Russian Offensive Campaign Assessment, December 11, 2024, ISW ⬇️
ドネツィク州ポクロウシク方面情勢
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ロシア軍は引き続きポクロウシク[Pokrovsk]から南方向の地点で戦術レベルで占領地を広げ続けており、その際にロシア軍は、ウクライナ側の弱点を攻撃するとともに、迂回攻撃を遂行しようとしているが、その意図は南側からポクロウシクを直接的に攻撃することにある。12月10日公開の撮影地点特定可能な動画によって、ロシア軍がノヴィー・トルド[Novyi Trud]西部とダチェンシケ[Dachenske]から南方向の地点で前進しつつあることが分かる。この結果、ノヴィー・トルドとダチェンシケを結ぶ線から南の方向及びE50高速道路から西の方向で形成されている小ポケット地帯は狭まっている。この前進によってロシア軍は現在、ポクロウシクから南に約6キロメートルの地点に展開している。ロシア軍が今後の数日間に、ノヴィー・トルドとダチェンシケの間に存在するポケット地区を潰す取り組みを続けていく可能性は高い。なぜなら、そうすることでロシア軍はより強固な拠点を確保できるようになり、その拠点からシェウチェンコ[Shevchenko](ノヴィー・トルドの北西隣の地点で、ポクロウシクから南西の方向)を攻撃できるからだ。12月11日にウクライナ軍ホルティツィア部隊集団報道官ナザール・ヴォロシン大佐は、ノヴィー・トルドから西の方向、ノヴォトロイツィケ[Novotroitske](シェウチェンコかた南西の方向)から南の方向、シェウチェンコ自体の南西側郊外地区のそれぞれに設けられたウクライナ軍強化防御陣地が、ロシア軍に攻撃されたことを指摘した。ヴォロシンの発表によると、これらの攻撃の際にウクライナ軍は陣地を二つ失い、現在、それらを取り戻すべく動いているとのことだ。ポクロウシク周辺で任務に就いているウクライナ軍大隊指揮官の一人は、ここの情勢を「危機的」と描写したうえで、その大きな理由として、ロシア軍の大隊規模部隊のそれぞれに、毎月200人の新しい兵員が補充されていることをあげた。このウクライナ軍指揮官はまた、ロシア軍がウクライナ軍陣地を一日あたり最大で30回も攻撃してくることと、ロシア軍が砲兵火力面で優勢に立っていることも強調した。この発言が示唆しているのは、ロシア軍が現在、ポクロウシク方面で戦術レベルの戦果を確実にあげるために依拠していることが、兵力と砲弾の数的優勢だということだ。ロシア軍統帥部が、ポクロウシクを南方から迂回攻撃し、この都市の制圧を目指すという攻勢作戦を再開させているという分析を、ISWは最近、示した。だが、その評価分析のなかでISWは、この攻勢機動がロシア軍のマンパワーと装備の大きな損失という結果をもたらすことになるという見解も示した。あるウクライナ軍旅団の将校で、上述の大隊指揮官とは別の人物は、ロシア軍がこの2週間でポクロウシク方面において、3,000人に近い兵力を失ったことを伝えている。ロシアの戦力造成体制がすでに大きな負担を抱えているなか、ロシア軍の損失が継続していることは、この戦力造成体制にかかる負担を増していくことにつながるだろう。ロシア軍が今後、ポクロウシクに向かって戦果をあげていく可能性はあるが、そうすることで生じる損失によって、ここで獲得した戦果をさらに遠大な攻勢作戦に結びつけるのに必要なロシア軍の能力は、弱められていくことになるだろう。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[1]~[5]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所
ウクライナ戦況地図(戦争研究所)
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