本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年12月18日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
(記事サムネイル画像:ウクライナ軍参謀本部Facebook投稿写真)
西側のウクライナ支援の遅れと砲弾不足がウクライナに及ぼす影響
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
砲弾不足と西側からの安全保障支援提供の遅れが組み合わさることが、ウクライナ軍の物資節約を招いている可能性は高い。また、このことが今後のウクライナ軍反攻作戦の遅延につながる可能性もある。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団司令官オレクサンドル・タルナウシキー准将はロイター通信のインタビューのなかで、全戦線で122mm砲弾と152mm砲弾がウクライナ軍に不足していると述べた。タルナウシキーの発言によると、ウクライナ軍は砲弾の再分配と軍事任務の計画見直しを迫られているとのことだ。また、12月18日、ウクライナ国防次官イヴァン・ハヴリリュク将軍も、ウクライナ軍の砲弾不足が続いていくことを認めた。ロシア軍もまた砲弾に関する問題を抱えているとタルナウシキーは指摘するが、ロシア軍は現在、ウクライナ軍の5倍から7倍のペースで砲撃を行っていると、西側とウクライナ双方の当局者が分析していることが報じられている。
ロシア・ウクライナ軍双方ともにソヴィエト時代からの122mm砲弾と152mm砲弾の備蓄をほとんど消費してしまっている可能性が高く、両軍はこれら砲弾のほかの備蓄先として、国外に目を向けざるを得なくなっている。ロシアは最近、北朝鮮からこの種の砲弾をかなり数量、受け取っている。一方で、ウクライナと西側支援国は、他国が有する備蓄からこの種の砲弾を入手する努力を進めている。122mm砲弾と152mm砲弾を入手するウクライナと西側の努力にどのような遅れ、または阻害要因があるのかは不透明であり、このような遅れが現在のウクライナで生じている不足問題にどれほどの影響を及ぼしているのかもはっきりとは分からない。前線でウクライナ軍が西側供与の155mm砲弾を使用することはますます増えており、西側の安全保障支援が遅れる可能性は、ウクライナが使える155mm砲弾の供給に大きな影響を与える可能性がある。ただし、最近の米国の支援パッケージに155mm砲弾は含まれていた。ハヴリリュクの発言によると、ウクライナは現在、砲弾不足を埋め合わせるために、ドローンの国内生産に注力しており、2024年に西側企業とともにウクライナ国内で155mm砲弾を製造する計画を進めているとのことだ。
砲弾不足と西側の安全保障支援の遅延は、ウクライナ側作戦計画に不確実性を生み出していくことになるだろう。そして、ウクライナ軍がリソースを蓄える方向に向かわせることになる可能性は高い。このことは、ウクライナ軍に厳しい決断を迫ることになるかもしれない。その厳しい決断とは、地理的にわずかに後退することの損失が、最低限で済む地域を犠牲にして、戦線上の一部特定地域を優先するという決断のことだ。BBCロシア支局の報道によると、ウクライナは2024年の大まかな作戦計画の検討案を、前線の状況に基づいて定期的に見直していると、ウクライナ当局者が語っているとのことだ。2023年9月以降、ウクライナ向け西側支援が相当な規模で減少していることが原因で、2024年作戦計画の軍事的見込みを検討することが難しくなっていると、ウクライナ当局者の一人が語ったことが伝えられている。タルナウシキーは、ウクライナが大規模な作戦行動のための予備戦力を用意している最中だと述べた。砲弾不足と西側からの支援の遅れが、このような行動を計画して準備していく能力をウクライナから奪っていくことになる可能性はかなり高い。ウクライナの具体的な作戦計画策定が遅れることと、反攻作戦準備に必要な物資の入手が遅れることは、結果として、2024年反攻作戦の遅延を招くことになる可能性が高い。