【抄訳+要旨】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 2115 ET 05.10.2023 “ウクライナ軍攻勢の進捗+ロシア軍の動向”
本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月5日付ウクライナ情勢評価報告から、バフムート方面・ザポリージャ州西部方面のウクライナ軍攻勢進捗を記した箇所を引用したうえで日本語に翻訳したものである。また、附記として、ロシア軍の動向に関する記述の要約も示した。なお、ここに掲載した地図は、ISW報告原文のものを使用している。
バフムート方面のウクライナ軍攻勢
日本語訳:
10月5日、ウクライナ軍はバフムート周辺で攻勢作戦を実施した。また、同軍の前進が報告されている。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はアンドリーウカ(バフムート南西10km)の東方で、詳細は不明だが、何らかの戦果をあげたとのことだ。ロシア軍事ブロガーの一人は、ウクライナ軍がクリシチーウカ(バフムート南西7km)付近で鉄道線に向かって前進していると主張した。ほかのロシア軍事ブロガーは、ウクライナ軍がクリシチーウカ付近とアンドリーウカ付近で鉄道線方向へと攻撃を仕掛けたが、失敗に終わったと主張している。ロシア側情報筋の主張によると、ロシア軍第132自動車化狙撃旅団(ドネツク人民共和国軍第1軍団)がホルリウカ方面に対するウクライナ軍の攻撃を撃退したとのことだが、このホルリウカ方面というのは、バフムート方面とアウジーウカ方面の中間地域を指しているものと思われる。
ザポリージャ州西部方面のウクライナ軍攻勢
日本語訳:
ウクライナ軍は10月5日、ザポリージャ州西部で攻勢作戦を実施した。また、同軍の前進が報告されている。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐は、ウクライナ軍がロボティネ(オリヒウ南方10km)の西方で部分的な成功を収めたと報告した。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はメリトポリ方面(ザポリージャ州西部方面)で攻勢作戦を継続しているとのことだ。複数のロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍が前進を試みた箇所は、ロボティネ〜ヴェルボヴェ線沿い(オリヒウ南方10km〜同南東18km)、コパニ方向(オリヒウ南西11km)、ノヴォプロコピウカ付近(オリヒウ南方16km)であるとのことだ。あるロシア軍事ブロガーは、ウクライナ軍がコパニ〜ロボティネ〜ヴェルボヴェ線沿いで、限られた範囲だが前進したと、10月4日に主張した。
附記
2023年10月5日付ISW報告のロシア軍関係の記述内容から、個人的に関心を惹いたものを3点取りあげ、以下にその内容をまとめる。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、9個の予備連隊の編成が完了したと述べている。ISWはこれらの連隊を訓練用連隊とみており、募兵に応じた兵士の訓練を改善しようとするロシア側の試みと分析している。なお、ISWによると、これらの連隊は、緊急時に戦線に投入される可能性があるとのことだ。ただし、この件に関する評価分析の確度は低いとISWは述べている。
ロシア側情報筋の主張によると、以前、クプヤンシク方面に展開していた第41諸兵科連合軍所属部隊が、ヘルソン方面に再配置されている可能性があるとのことだ。また、ウクライナ側が壊滅させたと主張する第810海軍歩兵旅団も、同じくヘルソン方面に再配置されたと主張している。なお、第801旅団は戦力再建済みか再建途上にあると考えられる。また、第41軍の南部への移動に関しては、ウクライナ側が以前、報告していた。これらの部隊がヘルソン方面に送られた理由として考えられるものに、ロシア軍がドニプロ川東岸へのウクライナ軍攻撃を懸念している可能性があるというものがある。
事実上、ジョージアから独立した状態にあるアブハジア共和国(ジョージア領アブハジア自治共和国)のオチャムチレ付近に、ロシアが恒久的な海軍基地を建設する予定であることが報じられた。ロシアが支援するアブハジア共和国アスラン・ブジャニヤ大統領の10月5日付発表による情報である。なお、この件に関して、クレムリンはコメントを控えている。オチャムチレ付近の地形は大規模港湾には適当でないため、海軍基地ができても、ロシア黒海艦隊の主要基地にはなりにくいとみられている。