかもしれない規模や力を制約しようとしていくということだ。この公営企業は、2022年夏季にロシアの各地方が取り組んで上手くいかなかった志願兵大隊モデルの新たな繰り返しのようにみえるが、この公営企業はFSBのような正規の強固な国内治安機関の指揮下で任務にあたる予定になっており、以前の志願兵大隊方式に存在した弱点の多くが改善されている可能性は高い。
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