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【SNS英文投稿和訳】ウクライナ戦況分析:ドネツィク州中央部~南部(エミール・カステヘルミ氏)

Vellyka Novosilka and Kurakhove have fallen, and Russians continue their offensive towards Pokrovsk. In this thread I will examine what is to be expected of the most critical area of the eastern front in the near future, and what can the Russians realistically achieve. 1/

Emil Kastehelmi (@emilkastehelmi.bsky.social) 2025-02-02T18:28:24.240Z

フィンランドの軍事史家であり、OSINTアナリストでもあるエミール・カステヘルミ氏が、日本時間の2025年2月3日午前3時30分頃に、XとBlueskyの双方のプラットフォーム上で、ドネツィク州中央部~南部(ポクロウシク~ヴェリカ・ノヴォシルカ)の戦線に関する戦況分析を発表しました。

以下に続く文章は、カステヘルミ氏のこの投稿を日本語に翻訳したものです。なお、翻訳記事中で使用した画像は、カステヘルミ氏のSNS投稿に添付されているものの転載になります。


日本語訳

ヴェリカ・ノヴォシルカ[Velyka Novosilka]とクラホヴェ[Kurakhove]は陥落し、ロシア軍は現在、ポクロウシク[Pokrovsk]へ向けた攻勢を続けている。

このスレッドで私は、東部戦線の死活的重要性をもつ地域で近いうちにどのようなことが起こりうるのかを検証し、さらにロシア軍が現実的にみて何を達成できるのかも検証していくつもりだ。

ヴェリカ・ノヴォシルカの陥落は、クラホヴェの陥落もそうであるが、結局のところ、ドネツィク州中央部と南部の戦場でのより大きな動向に関して、かなり限定的な影響しか及ぼさなかった。というのも、この二つの町がもつ防衛上の重要性は、それぞれの両側面が敵の手に落ちた時点の陥落以前に、すでに低下していたのだ。

ドネツィク州に隣接する州との州境に到達するということを除けば、現在、ヴェリカ・ノヴォシルカ方面で達成する価値のあるものはほとんどない。小さな集落しかなく、あとは野外地が広がり、障害となる地形も一部、存在するだけだ。ウクライナ軍は、周囲を制する性質をもつ高地と尾根に、防御陣地を築いている。

ダチネ[Dachne]~ウラクリ[Ulakly]突出部でウクライナ軍は、今でも包囲される脅威にさらされながら戦っている。情勢は悪い方向に進んでいる。この突出部、いや、この場合はむしろ回廊と呼んだほうがよいかもしれないが、ロシア軍がアンドリーウカ[Andriivka]という町に突入した結果、この突出部もしくは回廊がさらに伸長させられるという脅威が生じている。

周囲を制する高地上をロシア軍が前進していることが問題で、この問題は、この地域におけるウクライナ軍の防衛計画と関係がある。この地域の防御陣地群は間違った方向に面している。つまり、ウクライナ軍は南方からの攻撃に備えていたが、東方からの攻撃には備えていなかったのだ。

大規模な塹壕網及び強化陣地点が現在、次々と陥落している。それは、これらの陣地の相互支援ができていないからだ。東方からの攻撃は予見可能であった。それゆえ、ウクライナ軍はこのような現状への準備ができたかもしれない。しかし、単に工兵部隊に十分なリソースがなかっただけだった可能性も高い。

アンドリーウカとダチネを結ぶ稜線は、この地域で最もベストな防衛拠点の一つである。ただ、残念なことに、ここが潜在的にもっている防衛力は現在、完全に活かされていない。ウクライナ軍は現状、後方地域にもっと多くの防御陣地を築く準備を進めている。しかし、構築ペースはあまり迅速ではない。

ポクロウシクにおいて、1月の一カ月間、ロシア軍はこの都市の西側周辺地域と南西側周辺地域で作戦行動を続けてきたが、この当座の目標はウクライナ側の兵站状況を悪化させることにある。そのためにロシア軍はこの都市に向かう主要補給道路と鉄道による交通を遮断するという方法をとっている。

2本の主要道路、そして鉄道線がポクロウシクから西へと走っている。2本のうち1本の道路とこの都市との接続点を、ロシア軍は物理的に制圧してしまっており、同軍の展開場所は2本目から4kmしか離れていない。2本目の道路は、敵軍が接近しすぎているため、兵站業務の中軸としては、もはやまったく使われていない。

ロシア軍の攻撃の矛先は、ポクロウシクの西側に広がる地域内に向かって、奥深くまで到達しつつある。ポクロウシクにおける2つ目の短期的目標としての可能性の高いものは、今後の作戦に向けたよりよい条件を形成するというもので、そのための手法は、ドニプロペトロウシク州へ向かう進撃の先鋒の両側面を、同時並行的に広げていくというものだ。

この進撃は起こりうるものだ。なぜなら、ポクロウシクのウクライナ軍主防衛線の西端にロシア軍は切れ目を入れ、そこを占領することに成功したからだ。そして、それ以降、ロシア軍はこの場所に兵力を注ぎ込み続けている。進捗はゆっくりとしたもので、占領地の広がりは徐々にしか進んでいない。だが、ロシア軍は今でも前進を続けている。

この作戦地域の東側面であるミルノフラド[Myrnohrad]東方で、ロシア軍はT0504(ポクロウシクとコスチャンティニウカ[Kostyantynivka]を結ぶ高速道路)にも近づいている。この道路は現在、機能していない。それは、ウクライナ軍が大規模なジャンクションを破壊し、ロシア軍がその近隣に存在しているからだ。

以上の状況であるとはいえ、ロシア軍がポクロウシクを、西または東の方向から直接攻撃できるまでの道のりはまだ長い。12月から1月にかけての前進ペースは鈍化しており、現在の前進ペースでは、単純に進撃軸の両側面を広げるだけで、少なくみても数週間か数カ月はかかることになる可能性が高い。

ウクライナ軍が依然として突破されないように防衛を続けているとはいえ、ポクロウシク方面全体の状況は、危機的と描写しうるものだ。敵の手に落ちていく村落が新たに生じるペースは週ベースで、ときには毎日という場合さえある。ウクライナ軍は情勢を安定化できておらず、ロシア軍の進撃を食い止められていない。

損失に関するロシア軍の耐久力はかなり高く、このことが継続的な戦術的勝利を可能にしている。だが一方で、依然として戦略的成功にはほど遠く、作戦レベルの成功ですらほど遠い。ウクライナ軍は攻撃者を効果的に消耗させており、ロシア軍が野外地や村落を一つ奪うごとに、ロシア軍に高い代価を支払わせている。

変動要素の主なものの一つが、ロシアがどれほどうまく損失を埋め合わせ、ウクライナがずっと続くマンパワー問題をどのようにうまく解決できるのかという点だ。もし現在の傾向がそのまま続く場合、ロシア軍が最終的に、ポクロウシクに対する今以上の深刻な脅威をつくり出してしまうことは起こりうる。

ご一読くださり、ありがとうございます。私たち「ブラック・バード・グループ」は今後もこの戦争の動きを追跡していきます。また、いつものことになりますが、毎日更新されている私たち制作のインタラクティブ地図のチェックを忘れないようお願いします。

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