Russian Offensive Campaign Assessment, June 22, 2024, ISW ⬇️
ウクライナ東部で強まるロシア軍の攻撃
戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ロシア軍は、ハルキウ州北部での攻撃回数を減少させるなか、ドネツィク州での攻勢作戦のテンポを上げている模様だ。このことは、ロシア軍が戦域上のほかの地区での戦闘を強化できるように、ウクライナ軍戦力を釘づけにし、ウクライナ軍戦力を分散させておくことが、ハルキウ州におけるロシア軍攻勢作戦の主たる意図であるというISW[戦争研究所]の評価分析と合致している。6月18日の夜にロシア軍はトレツィク~ホルリウカ[Toretsk-Horlivka]方面(チャシウ・ヤール[Chasiv Yar]から南西、アウジーウカ[Avdiivka]から北東の方向)での地上攻撃を激化させ、6月19日から22日にかけて、この方面における攻撃ペースを比較的高いままで維持した。そして、各種情報によると、この地域で戦術レベルの戦果をいくつかあげたとのことだ。前線のこの地区において、ロシア軍は2024年になって以降ずっと、全般的にみて活発な動きを示してこなかった。それゆえ、今回の行動活性化とその激化は注目に値する。また、こことは反対に、ハルキウ州北部でのロシア軍攻勢作戦のテンポは最近の数日間、劇的に落ち込んでおり、ハルキウ市から北と北東の地点でのロシア軍攻勢作戦が始まった2024年5月中旬と比較して、顕著な落ち込みである。ハルキウ州北部で攻勢を行うことに関するロシア軍統帥部の意図が、ウクライナ軍の兵力と乏しい物資を北部国境沿いに釘づけにし、戦域上のより重要な地区で、とりわけドネツィク州で、攻勢作戦を再び強化する機会をロシア軍に与えることにあると、ISWは以前から分析していた。ウクライナ軍の一部がドネツィク州からハルキウ州へと部隊再配置を行っていることをウクライナ側情報筋は認めており、その結果、ロシア軍はウクライナ側戦線の弱点と認識した点を、特にトレツィク~ホルリウカ方面において、活用して攻撃を強めている可能性がある。それに加えて、ハルキウ州でのテンポが落ち込んで以降、ロシア軍はチャシウ・ヤール方面とアウジーウカ周辺においても攻撃のペースを高いままで維持している。そして、ロシア軍統帥部が今後の数週間をこれらの地域で進撃するのに有利な時期だとみなすならば、ウクライナ軍がドネツィク州に予備戦力を戻す前に、ロシア軍がチャシウ・ヤール方面やアウジーウカ周辺での攻撃を、まもなく強化する可能性がある。ロシア軍が、ウクライナ軍の乏しいリソースを散らす目的の北部攻勢作戦を遂行したのち、ウクライナの東部に重点が置かれる可能性の高い夏季攻勢を行う予定でいるという警告を、ウクライナ側情報筋は以前から発している。そして、ドネツィク州で最近みられる攻撃激化は、ロシア軍夏季攻勢がまで始まっていないと仮定した場合、このような夏季攻勢の準備段階を示している可能性がある。
報告書原文の日本語訳箇所(英文)